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【屠竜】竜に砕かれる剣の国[Nægling]

@sin_niya_b
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2019-06-09 22:55:38

 ああ、竜がこの王国を食らいに来る──

 早朝、広い寝台の上で夢から目覚めた少年は、海の底のような深い藍色の目をしていた。一度、強く目を閉じ、それから改めて起き上がる。
 少年の名はデリクス・ノーラ・ネイリング、一国の王である。齢十と七つを数えたばかりだが、早世した父の後を継いでから五年、その治世に大きな問題は起こっていない。
 その国は平和である。特に周辺他国から攻められることはほぼ無いと言ってもよい。軍事力の高さと優れた外交手腕が大きな要因のひとつだが、それとは別に、この地を手に入れるにあたって発生するある不利益が周囲を牽制していた。
 この国は七十年に一度強大な古竜に襲われる。
 発達した軍事力も外交手腕もそのためであり、長い歴史に反して遺跡などの古い建造物が少ないのも、ある特定の地区に空き地が多いのもその影響である。
 そういった特殊な事情のあるこの国において、王に求められるのは圧倒的な「強さ」である。単純な武力の問題ではない。かつての王の一人は軍師としての才覚を使ってこの国を守り、また別の王は外交官としてこの国を守った。そして七十年に一度、襲竜の代に立つことになった王は、もれなく優れた神子を得て竜を退け続けてきた。
 次の襲竜の日まで五年。この少年王もまた、己と契る神子を探していた。
 ……その日、王は《神殿》に来ていた。未契約の神子たちの暮らす場所である。定期的に使者を送って神子を探してはいたが、こうして自ら向かい己の目で神子を見定めることもまれに行っている。神官の案内で神殿の中を歩きながら時折神子らしき人間とすれ違ったり、訓練風景を見学したりしながら己の運命を探すのだ。
 この王が神子に望むことはただひとつ、「戦うこと」。神子本人が戦っても良いし、王に戦う力を与えるのでも構わない。竜に対抗する力を得られなければ、国が滅ぶ。それだけは避けなければならなかった。
 ネイリンガルド。何度も古竜に襲われ、壊滅しては復興してきた国。民は強くしぶとくこの地に暮らし、来る災厄を王と神子が退けてくれることを信じている。その信頼は常に守られ、王は国を守ってきたし、これからも守り続ける。でなければ王ではいられない。ネイリンガルドの王はけして砕かれることのない剣でなければならないのだ。
 齢十七にしてそれを理解しているこの王は、「デリクス」である前に「王」であるこの少年は、その鋭い目で鍛錬場を見下ろしている。魔法の訓練などをしている神子たちを一人一人観察し、己の、国の第二の剣となるかもしれない者を探している。
 彼の運命は、まだ見付からない。


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新矢 晋@企画用
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