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鬼屋敷戦国小話その2

梅酒@すずめ
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2019-06-19 01:54:31

収録:[和臣は高みに届かない][XDW-001と斜め四十五度][悪戯椿鬼と鬼副長の戦い]

 ※時系列的には反乱鎮圧後です。

・登場人物


【鬼屋敷歳三】
鬼の副長と呼ばれている36歳男性、戦い以外は案外疎い。



【天津和臣】
稀代の天才錬金術師(18歳)、背が低いし義理の弟は背が高い。



【XDW-001 ATLAS】
作られて1年の戦闘用アンドロイド、ロボは斜め四十五度で叩いても直らない。



【辰浪椿鬼】
人斬りが楽しすぎてバツイチになった23歳、悪戯が好き。

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【和臣は高みに届かない】
ここは柾良の国の倉庫、武器やら道具やら巻物やらが収められている。
そんな場所なのだが、今日はたまたまハシゴを誰かがもっていってしまい、中になかった。
天津和臣は高い所にある巻物を取ろうと背を伸ばすのだが……

「む、ぐっ……ん、んん?」
つま先立ちで背伸びをし、棚の縁に手を掴み腕を伸ばす――が、目標の巻物は存外高い位置にある。
彼の決して低すぎるとは言わずとも、18歳としては控えめな背丈では棚に貼り付いてもギリギリ掠める程度であった。

「これか?」
後ろから伸びてきた手がその巻物を取り、和臣へと手渡す。
そこにいたのは地軍の鬼の副長と呼ばれている、鬼屋敷歳三であった。

「おわ!? ……な、何だ地軍の副長かよ」
不意に現れた男に一瞬動揺する、というよりは背後にいた彼との背丈差に反射的に反応したと言うべきか。

視線を下に向け、下から見上げてきている男を見る。
「小さいと苦労するな、もっとしっかり飯を喰え若造」

「うっせえ食ってるよ! 余計なお世話だ!」
気にしている所をつつかれ、ついでに見下ろされて怒髪天とばかりに憤慨する。

「お前の弟はあんなに成長している、お前も十分に喰えばああなるはずだ」
鎧甲冑をまとった2mの巨体を思い出す。

「ジンのアレはガワだしそもそも義弟だっつーの!」
仁之助は和臣の血の繋がりのない機械の弟なのだが、よく行動を共にしてるだけあって並ぶと和臣の小ささがよく目立つのだった。

「機械……まさか、弟を作ったのか?」
歳三の目が驚愕に見開かれる。

「ちげーよ!!!」
倉庫に小さな男の大きな声が響くのであった。

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【XDW-001と斜め四十五度】
ここは柾良国の町の外。
今日は行軍訓練であり、みな重い背嚢を背負って歩いている所であった。
そんな時のことである、ふと空から雨粒が落ち始めた。
「雨か……雨中行軍の訓練も必要だろう、このまま続行する」
うめき声が盛れる中、地軍副長である鬼屋敷歳三がそう断言した。
文句など言えるはずもなく、通り雨らしくバケツを引っくり返したような雨の山中を行軍する。

しかし突如、甲高いビープ音が鳴り響く。二度、三度、けたたましく。
ビーッ、ビーッ、ビーッ……
「ウィザード鬼屋敷。本機に悪天候時の行動は想定されておりません。中止を進言します」
表情は伺えない、変えようもない。声色も平坦である。しかし、何処か困惑しているように思えるだろうか。

「故障か、メカ助」
雨の中、ビープ音の方へと歩いてきた男が少し考えるようにして呟く。

「肯定します。内部回路への過度な浸水は作戦行動に支障をきたします」
足取りが重い。人間ならば疲労を疑われるだろうが、この機械にそんなものはない。純粋な動作不良だ。
「人間で例えるならば、酒気を帯び歩いているようなものです」

