「そんなえっちな目で私を見ちゃうクリスさんには、サービスしちゃおっかなー?」
小悪魔的いたずらっ子Pさんに翻弄されないクリスさんのお話です。
@toasdm
普段の彼女の様子とギャップはクリスにとって好ましかった。普段あんなにしっかりしていて頼りがいのあるプロデューサーが、自分の前ではこんなにも無防備であけすけで、ただの、普通のどこにでもいる可愛らしい女性になってしまうのだ。そんな風に心を許してくださるのですね、と微笑ましい気持ちになりながらも、しかしクリスは時折、困惑していた。具体的には目のやり場に。
「あの」
「んぇ?」
ゆったりとしたシャツワンピースに着替えた彼女は、腿の中ほどまで捲れ上がった裾など気にも留めずに、もくもくとヨーグルトを食べていた。太ももが眩しいですね、とそこから何とか目線だけは逸らしたが、どうにも意識はそちらへ向いてしまう。
「リラックスしてくださるのはかまいませんが、もう少し身なりというか、姿勢に気を配っていただけると助かります」
「……んっ?」
随分とマイルドな表現になってしまったせいだろうか、彼女には意図は伝わっていないようだ。ゆるい格好のままソファで膝を三角にした所謂「体育座り」の姿勢のまま、彼女はクリスを見上げた。
「いえ、ですからその」
「なんだよぅ~、俺とクリスとの仲だろう~?」
茶化すようにからかうようにニヤニヤしながらそう言う彼女は、ギリギリのところで視線を逸らしたクリスの心情などおかまいなしといった様子ではむはむとヨーグルトを頬張っている。
「そのままでは、見えてしまいます」
本能と煩悩を少しだけ解放して、クリスは視線をちらりと彼女の太ももへと移した。そこで漸く気付いたのか、あー、と彼女は裾をぐいぐいと下へ引っ張る。
「これでいいです?」
「今度は上が危険になりました」
爽やかな綿素材のワンピースは伸縮性には自信がないのか、引っ張られて太ももは隠れても、引かれた分だけ胸元の露出が増える。おっと失礼、と胸元を隠して引っ張りあげれば、太ももはさらに露出してクリスの視線は陸の上ですいすいと泳いだ。
「わざとですか……」
「んふー」
小悪魔的に微笑む彼女の視線にからかいの色を見とめて、クリスはため息混じりにそう指摘する。ヨーグルトの容器をテーブルに置いて、ぺろりと口の端についたヨーグルトを舐めとって彼女は裾をまた摘まんだ。
「そんなえっちな目で私を見ちゃうクリスさんには、サービスしちゃおっかなー?」
にまりと口元を歪ませた彼女が、誘うようにそろりそろりと裾を捲っていく。おぉ、と思わず感嘆の声を漏らしたクリスの、視線はそこへと吸い寄せられた。ごくり、と生唾を飲み込むクリスの前で、ふにふにと柔らかそうな太ももが徐々に露になっていく。まるでウミヘビの脱皮のようです、と思ったが口に出す余裕などなく、クリスはその眩しさの一部始終を網膜に焼き付けた。
「……じゃーん!」
「んっ!?」
えいっ、と一気にウエストの上まで裾を捲くった彼女は勝ち誇ったように胸を張る。
「実はスパッツ穿いてましたー!」
下着を覆い隠す黒は確かに彼女の言うように、ぴったりとしたスパッツではあった。残念だったねクリス君~、とけらけら笑う彼女は実に楽しそうで、クリスはマリアナ海溝よりも深いため息をついて、その勢いでがばりと彼女にのしかかった。
「にゃああ!?」
「プロデューサーさん」
突然の襲撃に慌てふためく彼女を片手で軽々とソファに押し付けながら、クリスは鼻先が触れ合うほどの距離まで顔を近づけて彼女を見つめる。
「スパッツだろうがなんだろうが、太ももは太ももですよ」
「は、はいっ!?」
ぺちぺちと彼女の太ももを叩いて、これが私を誘惑することには変わりないのです、とクリスは彼女に言って聞かせる。叩かないで、痛い痛い、と、この時はまだ笑う余裕のあった彼女ではあったのだが――。
「私をこんなエッチな気分にさせたプロデューサーさんには、サービスをして差し上げなければいけませんね」
この目ガチだ!と気付いた瞬間、彼女の笑顔は凍りつく。待って待って、と暴れる彼女のウエストラインに手を這わせるクリスに、ごめんなさいは一切通用しなかった。
懺悔はベッドで聞きましょう、と彼女を担いだクリスの後ろ、シャツワンピースだけがいってらっしゃい、とソファで二人を見送っていた。