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カラー・レス

@_48rse
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2019-05-16 15:32:11

仁とねむちゃんと無崎ちゃんと

愛にも形があるように、好きにも種類がある。どちらもたった二音で形成される言葉の癖にその形状・種類は気の遠くなるほど膨大で複雑であるのだから言葉の不便さに嘆息する。

思春期の娘には些か過度にも思える「好き」を囁いた父はその口で新しい母にも「好き」と言った。「世界で一番愛してる」言った言葉は仁が中学に入った頃に期限切れを起こし、両親は離婚したのだった。

「ねむのこと好きだよ」
「私も好きだよ」

都合の良い嘘に塗れた恋人関係の中交わされる「好き」はどちらも空っぽで、空っぽの「好き」は心地良い。意味を持たない「好き」にならどんな意味を持たせても正解なのだから。


加害者の少女は周囲から掛けられる言葉の濁流に煩わしそうに眉を寄せていた。ピンクのヘアピンを十字にして髪を留め、被害者の少女の息の根をも停めようとした少女だった。

青年に抱えられた怪我をした恋人の姿を見て真っ先に感じたのは恐怖だった。作り上げた心地良い関係が死によって容易く壊される。ここは東京じゃない。鏡合わせのこの街で都合の良い空白の「好き」を投げかけてくれるのは彼女だけだというのに、その彼女が死んでしまっては前提が消失してしまう。テスト中に解答用紙を他人に攫われる想定なんてまるでしていなかった。

「......酷いよ、無崎さん」

こんなの酷い。経緯は知らない。理由も知らない。知りたいとも思わない。侮蔑を塗り固めた言葉に加害者の少女、無崎弥音の瞳孔が僅かに揺れて、けれどその唇から言葉が紡がれることは無かった。

マグネシウムリボンを分けてくれた無崎さん、貴女のことは少しだけ好きだったけど。あたしの世界の平穏を壊すならあたしは貴女を嫌いになるよ。

「ねむ、ねむ、良かった......本当に良かった」

青年に抱えられた少女の手を取り言葉をかける。

貴女が死ななくて良かった。
あたしに空白の「好き」をくれる貴女が死ななくて、本当に良かった。


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@_48rse
むくらしば
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