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令和元年のゲーム・キッズ 23「自殺はやめよう」

@kozysan
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2019-05-23 06:11:49

渡辺浩弐のショート・ショートです。
※メイキング→https://youtu.be/uvma5qBFI-k
※完成品→https://www.amazon.co.jp/dp/4065169321

「自殺するなら、どの方法を選ぶか。それがいちばん大事なことだと私は思うの。ただ死ねばいいってものではないわ。私は苦しまずに死にたかった。ネットでいろいろ調べていて、いいことを知ったわ。首をくくって死ぬのは苦しくないって、むしろ気持ちがいいものだってこと。息は止める必要なくて、首の太い血管をじわじわと絞めてくのがコツだって。ロープで首をしばって踏み台から飛び降りるのは、あまり良い方法じゃないみたい。絞首刑になる人は、衝撃で首の骨が折れて、それから数十秒は足をばたばたさせてるんだって。きたないものを垂れ流しながら。おお、いやだわ。自分でやるなら、タオルを使うのが良いんだって。タオルを輪にして壁の低いところ、たとえばドアノブとかにかけて、首を入れる。壁にもたれてゆっくり座る感じで力を抜いて、首に体重をかける。息はできるし、痛くもないって。頭に入ってくる血が止まって、だんだんと気が遠くなっていく。それってすっごく気持ちがいいんだって。そうして、そのまま死ぬの。……死ぬ、はずだったの」
「僕は、できるだけ短い時間で死に至る方法がベストだと考えました。人は神経に刺激を受けてからそれを脳で知覚するまでに、つまり痛みや苦しみとして感じるまでに約0.5秒かかるそうです。0.5秒以内に全てが終わる死に方なら、痛くも苦しくもないということです。拳銃で頭をふっとばす方法をまず考えましたが、それだとごくまれに死ねないことがあります。弾丸は小さいですから脳の一部分を損傷しただけで通り抜けてしまうんです。それで生きのびてしまったら悲惨です。もっと確実な方法として、一瞬で頭蓋骨ごと脳髄を粉砕する方法を考えました。頭のまわりに爆薬を巻き、起爆させるのです」
「確実な死に方って、実は少ないんだ。爆発でビルごとふっとばされて生き残った人もいる。100メートルを超えるビルの屋上から飛び降りて生き延びた人も。もちろん体はぼろぼろで、それからは大変なことになる。自殺するなら、絶対に失敗しないように死にたいものだ。どうせ死ぬんだから、金に糸目はつけない。俺はヘリをチャーターして、火山の上空から火口に、マグマの中に飛び降り自殺しようと考えた」

「タオルで首を吊って座り込んだわ。そしたらすぐ頭がぼんやりとなって、体じゅうがびりびりしびれてきた。それがもう超気持ち良くって、なんか自分が天使になって空に昇っていく感じ。ところが大変、私が寄りかかってたドアがいきなり蹴り壊されたの。私は床に叩きつけられたわ。救助隊だった。それから蘇生措置を受けた。意識を取り戻したけど、酸欠でね、脳がほとんど死んじゃってたって。なんとか言葉を喋ることはできるようになったけど、手も足も、今はほとんど動かないわ」
「ダイナマイトって、もうあまりないんですね。今、出回っている物は含水爆薬というものでした。僕は業者を装い、ネット経由で入手しました。その注文履歴が当局にばれたのは今考えると当然ですね。それから密かに監視されていたようです。決行の瞬間、僕の部屋の周囲には10名もの特殊救命隊員がジュラルミンの盾を装備して、スタンバイしていました。僕は人間の頭蓋骨の硬さを知りませんでした。僕の手足は部屋中に飛散しましたが、頭と脊髄と、内臓の6割くらいは回収されました。それらは病院でつなぎ合わされました。そして僕は生き返りました。ほらこんな、芋虫みたいな姿で」
「煮えたぎる火口のどまんなかに人が落ちるとどうなるか。もちろん即死だと思っていた。俺の体はばらばらになりどろどろになりマグマに混ざって消え失せていくと。そうではなかった。人間の体はたっぷり水気を含んでいる。それがマグマの表面に激突した時、俺の体表に近い部分の水分が一瞬で沸騰して弾けた。その勢いで俺は跳ねたんだ。燃え上がりながら、空中10メートルもの高さまで飛んだ。その瞬間、火口の縁に待機していた特殊装置から巨大なもりが発射され、俺の体を射抜いた。もりはワイヤーで引き戻され、俺は串刺しの状態で回収された。全身焼けただれ、目も鼻も溶けてしまっていたが、俺はまだ生きていた」

「お願い、すぐに殺してちょうだい!」
「頼みます、殺してください!」
「殺せ! こんな姿で、こんなに苦しい思いをして、生きていたくないんだ!」

「この部屋の方々は特に辛抱がないですねえ。殺せ殺せって、そればかり。まあここには同じ状態の人がたくさんいて、みなさん同じことを言いますけどね、あきらめた方がいいですよ。殺すわけないじゃありませんか。せっかく助けたんですから。知っていますよね。この国の人間は50歳までしか生きられません。その代わりに、50歳までは、国としてできる限りのことをして生き延びさせることになっているんです。これほど監視ネットワークが発達した今、個人のことといっても、自殺の計画は他殺やテロの計画と同様に、自動的に検知されます。検知された以上は、国としては助けなくてはならない。しかしながら個人の権利も尊重しなくてはならない。未遂の段階で他人が干渉することはできないのです。そこで、この方法が採用されています。自殺が実行される瞬間まで国家としては一切、手を出さない。しかし準備は万端にしておいて、実行された際はすかさず助ける。最新の軍事技術や医療技術を総動員して。体がばらばらになっていても、心肺停止状態になっていても、命があればなんとか延命させます。それが使命なのです。まあたいていはあなた方のように身動きも取れない状態になります。そういう人達を50歳まで生かすことも、国の義務です。ただしあなた方には生産性は一切ありません。そもそも自殺をするような人ですからね。あなた方の生命維持にかける予算は極力抑えなければなりません。最低限の栄養分と水分を与え、ぎりぎりの環境で、50歳の誕生日を待ってもらいます。肉体的精神的な苦しみは相当に大きいようです。時間の進み方は100倍にも感じられるそうですね。でも耐え続けて下さい。どんなに苦しかったって、死んでしまうよりは、ましなはずです。……ああ、しつこいなあ。殺せ殺せって、そればかり。そんな残酷なこと、できるはずがないじゃないですか」


ぷよ太郎 @yorikone

セリフだけの話も織り交ぜるといいですね。50年で死ぬと言う世界の犯罪事情はどうなってるんでしょうかねー殺人などの事情

2019-05-23 07:31:49
押利鰤鰤 会社倒産して無職3ヶ月 @yawaren

自殺しようとする人の人権も尊重される世界。
尊重されるからこそ、死なせてはもらえないという本人達には過酷な世界になっているのですが、家族にとっては死んでほしくはないでしょうから本人の意思は全く尊重されない、ある意味で優しい世界

2019-05-23 10:28:47
amiga @amiga1200

住人はその存在を忘れているけど
走馬灯システムで行動はほぼ筒抜けな状態だからねぇ

生死の権利は政府の管理下にある世界
50歳過ぎるまでは死んでほしくないと家族が願い
50歳過ぎると、とっとと死ねと家族(世の中)に願われる世界

2019-05-23 20:02:51

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渡辺浩弐
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