「それなら一発気付けをしてやればいいということだな」
眼の前の機械に向けて、斜め四十五度の正確無比の手刀が振り下ろされた

「ウィザード、殴打及びそれに準ずる行動は更なる問題を」
ビーッビーッビーッ!
……ビープ音は、激しさを増していた。

「…………しまった!」


このあと、XDW-001は急いで整備班へと搬送された。

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【悪戯椿鬼と鬼副長の戦い】
練兵場で二人の男女が睨み合っていた。
片方は地軍の鬼の副長、鬼屋敷歳三、もう片方は地軍へと新たに配属された辰浪椿鬼である。
恐ろしい形相をした男からは覇気が溢れ、爛々と目を輝かせている女からは嬉々が盛れている。

「で、歳三どの。本当にいいのかな?」
互いの間合いの外側で、持たされた木刀をくるりと回す。軽く首を傾け、あでやかに笑う。
全て、誘いだ。わかりやすいぐらいの無防備さは相手から攻め込ませようという魂胆だろう。

対する男には隙はなく、斧槍を構えて女を睨む。
「小娘に心配されるほど老いてはない」
斧槍を揺らめかせ、女の攻め手を待っている。

「ふふ、御歳の事を侮ったように思えたのなら、謝ります。」
目が細まり、木刀を持った右腕が体の影に隠れる。
「ただの顔見世のつもりが、貴方のような兵と剣を交えられるなんて……」
歳三の誘いにも乗らず、隙を演出し続ける。
片一方は不動にて。片一方は誘いにて、攻め手ではなく受け手を取ろうとする。
「ちょっと、恵まれすぎじゃあないかなって。思いませんか?」

その問いかけが行われた直後に、前動作なく男の身体が前へ動いた。
まるで二人の間にあった距離が突然失われたかのように間合いが詰まり、斧槍が横薙ぎに振り抜かれた。

斧槍の影で、女はにやと口を歪ませる。
避けるには間合いがなく、受けるには体勢が悪い、流すか弾くか二つに一つ。
しかし、女が取ったのはどちらでもなかった。
鬼の副長が放った大薙ぎは、霧の中に棹を振ったような手ごたえの身を得て、練兵場に風を起こしたのである。

「誘っただけのことはある」
ク、と口の端が歪み、笑みの形となる。
振った直後の体制であるが、身体を強引に戻し、目線を走らせる。
左右、前方、後方、その全てに女の気配はない。
空振りで緩んだ体幹を構えなおし、全方向へと気配を探る。

ピンと張り詰めた空気の中、男は女の攻め手を待つ。
どうにも見当たらないが、仕合いの最中に消えるような野暮天を辰浪が送り込むはずもなし、必ず仕掛けがある。
それから数秒間をおいて、虚空より鳩尾目掛けて木刀の切っ先が放たれる。

歳三の腹部から伸びた黒い腕が伸び、木刀の切っ先を受け止めた。
直後に斧槍の内側へ、墨が滲むようにじわりと、木刀の切っ先から根元が現実へと浮かびあがる。
眼帯の片目が、持ち手を確かめようと滲みを追うも、その先には、女の細指はない。


小さく鯉口が切られる音が背後で鳴った。
大太刀が静かに、風も起こさず袈裟斬りに振るわれる。
四尺(約120cm)の錬鉄が、一欠けらの躊躇もなく鞘走った。

斬撃を受けた男の身体が数mほど吹き飛ばされる。
舞い上がった土煙が晴れると、男は黒く染まった腕から少し血を流し、愉快そうに恐ろしい笑みを浮かべていた。
「応用の効く良い手だな、悪戯娘」

床へ一寸程で止まった大太刀。踏み込みで砕けた床板。
凪の海ほどに波のない瞳が大男を見つめている。
深く息を吐き、椿姫は残心を解いた。
「鬼の副長殿には、参りませんね。
 結局、堪えが足りなかったのはあたしの方だったみたいで」

「そも、睨めっこがしたかったわけでなし」
斧槍を収めもせず、女へと近づいていく
「まさかバテたとは言うまい、次は搦め手ではなく打って来るがいい」
斬られかけたと言うのに、恐ろしい笑みを浮かべて女を誘った。

椿姫は四つ指ついて頭を下げる。
「滅相もございません。あたしの負けですよ。」



そして鬼屋敷歳三は、この負けを認めた女に度々不意に斬りかかられることになるようになるのであった。

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