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◆ハートのエースは出番なし

全体公開 1 2145文字
2019-04-24 02:30:10

カナミツ小説(2000字)
女性陣のトランプ占いを見かけての会話

Posted by @can_dume

 カナタがロビーを通りがかると、テーブルに数人が集まって何やら盛り上がっていた。
 女子たちが六人とも揃って、何かトランプで遊んでいるようだ。中心にいるエマがカードをめくりテーブルに並べていく様子を、和やかに囲んでいる。
「占いしてんのかな?」
 隣を歩くミツヒデが、そちらを指さし足を止める。
 占い。そう言われると、確かにそれだった。占い師めいた雰囲気。結果への不安と期待が入り混じる顔。
「女子ってそういうの好きだよな」
 こちらの言葉で、ミツヒデは取り繕うように目をしばたたかせた。つい先ほどまで、興味深そうに眺めていたことに気づく。
 そういえば、地球の教室でミツヒデはコハルを含めた他の女子たちに交じって、溶け込んでいたものだ。
……いや、男の占い師もたくさんいるし、男が好きでもいいんじゃないかな」
 一応フォローを入れてみると、ミツヒデの顔が安堵で輝いた。
 やはり交じりたかったのだろう。特にこれから用があるわけでもない、遠慮せずに行けばいい、そう告げようとした。
「おー俺らも、占ってもらう?」
「え?」
 ミツヒデだけではなく。
「俺も?」
「カナタがああいうの興味ないのは知ってるけど! ほら! なんつーか、……ためしに?」
 占いに対する科学的根拠の薄さは、以前も話してランゼに憐れむような眼で見られ、コハルに頭をはたかれた記憶がある。
「エマちゃんの占いって当たりそうじゃね?」
「雰囲気あるよな」
 確かにカードや水晶玉などの小道具がなくとも、エマの呟く一言には神秘が満ちている。
 切迫した事情を尋ねて、淡々と枷の深い未来を告げられたら、根拠がなくても関節の隙間に刺さる気配はある。
 聞くとしてもせいぜい、今晩のごはんが美味しいかどうかくらいに留めておきたい。そして、それは意味のない質問だ。
「たとえば、相性占い……とか」
「へえ。誰と? なめろうさん?」
 ミツヒデが躊躇いながら口にしたお題目は、カナタにとっては意外なものだった。
 一体ミツヒデは誰との相性が気になるのだろう。
「誰って、カナタだよ。なんでだよ。カナタと俺の! 俺らって言っただろ!」
「ああ」
 意外だった。
「俺は、占う必要を感じないな」
……だよな。分かってたよ、カナタはそう言うよなあ……
「ミツヒデとは相性が良いから、占いの結果なんて、見なくても分かるだろ」
 肩が沈んでいったミツヒデの体が、途端に跳ね上がる。
「え、そ、そうかっ!」
「少なくとも俺はミツヒデを嫌だと感じたことはないな」
 思い返して、めんどくさいと感じることはたまにあるが、と内心に注釈が湧いたことは隠しておく。
「そっかー! 俺も! へへ、俺とカナタは相性抜群だ!」
 腕を大きく広げ、満面の笑みを浮かべるミツヒデの姿は微笑ましいが、まさかこんなに喜ぶと思わなかった。
 ふわふわの髪がいっそうふわふわしている。
 このまま抱き着いてきそうだなと思った瞬間、コハルのひと際大きな笑い声が上がる。
「アハハハハッ、ミツヒデ結婚できねーじゃーん!」
「なんだと!?」
 テーブルの方を向き、女子たちと一斉に目が合う。
「なんで俺のこと勝手に占ってんだよ!」
「えーあたしは結婚できるしー?」
「無残」
 エマの一言は想像通りに刺し方が達者だ。死神めいた蹂躙のまま、手際よくカードをシャッフルしている。
「えっ、……ほんとに? ほんとに俺、結婚できないの?」
 少し涙目になっているミツヒデの肩に、カナタはそっと手を置いた。
 その感触にミツヒデは無言のままカナタに振り向く。占いを信じやすいから絶望しているかと思えば、意外とそうでもない。
 ショックではあったものの、充分に振り切れるとばかりの強気の顔。
「俺はカナタとは相性抜群だから、いいんだよっ」
……そうだな。所詮は占いだし、信じることもないだろ」
 頷くしかない。幸い、ランゼたちには聞こえなかったようだ。もし聞こえて、じゃあ相性を実際に占ってみよう、ともなれば厄介だ。
 そして、ミツヒデには『酷い話』になるが、妙なことに勝手に行われていた占いの結果は、腑に落ちていた。
 コハルならまだともかく、他の女性と結婚するミツヒデというのは、何故だか不思議と、想像しにくい。
 異性とも仲良くするミツヒデだというのに、それよりも。
「いや! 当たっててもいい、俺はカナタのそばにいるからな!」
 そちらの方が、ずっと想像しやすい。ランゼと結婚した自分が、ミツヒデやコハルとも変わらず仲良く過ごす光景。
 ミツヒデが結婚すれば、きっと相手を誰よりも大切にするだろう。親友よりも大事にするだろう。
 そんな親友の姿を考えると、胸が僅かにむずつくような感覚にさせられて、気づけばカナタは困惑のまま微笑んでいた。
「わかったよ、よろしくな」
 吐息の代わりに呟くと、その言葉が慈雨のようにミツヒデの瞳を輝かせる。
 やはり占いは必要なしに、相性がいいのだろう。言葉のひとつふたつで喜んでくれるのだから。
 そんなふうにカナタは今日も、かなり呑気に考えていた。


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星座占いだと、まあそこそこ良いって感じのカナミツ(※カナランは相性抜群)


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