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[想楽P♀]写真映り

全体公開 1865文字
2019-04-22 08:21:12

「こんなとこかなー?」

SNS用の写真を撮ってもらう想楽君と、無自覚に特別な想いを寄せているかもしれないPさんのお話です。

Posted by @toasdm

 なんだかとても似合うなぁ、というのが、彼女の素直な感想だ。淡い桜色と想楽の雰囲気とは、温度差があまりなく、親和性が高いように見えたのだ。
「こんなとこかなー?」
 桜の枝には手を触れず、想楽は桜に手を伸ばす。指先にまで神経を通わせたようなしっかりとしたポージングは、さすがはアイドルといった様子で、SNSの更新に使う季節らしい写真をいくつか撮りたい、と借り出された彼女は、桜並木でお散歩する想楽や、先ほどのようなしっかりとしたポージングでカメラを意識した想楽の写真をいくつか撮影した。
「あの、ちゃんとしたカメラじゃないんですけど」
「それでいいんだよー」
 本当にいいんですか?と何度も確認したのだが、想楽はあえて、自分のスマートフォンで撮影するように、と彼女に指示を出したのだ。何を考えているんだろう、と想楽の意図も読めないまま、彼女は撮影を終えた。

「こんな感じで、大丈夫ですか?」
「失礼しますー」
 撮影した写真をスマートフォンで確認しながら、想楽はいくつかピックアップしてしっかりとフォルダ分けしているようだ。外で確認すると画面がよく見えないから、と入ったカフェの奥まった席で、ふむふむ、と品定めをしている想楽はアイドルらしく、頼もしいとすら彼女は感じた。
「こんなとこかなー」
 使えそうな写真をピックアップし終えた想楽は、ずず、とカフェオレをすすってスマートフォンを置いた。これで一仕事終わった、と区切りのついた安心感に彼女も飲み物を飲みながら、想楽の満足気な表情に誇らしさのようなものを感じていた。
「お休みの日なのに、付き合わせちゃってごめんねー」
「いえ、大丈夫ですよ」
 のんびりとした想楽の口調が、春の桜らしさを感じさせるのかもしれない、と彼女は少しだけ笑って想楽を見る。充実感の溢れる表情からは疲れは見えず、なんなら少し、楽しそうだとすら思えた気がして、彼女は振り返った。
 デビューしたての頃から一見すると特になにも変化はないように見えるが、想楽は想楽なりに、アイドルらしく自分らしく、頑張っているような気がした。年上二人に囲まれて、適切な距離をとりながらもSNSや流行に関しては、想楽の若さはアドバンテージになっているようで、Legendersの公式SNSアカウントの発信はそのほとんどが、想楽の手によるものだった。個人で管理しているSNSの更新も、想楽のものがダントツで更新頻度が高く、今日のようなちょっとした写真と共に更新される日常は、等身大の北村想楽の日常が見られるようだ、とフォロワー数も多い。
 自然体で自由に。それが自分らしさだと言っていた想楽にとって、もしかするとこういった何気ない日常を自然だと思わせるセルフプロデュースは、理に適っているのかもしれない。弱冠十九歳の彼から見える世界とはどんなものなのだろうか、と彼女は思いを馳せていた。
「プロデューサーさんは」
 そのぼんやりとした思考の中に、想楽の声が出し抜けに響く。なんですか、と意識をそちらに向けると、想楽はにんまりとスマートフォンの写真を一枚、彼女に見せる。
「僕のことをこんな目でみてくれてたんだねー」
 それは、一瞬を切り取ることができた偶然だった。
 桜の花びらが風に舞い散る幻想的な雰囲気中、両手を広げてその場でくるくるとまわっている想楽の連続写真のうちの一枚だ。光と花びらの乱反射、拡散、よく撮れているという表現はしっくりきたが、それよりも。
……どういう、意味ですか?」
 そう尋ねながら、彼女は高鳴る胸をぎゅっと押さえた。
 その一枚だけはやけに、被写体である想楽に対して寄っているというか、なんというか――ありていな表現をするのであれば、特別な感情を感じるような、そんな写真映りになっているように、思えたのだ。
「ふふっ。すごくよく撮れてるけど、これはお蔵入りかなー」
 名残惜しそうに画面をなでてから、想楽はスマートフォンの画面をオフにする。想楽の言わんとしているところがなんとなくわかってしまうと、あとはただただ、ひたすらに、気恥ずかしさが襲ってくるばかりだ。意味深な笑みと共に頬杖をつき、想楽は彼女に視線を投げかける。

「一瞬にー、想いを映す、花吹雪ー。特別に想ってくれる人がいるなんて、アイドルとしては内緒にしておかないとだからねー」

 そう言われて違和感を感じなかったことそのものが、彼女にとっては違和感だった。もしかして、そうなのかも?の感情は、ちょうど写真のような、桜色をしていた。


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