@akirenge
【状況は慌ただしいけれど】
気がついたら不可思議な世界に居て、連れ出されてた。
「ややこしいことになったみたいだけど、図書館は表向きは何事も無かったように動かさないといけないしさ」
「動ける奴は動くだろう。手は打ち続けている。――俺はアイツを見張る。そうしなければ面倒がったアイツはサボるだろう」
「確定事象で言っている」
「そう言う奴だ」
「僕達はこれからどうすれば良いの」
帝国図書館、その中でも帝国図書館分館という、隠された施設にルイス・キャロルとコナン・ドイルは居た。
彼等に着いてるのは河東碧梧桐と高浜虚子という文豪だ。此処は日本で、碧梧桐と虚子は細かく言えば、
短歌や俳句という世界で一番短い詩を紡ぐ俳人だそうだ。
「三木さんと露伴さんと共に侵蝕者狩りに慣れろとのことだ」
「露伴さんは武器が変わったから一から鍛え直しだし」
キャロルとドイルは新参で、初めての海外文豪であるという。説明されたところに寄ればコチラも一気に面倒なことばかりが
起きて一つずつ解決している最中らしく、準備はしていたようだが、それでも面倒だという。
三木と露伴は知っている。三木露風と幸田露伴、三木はキャロルとドイルのすぐ前に転生してきた文豪で
露伴は歴戦の文豪であるようだが、指環で武器を変えたから鍛え直しだという。ルールなどは教わってきているが、
まだまだ分からないことばかりだ。
「やるべきことは、敵を狩ることか」
「いざとなったらバリツで何とかして下さいって司書さんが」
「バリツに期待をしすぎだ」
司書さん、は外見十代前半の少女だ。英語が話せる。ドイルについてはバリツを期待しているようだがドイルの方は
完全に拒否をしている。バリツ、それは彼の書いた小説に出て来た格闘技の一種だ。
そのインパクトにより一人歩きをしているとのことである。
「虚子さん! 司書さんがもう書類仕事は嫌だって、脱走しようとしたところを介山さんが捕まえたから、急いで戻って!」
「……司書さん……」
「アイツは……賢治、二人の案内を頼む。浄化作業だ」
「分かったよ」
分館も本館と同じように大量の本がある。彼等が言うには隠していないと来客者には色々と面倒な空間ではあるらしい。
話し込んでいると館内を宮沢賢治が走ってきた。賢治もキャロルは知っている。積極的に話しに来てくれた文豪だ。介山は
中里介山のはずだ。名前は何とか覚えているがたまに一致しない。碧梧桐は困った顔をしていて虚子は怒っていた。
案内が交代して二人が急いで分館を出て行く。
「賑やかだ」
「来客が来たときは大人しくしていたけれど、僕はこの明るさが好きなんだ」
「浄化作業については……露風と露伴ならば知っているから、彼等と共に行けば良いんだね」
「終わったら、おやつが待ってるよ!」
ドイルが呟けば、賢治が笑顔で話す。潜書室へと案内された。
自分の持つ本が武器になる。キャロルの場合は銃で、ドイルの場合は鞭だ。鞭の方で戦闘慣れはしているが現在は刃であり、
巨大な刃……槍に刃をくっつけたような武器を振るう露伴が取り仕切り、浄化作業を進めていく。
本から出れば、空腹になっていた。
「……紅茶とスコーンと果物か」
「サクランボが出回っていたから、スコーンは堀君達の手作りだよ」
飲食室という所に賢治が案内をしてくれた。露風と露伴とキャロルとドイル、賢治で席に着く。
日本で淹れる紅茶だからと特務司書の少女が前置きして、淹れてくれたがなかなか美味しかった。日本と英国だと水が違うから
変わるところは変わるのだそうだ。
ドイルがテーブルの上に置いてあるスコーンとサクランボを目に留める。スコーンは丸形で菓子作りの美味い文豪が
作ったのだそうだ。
日本は果物はそこまで加工せずに食べるとも教わった。別名を水菓子と言うそうだ。
「図書館のことには慣れましたか?」
「こちらも慌ただしくて、すまないな」
「浄化には慣れてきたよ。紅茶は……慣れつつ、英国のものに合わせたい」
「伝えておこう。この状態で読み聞かせ会もやらないといけないが」
露風と露伴が聴く。紅茶はアッサムのミルクティーだった。甘さが丁度良い。
「司書さん、童話もまだ選んでないって話してたよ」
読み聞かせ会は子供達に向けてやっているものだそうだ。この図書館は研究施設が半分と図書館が半分で運営されている。
キャロルとドイルが転生したことにより、慌ただしさが増したが、碧梧桐が言っていたように図書館は何事も無く
運営しなければならない。
「童話を選ぶのは司書さん?」
「司書が当番だ。たまに他の文豪が書いたりもしている」
「それなら、僕が書いても良いかな。物語を紡ぎたいんだ」
キャロルが言う。
あの世界でのことを想い出す。きっかけが降ってきたのだ。実行してもいいだろうとなる。
「分かった。ならばこれが終われば司書に提案しよう。〆切りまでには書けるか?」
「やってみる」
「私の場合は」
「無理しないで良いよって。書きたくなくて主人公を殺そうとして殺しきれなかったんだし。って司書さんが話してた」
「あの人、言いたいことは分かりますが会話が飛びますよね」
露伴が念を押して聞いてきたのでキャロルは受けた。司書と話して細かいところ詰めなければならないが、やれるときにはなりたい。
ドイルの方は賢治が司書の言葉を話していた。ドイルはシャーロック・ホームズシリーズを書いていたが、
途中で書きたくなくなりあの有名なライエンバッハの滝で一回止めたが、続けてくれと手紙が来るに来て書くことになったのだ。
露風が苦笑をしながら紅茶を飲んでいる。
「書きたいものならば書いてもいいのか」
「勿論!」
「ならばやってみよう」
賢治が明るく肯定する。ドイルは話しながら、サクランボを口に含んだ。キャロルもサクランボを食べる。
甘い。紅茶も甘い。
スコーンも半分に割りクロテッドクリームを塗り食べたが、
「……これ、クロテッドクリームじゃ無いような」
「これはクロテッドクリームもどきだな。司書がそれっぽいものを食べるときに作る……良く分かったな」
「露伴さんなら分かるのに凄いよ!」
「私たちは気にしませんからね」
キャロルの言葉に露伴も食べて判断する。クロテッドクリームもどきは生クリームを瓶に入れて振りまくれば出来るものだが
本来のクロテッドクリームとは作り方が違う。
「……もどき……司書さん」
「食べればそう変わらないとは言え」
――もどきは嫌だから後で言っておこう。
ドイルもどうやら同意したらしい。
童話を書いて発表する許可も欲しいが、キャロルはこれについても、言っておこうとは想った。
【Fin】