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オレンジキャンディー

@_48rse
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2019-05-12 15:06:26

仁と福くん

サイキョウト

最強と、最凶と? 最恐と、災響と、西京都......? いくつかの単語が浮かんだり消えたりを繰り返し最後に認識した「西京都」のニュアンスを噛み締める。

開けたビルの屋上で焚いたキャンプファイヤーは燃料を継ぎ足しながらまだ煌々と燃え続けていた。煙の匂いに時折甘さが滲むのはマシュマロや菓子パンを炙っている子がいるからだ。奇数班が探索に出ている中、待機を決めて。なんだかんだこの大きな炎に拠り所を感じ始めた頃だった。

探索から戻った担任教師はいつになく真剣で、自身の混乱を押し殺した声で告げた「異世界 西京都」というワードをぼんやりと脳内で反芻する。異世界ってなんだろう。自分の生きていた世界とは異なる世界。東京都でなく西京都。まるで鏡合わせのように反転した、赤い空の続く街......?

あまりにも突拍子も無いものだからぽかんと馬鹿みたいに口を開けて、危うくキャンディーを落とすところだった。

「仁、大丈夫か?」

不安げにこちらを窺う青年の表情に既視感。あれは中学の時。知らない街で、父は仁の知らない女の人にキスをした。「大丈夫?」とこちらを窺って来たのは疎らに金の髪を垂らした少年で、その顔は父の好いた女の顔によく似ていたのだ。

「大丈夫。ありがとねー」

赤みのある茶髪がキャンプファイヤーの炎を透かして青年の輪郭を作る。安堵の表情は上手く作れていただろうか。口の中のキャンディーが溶けて甘い。柑橘系の風味の飛んだ、ただ甘いだけのそれを舌の先でつついて、蕩かして、噛み締める。パキンと砕け粉々になった破片を飲み下す。

眼前で繰り広げられる話は広大で、壮大で、取り留めのないものに思えた。


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@_48rse
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