@toasdm
ディスカウントスーパーの黄色いカゴに、雨彦は次々と手に取ったものを入れていく。まずは六缶がセットになった少々お高いビールがひとセットと、普通のビールがひとセット、瓶に詰められた高級感漂う黒ビールは二本掴んでカゴに入れ、にまりと笑って彼女に見せた。
「うわ、贅沢ー……」
「パーティーならこのくらい派手にやらねぇと、な」
ウィンクをする雨彦が持つカゴには、相当な重さの飲み物が入っているはずなのだが、雨彦の腕はそれをもろともせず、どちらかというと軽々と持っているようにすら見えた。思わずちらりと目線をやると、ぐっと力の込められた腕の筋肉が盛り上がり、同時に彼女も盛り上がった。視線が熱いな、と苦笑して雨彦は、わざと筋肉を見せ付けるように袖を捲くって力を入れて、うわぁぁぁ、と涎でも垂らしそうな勢いの彼女は目線のやり場に困りながらも、ちゃっかりしっかり雨彦の筋肉をじっと見ていた。
「さて、割りモンは……」
こうも暑いんじゃかなわねぇな、と風呂上がりにビールを飲んでいた雨彦と違って、彼女はどちらかといえばビールはあまり得意ではなかった。最近雨彦に付き合ってなんとか飲めるようにはなってきたものの、まだまだビールの味が苦手な彼女を、お子様舌だな、と笑った雨彦は、ひとつパーティーでもしてみるかい、と彼女をディスカウントスーパーへと連れてきたのだ。
「ビールを割って飲む、ってあんまり知らないんですけど」
「レッドアイ、聞いたことくらいあるだろう?」
「あ……」
トマトジュースを手に取った雨彦はそれをカゴに入れる。
「ビールとトマトジュースのカクテルだな。結構飲みやすいんだぜ」
どちらも癖が強い飲み物という印象があるが、カクテルにすると飲みやすくなるのかと感心する彼女の手を取って歩きながら、雨彦は炭酸飲料コーナーへと向かう。
「ジンジャーエールで割ればシャンディーガフ、サイダーで割ればパナシェさ」
「な、なるほど……」
「こいつらはノンアルコールで割るから飲みやすいが」
そういや、と思い出したように踵を返して、雨彦は再び酒のコーナーへと戻る。先ほどビールを漁った冷蔵庫の棚の向こう、ワインの置いてある棚で白ワインとシャンパンを手にとって、雨彦は彼女に見せて言った。
「白ワインで割ればビアスプリッツァー、黒ビールをシャンパンで割ればブラックベルベットだな」
くるりと後ろの棚を向き、リキュールコーナーでカシスのリキュールをカゴへ入れる。
「カシスで割ればカシスビアになるぜ」
「ビアカクテルって結構あるんですね……」
「そうだな。アルコールで割るカクテルは口当たりがよくても強いからな、気をつけてくれよ?」
何にですか、と意味ありげな雨彦の視線にたじろぐ彼女の手をぎゅっと握って、雨彦は目を閉じて彼女の耳元でひそひそと囁いた。
「強い酒を飲ませてお前さんによからぬことをしようとする輩に気をつけろってことさ」
そんな人いませんよ、と耳から摂取した色香にまごつく彼女をくすくすと笑って、そうだな、と雨彦はその大きな手で彼女の頭をぽんぽんと軽く叩く。
「まずは俺がさせないよ」
「そ、そういう意味じゃなく」
「お前さんにそういうことをしてもいいのは俺だけだからな」
なんで急にそんな独占欲見せ付けてくるの、と真っ赤になった彼女と手を取って、雨彦は上機嫌で会計を済ませる。風呂上がりのビールはとっくに抜けているはずなのに、雨彦はひどく甘えたように彼女の指を絡め取ってぎゅっと握る。
鼻歌など歌いながら歩く帰路、独占欲は隠されないまま指に宿されて、彼女を甘く雨彦に縛り付けていた。