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[都築P♀]フォルテッシモの雨音

全体公開 1 1523文字
2019-07-08 18:03:17

「ドキドキしすぎて、どうにかなってしまいそうだ。隠しておいてくれるかい?」

雨に濡れた都築さんとPさんのドキドキ彼シャツなお話です。

Posted by @toasdm

 晴れ間を狙って出かけた二人を、容赦なく夕立が襲った。このままでは風邪を引いてしまうから、と急遽招かれた圭の部屋はよく言えばシンプル、悪く言えば殺風景だった。存在感のあるピアノが据えられた、必要最低限のものだけをとりあえず置いた部屋には当然、女性である彼女の為の着替えなどあるわけもなく、先にシャワーを浴びておいで、と髪の毛を拭きながらクローゼットを漁った圭は仕方なく、普段自分が着ているシャツを彼女のシャワーの音がする脱衣所に置くより他になかったのだ。

「あの……都築さん、これ」
「お、っと……
 圭の呼吸と視線を一瞬で奪ったのは、自分のシャツだけを身につけた濡れ髪の彼女のしなやかな肢体だった。いくら華奢とはいえ男性であるはずの圭のシャツは、しかし彼女の豊満な肉体を包むには窮屈な部分があったようで、包み隠さず言うと胸の辺りを包み隠すことが難しかったようだ。ボタンが飛んでしまいそうで、と目線を逸らしながら立ち尽くす彼女の胸元は、滴る水滴がつぅ、と伝っていく谷間の影をシャツの白が縁取っている。むちむちですみません、と真っ赤になった彼女に近付いて、圭は髪の毛を拭いていたバスタオルを自分の肩にかけてそっと彼女を抱きしめた。
「男の人と女の人では、体のつくりも違うから、服も、ね……
 優しい言葉を優しい声で紡いで、圭はふぅとため息をついて彼女から離れる。刺激の強い上半身から目線を落として逸らしたものの、今度はショート丈のシャツワンピースのようになった裾から覗く太ももの眩しさに、圭はくらくらとしはじめた。
「あぅ……
 恥ずかしいです、とその裾をぎゅっと掴んで引っ張る彼女そのものから目線を逸らして、圭はそれでも何度か、ちらちらと眩しさを覗き見る。
「丈はちょうどいいけれど……ふぅ。ちょっと、ドキドキしてしまうよ」
 その「ちょうどいい」はどういう基準でちょうどいいのか、彼女は深堀りしようとして深く考えるのをやめた。胸に手を当てて天を仰いでは、たまにちらりと目線だけが注がれる太ももが、一瞬の熱で灼かれるように熱くなる気がして、彼女は居住まいの正し方がよくわからなくなっていく。
「え、と……
 あんまり、見られると、と口篭る彼女のその恥ずかしがる様子が、圭を煽って仕方ないというのに、彼女は無意識にそういう行動でもじもじと、圭をじりじり煽っていく。参ってしまうよ、と苦笑して圭はもう一度、もう一歩、彼女に近付いた。
「あまり君をそういう目で見たくないのだけれど……ふふふ。僕も一応、男の人だから。ね?」
「うぁぁぁ~……
 ますます恥ずかしくなる彼女を、もういっそ開き直ってしまおうか、とじっくり、上から下まで見つめてから、圭は胸を押さえていた手で目を覆った。
「ああ、やっぱり、駄目、だよ」
 片手で目を覆って天を仰いで、それだけでは足りなかったのか今度は両手で顔を覆って圭は俯いてしまった。あの、とうろたえる彼女の前で、圭はとうとうしゃがみこんで小さくなってしまう。

「ドキドキしすぎて、どうにかなってしまいそうだ。隠しておいてくれるかい?」

 これを使って、と片手でするりと自分の肩にかけていたバスタオルを外して彼女に投げ寄越した圭は、再び両手で顔を覆ってぷるぷると震える。言われるままに湿気たバスタオルを膝に乗せてソファに腰掛ける彼女の頬は真っ赤だったが、それよりも圭の耳は真っ赤になっている。

 心臓の音がうるさいね、とらしいことを言う圭の、両手の下に隠された顔がどうなっているのかを、見たいような見たくないような。そんな複雑な気持ちのまま、彼女は何もない部屋でフォルテッシモの雨音をしばらく聞いていた。


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