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ミルクチョコレート

@_48rse
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2019-05-07 13:59:52

仁と戸塚くん

「戸塚、一緒におやつ食べよ」

修学旅行用に買い込んだお菓子のうちの一つを鞄から取り出して、肩を落とす級友に声を掛けた。箱の一部は凹んでいるが、中身は無事。随分暖かい日が続いていたので溶けないか心配だったが、問題なさそうだ。

バスから降りて担任教師の指示で二手に分かれて行動する。反応は様々だ。不安と焦燥、困惑と混乱、静かな歓喜と期待。それら全てが混在した感情をチョコレートに乗せて口に含んだ。舌先の熱でほどけて、甘さと香りが鼻の先を抜ける。そして剥き出しになったアーモンドに歯を立てる。

「これからどうしようね」

あたしたち、どうなるんだろ。なんて言わない方が良いだろう。もっと楽観的に捉えるべきだ、少なくとも今この場では。いつも賑やか過ぎるほど賑やかで、生き生きとしている戸塚の隣に陣取った。

自分がどんな状況か分からない、それが怖いのだと語った声音にはたっぷりの不安と焦りがあって、少し安心する。怖いと口に出せる素直さが彼の取り柄だ。

「大丈夫だよ。ほら、お菓子あげる」
「ありがとう...」

自分より大きな指先がひしゃげた箱からチョコレートを攫って行く。「チョコレートには緊張を和らげる効果があるの」と口添えると「チョコすげー 」と少しだけ明るさを取り戻した声が返ってきた。

まだ修学旅行は始まったばかりだ。


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@_48rse
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