ads by microad

鬼屋敷親子小話

梅酒@すずめ
Publish to anyone 1favs
2019-06-13 00:36:19

収録:[自宅鍛錬中の歳三][食事とヴィラン][ほむらちゃん仕事中]

・登場人物

【鬼屋敷歳三】
鬼屋敷家のパパ、鬼の副長と呼ばれてる。



【鬼屋敷ほむら】
鬼屋敷家の娘、父さまが大好き。



【ヴィラン】
歳三に取り憑いている人食い鬼、クズ。


--------------------------------------------
【自宅鍛錬中の歳三】

顔に大きな傷を負った、隻眼の男が幾度も長大な棒を振るう。
自宅の庭に置かれた人を模した丸太へ、型をなぞるように丁寧に、力強く叩きつける。
地面には鍛え抜かれた肉体から滴り落ちた汗が染み込みんで、すっかり色が変わっていた。
男はもう一時間以上も集中し、ここで日課の早朝鍛錬を行っていた。

縁側の影、男から見て背後に当たる廊下の角。そこから、まだ幼さを少し残した少女がひょっこりと顔を覗かせる。
少女はこの家の人間で、家事の合間を縫っては彼の鍛錬の様子を盗み見に来ていた。
別に隠れているわけでは無いが、邪魔をしたら申し訳ないという気持ちと、自分に気を回していない何も着飾っていない彼の姿を見たかったのだ。
「…………」

男の動きがピタリと止まり、呼吸をゆっくりと整える。
「──────シィ…ァアアアアア!!」
後ろに引いた棒を、気合の声と共に全身の力を使って振り上げ、振り下ろす。
あらゆる無駄を削いだその一撃は鍛錬用の丸太を粉々に砕き、潰した。

荒々しい雄叫びと、丸太を砕いた一撃の二つの衝撃をその身に浴びて、身震いをする。
「……っ」

全身から湯気が立ち上る男が顔を上げ、後ろへと顔を向ける。
「ほむら、飯だ」
「……ふぁ」
鬼と呼ばれる男の、恐ろしさと逞しさを感じつつも、その熱に浮かされかけていた少女は、
「あ、はいっ。朝餉の準備ですね! できていますよ!」
「父さまの集中力が凄かったので、邪魔しちゃ悪いな、と…」
廊下の角から出つつ、聞かれても無い言い訳を話しながら身振り手振り変な動きをする。

ク、と口の端が上がる、子供には怖がられてしまうような笑みを浮かべていた。
「遠くから眺めてる分には構わん、だがやるべきことはしっかりとな」

「う…、はい…」
少女は顔を朱に染め、気恥ずかしそうにその両頬を隠すように手を覆う。
「では、汗を流される間にお着替えをお持ちしますから。今朝の鍛錬は、如何でしたか?」

「悪くはなかったが……まだまだ、道半ばといった所だ」

--------------------------------------------


--------------------------------------------
【食事とヴィラン】

『オイ娘ェ、飯まだかよ!めーしー!飯!飯ぃ!!』
鬼屋敷家には使用人が何人もいるのだが、食事を作っているのは鬼屋敷歳三の娘、鬼屋敷ほむらであった。

「煩いですよーっ! 昨日も今日も貴方の食事なんてつくっていませんっ!!」
茶碗に炊き立て米をよそいながら、ほむらは声の方へきっと睨む。
「これは父さまの食事です! 何億回言えば覚えるんですか!!」

歳三と少しずれるようにして、凶悪な顔をした怪物がずらりと並んだ牙でニイイイと笑う。
『歳三の身体は俺様の身体、歳三の飯は俺様の飯、だから普通より五倍は食わねえと足りねエんだろ!!』
『そっちこそ、いつ覚えるんだよォ、ギャハハハハハハハ!!』
「ヴィラン、少し喧しい」

「そーですそーです! 喧しいのです! 父さまのくっつき虫のくせに!」
米粒のついたしゃもじを、びしっとヴィランへと向ける。お行儀がよろしくない。
「父さまも、もっとしっかり言うべきです! 最近ますます図に乗って来てますよ……!」

『図に乗ってるだとぉ~人食い鬼のこの俺様に指図する方がよっぽど図に乗ってるじゃねえかよォ!!』
『テメェのことを頭からバクバク食ってやギギグガ!』
男は鬼の身体を自分の影に押し込み、ほむらの方を向いた。
「ほむら、俺も腹が空いた」

「は、はひぃ~…」
だいすきな父の前ではしたなく叫んでたことに気付き、頬を染めるほむらだった。

『(クソゥ、こいつこれで飯はくそ美味えんだよなア……)』
『(ああクソ、飯がクソ美味いんじゃなきゃ喰ってやったのに!クソ美味え!)』

--------------------------------------------

--------------------------------------------
【ほむらちゃん仕事中】

小さな算盤を一度傾けてから、人差し指で五玉をじゃっと流すように弾く。ぱちぱちと細い指先を使って算盤を鳴らすほむらは、陳情窓口の金勘定の仕事をしていた。
窓口にはまる子が出ており、ほむらは溜まっていた書類を集中的に処理していく。
「ふう……」
十数枚ある会計書類を片付けてから、ほむらは椅子の背もたれに深く腰を預けた。

「頑張っているようだな」
背の高い男が机越しに少女が処理した書類を見ていた。

「ぅやぁっ!?」
素っ頓狂な声を上げて、少女は椅子からずれ落ちそうになる。
「と、ととととと、父さまっ!?」

軽く咳払いをして、目を細める。
「兵糧の計算結果を確認しに来た所なんだが、阿良々木はいるか?」

「音も無く忍び寄るなんて、父さまも人が悪いです…。まる子さんは窓口であずまさんとお話されていますよ」
唇を尖らせながらほむらは答える。
「そちらの書類なら、まる子さんから預かってます。MKさまが来られるかと思ってました…」
そう言って彼女は書類を歳三へと差し出した。

「筆頭は今日は神社だ、部下にまかせても良かったが……」書類を受け取り
「そうだな、よくやっているようで、安心した」
ク、と口の端が上がる。

「…………」
ちらりと横目で歳三を見上げるように伺う。

「偉いぞ」ぽん、と娘の頭をなでた。

「えへへ…。ありがとうございます、父さま…♪」
実は自分も少しだけ手伝った書類を褒められて、嬉しさから隠せない微笑みを零した。

--------------------------------------------


ads by microad

You have to sign in to post a comment or to favorites.

Sign in with Twitter


Profile
梅酒@すずめ @umeshu0876
Share this page

ads by microad


Theme change : 夜間モード
© 2019 Privatter All Rights Reserved.