@mary_hitman
ああ、やっぱり降り出した。
日頃からちゃんと天気予報を見ているくせに、今日に限ってうっかり傘を忘れて行った間抜けなあいつを駅まで迎えに行ってやらないと。あいつのことだ、慌てて真っ直ぐ濡れて帰って来かねない。伊達眼鏡についた雨粒を気にしているうちに水溜りなんかを見落として、文字通り靴の中までびしょびしょにして。
時計を見る。この時間なら、まだそう急がなくても間に合うだろう。
もしも今のあいつが自分の為に寄り道のできるようなやつだったなら、それはそれでいい。或いはタクシーなんか使って、それで行き違いになっても、メモ書きさえ残しておけば何とでもなる。
でも、そんなことはきっとない。
靴を履きながら、二本の傘に手を伸ばす。新調したばかりの自分のものに比べると、魅上の傘は少しくたびれているように見えた。
「そうだ。ついでに外食でもねだってやるかな」