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[類P♀]Actions speak louder than words

全体公開 1772文字
2019-08-10 13:49:51

「俺の気持ち、伝わった?」

暑い夏の日に木陰でアイス食べるまいたるとPさんのお話です。

Posted by @toasdm

 わびさび、という日本語が英語に直訳できないことは知っていたが、まさかそんなものまでなかったのか、と木陰で涼んでアイスバーをかじりながら彼女は隣の類を見る。実はそうなんだよね、と一足お先に食べ終えた類は少し困ったような顔で笑った。
「絆、って日本語も、直訳すると接着剤って意味のbondって表現になっちゃうんだ」
 味気ないよね、とここに来るまではアイスが二本入っていたコンビニ袋に食べ終えたゴミを入れ、空を見上げる。色素の薄い明るい類の前髪はところどころ陽光に透けて、木漏れ日が、寸暇を金色に染めた。
「sunbeam、って言葉もあるけど、それだとこのsoftな雰囲気は伝わらないよね」
「サンビーム、だとただの日差しっぽいですね」
 ソーダ味のアイスバーの残り半分をかじって、彼女も類に倣って頭上の木の葉を見上げた。きらきらと葉陰から差し込む柔らかな光が、うんざりするような夏の日差しを木漏れ日という柔らかな存在になって二人に降り注いだ。

 木漏れ日って、英語に直訳できないんだ。

 アイスの袋を開けてバーの部分を差し出しながら、類は上を見上げてそう言った。そうなんですか、と流した彼女は、人気のない公園のベンチで同じように上を見上げて、アイスを一口かじった。
 他の国の言葉に置き換えるのが難しかったり、直訳できなかったり、情緒がなくなってしまったりすることはよくあるのだと類は言う。だからidiomを増やして、伝えたい気持ちを伝える手段を増やすんだ、と木漏れ日のように笑う類は、恐らく、言語も気持ちを伝えることも好きなのだろう。
「歌もdanceも、そういった言葉の垣根を超えて、directに気持ちを伝えられるから俺は好きなんだ」
……類さんらしいですね」
 くすりと笑って、彼女は最後の一口のアイスバーをかじった。口の中は爽やかなソーダ味に満たされて、ゴミはこっちへcome in、と袋を広げた類の笑顔のようだとつられ笑顔で彼女は再び木漏れ日を見上げた。
「気持ちいいなぁ……
 じりじりと肌を灼く日差しの痛みは、グリーンのカーテンが程よく柔らかく加工してくれている。目を細め、手のひらを空へ向けて伸ばして、彼女は深呼吸をした。
「ねぇ、プロデューサーちゃん」
 ゴミをまとめた袋をベンチの脇へといったんどけて、類は彼女の心地良さげな横顔に優しく語りかける。
「Actions speak louder than words」
「?!」
 優しく伸びた手が、彼女の肩をそっと抱き寄せ、トン、と類の胸に頭が納まる。トク、トクと規則正しい胸のリズムは少し速いようで、それが伝播したように彼女の胸もシンクロする。
「これは、英語にはあるけど日本語にはない言葉だよ」
 熱された空気を伝わって左耳から響くいつもの類の声と、密着した右耳から伝わってくる胸板越しのいつもの類より少し低く感じる声が、彼女の頭の中で混ざり合ってときめきが渦を巻く。
「どんなWordよりも、Actionの方が意味があるって意味だよ」
 だからね、とさらに強く抱き寄せられて、ますます真っ赤になった彼女の柔らかな髪にそっと頬をすり寄せて、類は腕の中の彼女に行動で示す。
「今、俺がプロデューサーちゃんに抱いてる気持ち、WordじゃなくてActionで、わかってほしいな」
 伝わってきた感情は、愛しさ、ドキドキ。溢れ出す気持ちのやり場と伝える手段に困って思わず抱きしめた類の心は、胸にぴったりと押し付けられた耳からも、抱きしめられた体からも、全て余すところなく伝わった。
「non-verbal communicationって、気持ちいいでしょ?」
 木漏れ日よりも心地良い温もりに満たされて、彼女は小さく頷いた。
 いくら人気がないからといってこれ以上触れ合うのは落ち着かない、と一瞬だけ類にぎゅっと抱きついた彼女が離れて、名残惜しさが二人の間で申し訳なさそうに漂う。
「俺の気持ち、伝わった?」
「はい」
 そっか、と立ち上がり手を差し伸べた類に微笑み返して、彼女も手を取り立ち上がる。英語に直訳できない情緒的な木漏れ日の中から容赦ないサンビームへと足を踏み出して、二人は並び歩く。
 言葉にできない感情は今、二人の間で絡み合う指がそれを伝え合っていた。


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