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[冬馬P♀]偶然の一瞬

全体公開 2 1887文字
2019-04-18 12:31:43

「な、なんか、覚えちまったっつーかさ」

あまとうとPさんが最終的に真っ赤になっちゃう偶然のお話です。

Posted by @toasdm

「な、なんでもないですっ」
「なんでもないって顔じゃねーだろ」
 彼女と冬馬が不毛な言い争いを始めて三分くらい経過するだろうか。真っ赤になってスマートフォンを握り締めた彼女に食ってかかる冬馬は、彼女のスマートフォンになにか隠し事があるのかと不満げな顔で迫る。
「じゃあ見せてくれよ、スマホ」
「う、それは、いいけど」
 いいのかよ、と肩透かしを食らって、冬馬は首を捻る。隠し事ってわけじゃねぇならいいけど、とぶつぶつ呟きながら彼女のスマートフォンを見てみるが、確かに特に、何か不始末があるようには見えなかった。
「変な写真とか撮ってねーよな?」
「あ、それは絶対大丈夫です」
 アイドルとプロデューサー、かつ彼氏と彼女。要らぬ煙を立てぬように、彼女はさすがにそこだけは徹底しているようだった。じゃあ写真見てもいいよな、と言った瞬間にうっ、と一瞬困ったような顔をした彼女を責めるつもりはなかったが、冬馬は内心、面白くなかった。
「別に、あんたの自撮りとか恥ずかしくねーだろ」
「そっ、そういうのじゃなく!」
 正直に言うと、別に彼女のスマホを見たいわけではなかった。プライバシーってもんがあるだろ、という気持ちの方が強く、また端的に言うと、自分がされていやなことは彼女にはしたくなかった、というのは、冬馬の中にある本心だ。さりとて興味がないかといったらそうでもなく、もやもやとした気持ちを抱えたまま、少し悩んで冬馬はおとなしく彼女の手の中にスマホを返還した。
「み……見ない、の?」
……なんか、そういうの、やだし」
 ふい、とそっぽをむいた冬馬に、ほっ、と彼女は胸を撫で下ろす。やはりその安心の仕方はどうなのだろうかと思ったが、やっぱり見せろ、というのはどうしても無理だった。なんなんだよ、と腑に落ちない冬馬の横で、彼女はぽつりと、思わず漏らしてしまった。
「さっきの一瞬だから意味ないし……
……ん?」
 一瞬ってなんの話だ?と聞き逃さなかった冬馬にまた詰め寄られて、彼女は今度こそ立場を失う。
「な、なんのことかな?!」
「あんた、ウソつくの下手すぎ」
 ニッと歯を見せて笑う冬馬にがっちりと抱え込まれて、午後三時の二人きりの事務所は一気に親密になる。
「と、っ冬馬くんここ事務所」
「白状するまでずっとこのままだからな」
 誰か来ちゃう、勘弁して、と慌てふためく彼女の頬に唇をそっと押し当てて、冬馬は悪戯っぽく笑いながら彼女の手首を掴んでぐっとソファに押し付けた。
「白状しねーなら、もっとすごいことするからな」
 その目シャレになってない、とわたわたする彼女は、だったら吐けよ、と笑われておとなしく、ぽつぽつと話し始めた。
「すごい、くだらないっていうか、そんなことで、って……わ、笑わないで、ね?」
 半ば組み敷かれたような形のまま、彼女は目線を壁掛け時計に逸らす。
「さっき……たまたま、時計、みたら……
「時計? スマホのかよ」
 こくりと頷く彼女の言葉の続きを待ちながら、冬馬もちらりと時計を見る。偶然にも事務所の名前と同じ三時十五分の時刻にくすっとしながら、なんだよ、と冬馬は促した。
「さっき……ほんと、偶然、三時三分で……
「ん……?」
 急にもじもじと落ち着かなくなる彼女は、消え入りそうなか細い声で、ぼそっと一言呟いた。

「あ、冬馬くんの誕生日だ、って、思って……嬉しくなって……それだけ」
「な……っ」
 うわ恥ずかしい、と真っ赤になった彼女に、俺だって恥ずかしい、と冬馬も真っ赤になる。

 なんだよあんた、そんな可愛い理由で嬉しくなってんのかよ、なんなんだよ、ああクソ、こっちまで恥ずかしいだろ、勘弁しろって!

 ひとしきり頭の中で悶絶してから、冬馬はふっ、と記憶を手繰り寄せる。
……? 冬馬くん……?」
「そういやさ……
 ごそごそと自分のスマホを取り出して、冬馬はするするとタップを繰り返し、彼女に画面を見せる。
「俺も、なんつーか……人のこと言えねーっつーか……
……ぅぁ」
 画面には、彼女の誕生日と同じ数字の並びのスクリーンショットが表示されていて、彼女は呻きながらぶわっと一気に、全身に朱を走らせた。
「な、なんか、覚えちまったっつーかさ」
「ぅぁぁぁぁ……
 もうこれは、何を言っても恥ずかしい、と全てを諦めて、冬馬はしがみついてくる彼女をぎゅっと腕に閉じ込めた。
 せめて、誰も事務所に戻ってきませんように、と祈るばかりの二人は、事務所のソファで茹でダコのように真っ赤になってしばらく抱き合っていた。


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