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[想楽P♀]食べてるとこ

全体公開 1581文字
2019-05-28 16:42:40

「食べないのー?」

想楽君が食べてるとこが美味しそうで好きなPさんと想楽君のお話です。

Posted by @toasdm

 そうかなー、とのんびりしたいつもの調子で、想楽はクレープを食べている。包装の紙をくるくると器用に破り取り、てろん、と垂れるクレープ生地をはむっ、とかじって行儀よく食べる。口の端についたクリームを親指で拭い、ついちゃった、とニコニコ笑って、想楽はそれも、ちゅっ、と食べてしまう。食べることは好きだよ、といつか想楽が言っていたのを思い出し、彼女はくすりと笑った。
 想楽は本当に、美味しそうに食べる。大食い・早食いというわけではなかったが、想楽が食べている時の表情は幸せいっぱいで、見ているとこちらもニコニコと、幸せな気持ちになるような顔をして食べる。なにかそういったら、食レポや食品のCMの仕事を持ってこようかと思うくらいには美味しそうに食べる想楽と、彼女は一緒になにかを食べることが好きだ。今日も美味しそう、と彼女もクレープを頬張りながら、ちらちらと、想楽の食べる姿を網膜細胞レベルで目に焼き付けていた。
「うん……なんか、本当に美味しそうに食べるなぁ、って」
「美味しいからねー」
 食べないのー?と彼女の手元をちらりと見て、想楽は小首を傾げる。食べてますよ、と言う彼女は彼女のペースでは普通に食べているつもりだが、想楽の半分以下の食べ進め具合だった。そっかー、とまた包み紙を破り剥いて、はむっと音がしそうな勢いで、想楽はクレープを頬張った。
「こっちのも食べてみるー?」
「んぇ」
 苺と抹茶とチョコレートという春らしいチョイスのクレープを、想楽は差し出す。間接キスを気にするような間柄ではないものの、彼女は少し戸惑った。こんな、人目のあるところで、という戸惑いのクレープの向こう、想楽は無邪気に微笑んでいる。一言で言うと、断りづらい雰囲気だ。
「結構美味しいよー?」
「う、じゃ、じゃあ、一口」
 ニコッ、と笑った想楽の手元に顔を近づけて、彼女は端っこをぱくりと頬張る。柔らかな生地とクリームと、甘酸っぱさとが口に広がる。追いかけてきた抹茶のほろ苦さとチョコレートの甘さがそれらと合わさり、自然と頬は緩んで綻ぶ。
「ほんとだ、美味しい……
「でしょー?」
 美味しいものは分け合いましょー、と満面の笑みで嬉しそうな想楽は、彼女の食べたところを追加でぱくりとかじってニコニコと言う。
「僕はねー、プロデューサーさんが食べてるとこ見るの、結構好きなんだー」
「え……?」
 今まさに、彼女が想楽に対して思っていたことを、想楽はぽつりと漏らした。
「美味しいものを食べてる時の顔、ずっと見ててもいいくらいかなー」
「ず、ずっとはさすがに、恥ずかしいかな……
 ずっとじゃなくても恥ずかしい!と叫びだしたくなる気持ちを押し戻すように、彼女はクレープを口に押し込む。ニコニコ顔に見つめられて、彼女は益々居心地が悪くなる。
「嫌だったー?」
……いや、じゃないから、困ってるんですよ……
 それは彼女の本心だった。嫌ではないからこそ、困っている。居心地の悪さと心地よさが同居するクレープは、いつもより甘く感じる。
「っふふ、そっかぁー」
 そんな彼女の食べる顔が好きだという想楽の、美味しそうに食べる様子をちらりと見てみたが、やはり彼女は、一緒に食べるのが好きだとしか思えなかった。ただひとつ違うのは、その思いがより強くなったということだけで、つまり彼女は、想楽の事がますます好きになっただけだった。
「食べないのー?」
「食べます、食べます」
 そんな彼女の胸の内を知らない想楽はそろそろ、クレープを食べ終わる。食べ終わったが最後、想楽は彼女の食べるところをじっくり観察するつもりなのだろう。
「慌てて食べなくてもいいのにー」
「んぐ、っいえ、そういう、わけにも」
 はぐはぐと、ハイスピードで食べ進めることしか、彼女にはその羞恥から逃れる手段がなかった。


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