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[雨彦P♀]最善策

全体公開 1 1453文字
2019-04-20 23:33:18

「結構興奮するもんだな」

彼シャツならぬ彼ジャージお風呂から出てきたPさんに興奮してしまった雨彦さんのお話です。

Posted by @toasdm

 それは、普段からそそっかしい彼女のミスだった。バスルームを出て脱衣所で着替えようとした彼女は、着替えるべきパジャマがないことに、バスルームを出るまで気がつかなかったのだ。
「うわ、どうしよ……
 部屋の間取りの構造上、リビングを通らなければパジャマの置いてある寝室へは行けない。そしてリビングでは、明日は久々のオフだから、と泊まりにきている雨彦が寛いでいるはずだ。さすがに下着を含む着替えをとってくれ、というのは気が引けたし、見ないでください、とタオル巻きで全力ダッシュする勇気もなかった。せめてなにか、違和感のない、服のようなものでも干してあればよかったのだが――干してあるものは、日中レッスンでくたくたになって帰ってきた雨彦のトラックトップだけだった。洗濯機の中でざぶざぶと洗濯されている衣類は今すぐ着るには問題があったし、さりとて、いっそ開き直って全裸でいくか!ともならなかった。

 だからこれは、現時点で彼女がとることのできる最善策だったのだ。

……そういう趣向かい?」
「ち、がい、ます」
 自分のトラックトップを素肌に羽織っただけの、彼シャツのような彼女の姿を見て、雨彦は思わず色めきたった。
「着替え、持ってくの、忘れちゃって」
「へぇ」
 離して、と弱々しく震える彼女の手首を掴んだまま、雨彦はにやりと口元を歪めた。
「まぁ、そうつれないことを言うなよ」
「風邪引いちゃう……
「そうかい」
 ならあっためてやるさ、とからかい交じりの口調で、雨彦はそれをぐっと引き寄せる。うわ、と声を上げた彼女の体をぎゅっと抱きしめて、ますます雨彦の笑みは深くなる。冗談でしょう、と慌てる彼女を腕に閉じ込めたまま、雨彦はまだ濡れたままの彼女の髪の毛にそっと唇を寄せた。
「結構興奮するもんだな」
「う……
「自分の服着てる恋人ってのは」
 むくむくと存在を主張し始めた雨彦の熱から身を捩って逃げようとしたが、彼女の弱々しい抵抗は無駄に終わってしまった。がっちりと抱え込まれた体は腰の密着を密にして、ぐりぐりと、わざと押し付けてくるようだ。
…………なぁ」
「んぅっ……
 耳元に、甘く低い声が響く。ぞくりと寒気がしたような気がしたが、彼女の裸身は随分と火照っていた。あつい、と零れそうになる口をぎゅっと押さえた彼女の肩を、雨彦の手がするりと撫でて、肩にかかっていたトラックトップをはらりと落とした。
「誘惑されたら、ノるしかねぇだろう?」
 そんなつもりない、と喚く彼女をひょいっ、と乱暴に担ぎ上げて、雨彦はそのままずんずんと寝室へと向かう。
「風邪は引かさないぜ、っと」
「っう、わ!」
 ベッドにそのまま放り出された彼女の裸身に覆い被さりながら、雨彦はばさりと布団を被る。
「こうしてりゃあったかいだろう」
「あの、服……パジャマ……っん」
 被った布団の薄暗がりの中、雨彦は自分も服を脱ぐ。
「雨彦さん、あ、あの」
 まだパジャマの心配をする彼女と素肌を合わせて、雨彦はくつくつと喉奥を鳴らして笑う。

「そんなにパジャマが着たいなら、俺がパジャマになってやるさ」

 なれるわけないじゃないですか!とわぁわぁ喚く彼女を組み敷いて、雨彦はぎゅっと包み込むように抱きしめる。
「素肌で暖めあえばいいじゃねぇか」
 風邪引くぜ、お前さん。
 そういって抱きしめて、雨彦は彼女に何度もキスを繰り返した。

 湯冷めしないよう体を温めるために雨彦がとることの出来る、これが最善策だったのだ。


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