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[雨P♀]オマエサン

全体公開 1 1629文字
2019-04-29 00:18:08

「なぁ、キューちゃん」

迷子の九官鳥を拾ってきた雨彦さんと、いきなり事務所に鳥連れてきたアイドルに驚いたPさんのお話です。

Posted by @toasdm

「うわっ、なんですか葛之葉さん、それ」
「ん?」
 何、って見ての通りさ、と肩に止まらせた黒い鳥の前、雨彦は伸ばした人差し指を差し出した。ちょん、とその指に飛び乗って、鳥は雨彦の指を止まり木のようにしている。驚いたかい?と彼女の方へと腕を伸ばせば、鳥はぱちぱちと、二度三度瞬きをして小首をかしげている。
「葛之葉さん、の、使い魔ですか……?」
「使い魔……?」
 ぷっ、と吹き出して、それからけらけらと、雨彦は豪快に笑う。体が揺れるのに合わせて鳥は器用に膝を使って、頭の位置を一定にするように体を上下させている。オレンジ色のくちばしと、目元の黄色い模様はどこかで見たことあるようだが、彼女は別段、鳥に造詣が深いわけではなかった。
「九官鳥さ」
「九官鳥?」
 ああ、これが、というのが正直な感想で、じゃあ何か喋るのかな?というのが次いで出てきた感想だ。彼女の表情からそれを読み取ったのか、雨彦はくつくつと笑い九官鳥を自分の目の前に持ってくる。
「なぁ、キューちゃん」
「キューチャン!」
「?!」
 やっぱり喋った!と思わず叫んだ彼女の声に、九官鳥は驚き雨彦の肩に飛んでいく。
「急に大声を出すなよ、驚いちまっただろう」
「す、すみません……
 九官鳥は雨彦の肩で、雨彦の首元にぴったりと身を寄せるようにしてじっとしている。存外神経質な生き物らしいぜ、と九官鳥の頭から背中の辺りを指の腹で優しく撫でてやると、九官鳥はちょこちょこと、雨彦の肩を移動する。
「飼ってたんですね」
「いや?」
「は?」
 そんなに懐いてるのにですか、と目を丸くする彼女と、何故か懐かれちまってな、と苦笑する雨彦の間で、九官鳥はすらすらと、住所と電話番号を喋り始める。
「うわ賢い!」
「ははは、飼い主には連絡済みでな。往来で待つわけにもいかなかったから、事務所使わせてもらうぜ」
 なるほど、と漸く合点のいった彼女は、珍しい取り合わせに興味津々の様子だった。キューちゃん、と呼びかけると、やや年老いた女性らしい声でキューちゃん、と返事をするところをみると、飼い主はおばあちゃんなのかもしれない、と彼女は九官鳥の声帯模写に感心する。
「神経質なのに、飼い主以外にもこんな風に懐くんですね……
「キューちゃんは俺のことを止まり木かなんかだと勘違いしてるかもしれないがね」
 なるほど、と納得する彼女を、お前さんひどいな、と笑う雨彦の肩で、九官鳥は小首をかしげ、雨彦の目をじっと見つめる。
「なぁ、キューちゃんからも言ってやってくれよ。お前さんひどいな、って」
「オマエサン!」
「?!」
「へぇ……?」
「なっ…………えぇ~……
 雨彦の声の調子そっくりそのまま、九官鳥は雨彦をじっと見つめてはっきりと、お前さん、と喋った。覚えちまったかい、と苦笑する雨彦の笑い方には興味を示さずに、九官鳥はずっと、オマエサン、オマエサン、と繰り返している。
「うわぁぁぁぁ、なんか、なんか、うわぁぁ……飼い主さんに申し訳ない……
「そうだな……キューちゃんにも覚える言葉数の限度があるだろうからな……
 さしもの雨彦もこれには申し訳なさを感じているのか、せわしなく喋るやや年老いた女性の声に混じる自分の声に苦笑いをする。
「ん、っと……飼い主が近くまで来たか」
 通知のあったスマートフォンを操作して、雨彦は電話をかける。二言三言話をして電話を切ると、外で待ってるらしい、と窓の外をひょい、と覗く。鳥篭を持った老婦人が立っているのを目にして、ほ、と安堵の溜め息をつく雨彦の肩で、九官鳥はずっと、雨彦を見てはオマエサン、と喋っている。
「っははは、キューちゃん、お前さんは俺じゃなくてこっちの美人さんのことだぜ」
「び、っ!?」
 にやりと笑いながら彼女の方を指差した雨彦は事務所を出る。窓の外、鳥篭に九官鳥を戻した雨彦は彼女の方を見上げて、口パクだけで「オマエサン」と言って去っていった。


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