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[雨P♀]なによりも雄弁に

全体公開 1045文字
2019-05-07 08:04:38

「歯は磨いたのかい?」

寝起きの雨彦さんに「歯磨きしてこいよ」とシャワーを促がされてそこで悪戯に気付いたPさんと雨彦さんの事後と事前の間みたいなお話です。

Posted by @toasdm

 わーともぎゃーともつかないような(あるいはどちらとも取れるような)叫び声と共に、彼女はバスルームから飛び出してきた。ベッドでのんびり寝転がっていた雨彦は、ようやく気付いたか、とくすくす笑って、彼女の足音を聞いていた。
「雨彦さんっ!!」
「なんだい?」
 その顔ーー!と叫ぶ彼女はバスタオル一枚を巻いたまま、ベッドルームに駆け込んでくる。
「歯は磨いたのかい?」
「磨いた、じゃなくて!」
 真っ赤になって濡れ髪を振り乱し、彼女は左の二の腕を雨彦に見せて指を差す。
「こっ、これはなんなんですか!!」
「ん?」
 ぽつんと小さくついた赤い痣は、いわゆるキスマークだ。よく見えないな、とシャンプーの香りを漂わせながら、雨彦は身を起こして彼女の腕をぐっと引く。
「うわ、ちょっ――!」
 当然の如くバランスを崩した彼女はベッドに引き倒されて、あっという間に雨彦に組み敷かれる。
「ああ……悪い虫が寄り付かないように、ってところかい?」
「ところかい? じゃありませんっ!」
 目立つところではないにせよ、位置的に今日着る服の袖ではギリギリのところに付けられたそれは、確か昨夜寝る前にはなかったはずのものだった。
「いつの間に!」
「お前さんが寝てる間にさ」
 悪びれた様子は皆無、雨彦の手はその跡を優しく撫でてから、するりと彼女のバスタオルにかかった。
「よく寝てたな、何されても気付かなかっただろう?」
「ちょ、ちょ、ちょっ」
 する、と人差し指はタオルと肌との隙間にもぐりこみ、ぐっ、と引けばはらりと瑞々しい肌が露わにされる。
「な、んっ……!」
 控えめな胸に手を乗せて、優しくマッサージをするように撫でながら雨彦は唇を合わせる。ちょんちょんと舌先で唇を突いて、うっすらと開いたそこから舌を滑り込ませると、にんまりと、目は細められた。
「歯磨きが終わったなら、キスもできるだろう」
「や、もっ、朝から」
「朝からバスタオル一枚で彼氏を誘惑するお前さんには言われたくねぇな」
 誘惑なんて、とのしかかる雨彦の胸板を押し返してみるが、ぐ、と体重をかけられるだけで腕はぺしゃりと潰される。
「今日は休みだろう?」
「ぅ……
 早起きは三文の得だな、と首筋に柔く歯を立てて、隙間からちろちろと、彼女の湯上がり肌を舐めあげながら耳元で囁く。

「昨夜の続き、するかい?」

 ひくん、と腰の奥が疼いて、彼女は真っ赤になったまま硬直する。その沈黙はなによりも雄弁に、彼女の欲求を雨彦に告げていた。


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