@toasdm
天気のいい日に早起きをすると気分がいい。カーテン越しに差し込んでくる日差しの柔らかさと、そういえば圭の雰囲気は似ている、と彼女はこっそり笑った。
「うん?」
なぁに、と微笑む圭の頬に優しくキスをして、彼女は立ち上がり、レースのカーテンをシャッと開ける。換気の為に窓も開け、春風はふわりと、カーテンを揺らしながら二人の部屋に入り込んできた。
「圭さん」
こんなにお天気がいいのだから、と彼女は思い立ち、外を眺めながら嬉しそうに呟いた。
「絶好のお洗濯日和ですよ」
「……ふふ、そうだね」
その春風に誘われるようにふわりと笑った圭も彼女の意見に賛同し、二人は今日のこの日を、洗濯日和と制定した。
「洗えるもの、全部洗ってしまいましょう」
「シーツとかタオルケット、毛布なんかも洗おうか」
洗い立ての寝具で眠る心地よさは二人とも気に入っていて、だからこそ真っ先に出てきたその意見は即採用となる。二人はいそいそと寝室に向かい、ありとあらゆるベッドリネンを取り払って洗濯機へと入れた。
「んっ、しょ……っ」
ついでだから、と彼女はカーテンにも手を伸ばし、これもついでに洗って干せば、部屋の明るさも変わって気持ちがいいだろう、と思い立ったのだが、彼女の背丈では今一歩、カーテンレールに手が届かない。踏み台になるような椅子があっただろうか、と振り返ると、洗濯機にシーツ類を入れた圭が戻ってきて、彼女の後ろからひょい、とカーテンのフックを外す。
「ほぁぁ……」
「……なぁに?」
「あ、いや……背、高いな、って……」
「そう?」
まあ男だからね、とさしたる苦労もなくカーテンを外した圭は、フックを外して洗濯機の横へと持っていく。こういうところでどきどきさせてくるんだよなぁ、この人、とほんのり熱くなった頬をぺちぺちと叩く彼女を、圭は不思議そうに小首をかしげて見つめていた。
「あ」
ピーピーと、洗濯機が洗濯完了を告げる。洗い終われば後は干すだけだ、と洗濯機のドアを開き、彼女はランドリーバッグに次々と、ベッドリネンを放り込む。
「う……」
入れ替わりでカーテンを洗濯機に入れて、さて外に干すぞ、とランドリーバッグを持ち上げようとした彼女は、その意外なほどの重さに一瞬たたらを踏んだ。
「重た……っ」
「貸して」
洗濯が終わるまでの間、確か圭はソファで転寝をしていたはずなのだが。スッと伸びてきた腕は軽々と、その濡れて重たいベッドリネンを詰め込んだランドリーバッグを持ち上げていた。
「外に干すんだよね?」
「う、うん……」
開け放った窓からサンダルを履いてベランダに出て、圭は鼻歌交じりにシーツを干していく。軽く背伸びをした程度で届く物干しは、彼女はいつも一度下ろしてから洗濯物を干す高さにあるはずだ。やっぱりこの人男の人だ、とまたどきどきさせられて、彼女はぼんやりと、音符の舞う洗濯物が風に揺れるのを眺めていた。
「カーテンはどうするのかな?」
「あ、えっと……」
ふんわりと柔軟仕上げ剤の香りを漂わせた圭が振り返る。大型のものばかりを干した物干しは既に満員御礼で、カーテンを干す場所はなさそうだけど、と圭は眉尻を下げている。
「カーテンはそのまま吊るせば、干せるので……」
「ああ……そうだね」
干すのは僕がやるから、と彼女をソファに座らせて、ついでに自分も隣に座る。
「お洗濯って、気持ちがいいよね」
眠くなってしまったよ、と彼女に抱きつく圭から漂う、清潔感のある生活の香り。ぽかぽかの日差しと、春風のそよめき。抱きしめてくれる腕の強さも、背の高さも、彼女をどきどきとときめかせたが。
「……気持ちいいですね」
日差しのような柔らかさと、男性らしい圭の一面が、彼女の中にも春を呼んでいた。