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ペロスの宅急便

全体公開 15559文字
2019-08-18 00:09:00

#RO夏の創作交流企画2019 にて作成した、♂ルーンナイト×♀アークビショップのお話です。

幼なじみとの再会は、人生をも変えるハイスピード・エスケープアクションに!

文:自爆王( @Marine_Sphere )
絵:あやの@まことさん ( @ayano_makoto )

シュバルツバルト共和国首都・ジュノー

 一人の女アークビショップが、追っ手から必死になって逃走を続けている。単純に彼女の金品が強盗に狙われているのであればそれはそれで充分危険だが、彼女が持っている「物」こそが、追っ手にとって重要なものだった。
 術式詠唱のための時間を稼ぐことも難しかったが、辛うじて《ワープポータル》の詠唱に成功、彼女はジュノーから姿を消す。忽然と消えたアークビショップを見届けるのは、一人のギロチンクロスだった。ただちに彼女は冷静になって、何者と通信をする。
「《ワープポータル》、か。これを見越してあの男はこちらレーツェル。追っ手の手配を頼む。法的に抹殺出来るなら理想だったが、今となってはそれも難しい。不本意だが、物理的に対象を抹消しにかかる。リベリオン部隊の手配も頼む」
『リベリオン部隊もだと? そこまで大がかりなことをする必要があるのか』
「お前は私の言うことに従っていれば良い。あれがレッケンベル以外の手に渡ったら、レッケンベルはおろかシュバルツバルト現政権にも影響が出る。そうなれば我々は死ぬぞ。私も特殊部隊と共にプロンテラへ向かう。銃火器の使用許可はそちらで取ってくれ。以上だ」
 苦虫を噛み潰したような顔をして、レーツェルと自称した女ギロチンクロスは連絡員を待つ。あの封筒は、レゲンシュルムの存続は愚か、レッケンベルにも影響が出る。

ルーンミッドガッツ王国首都・プロンテラ

「いつも済まないね。軍を辞めたのに」
「こういう生き方しか出来ない……ってワケでもないが、コイツを食わせるためにも仕方ないですよ」
 グリーンペロスを従えたルーンナイトが、市民から報酬を受け取る。退役した後も軍部に志願して、今まで戦場を共に駆けたペロスを引き取ってからは、彼はこうやって運び屋をして生計を立てている。
「じゃあ、またあんたに頼むことがあったらよろしくね。カイン元少尉さん」
「俺はもう軍人じゃないですから、少尉は良いですよ。それでは」
 カインと呼ばれたルーンナイトは、ペロスにまたがってその場を後にした。ルーンミッドガッツ王国騎士団は士官学校を出て将来的に軍部に籍を置く上級士官と、徴兵により騎士となった者達との二層に分かれる。カインは後者にあたり、三十を目前にして任期満了に伴う退役を果たしている。
 職業軍人でも士官学校や軍学校という形で、世間一般の冒険者と同じ冒険者の教育も受けるため、退役した後はフリーランスの冒険家と同じ立場になる。敢えて言うなら、元軍人という称号が付くくらいだ。今は戦争も起きていない平和な世の中だが、ミッドガッツ王国領にはオークやコボルト、ゴブリンといった亜人種も存在しており、滅多にないことだが諍いも発生する。そういう亜人種との戦闘は聖堂騎士団が主に担当するため、騎士団は国内の治安維持つまり警察としての動きに重きを置いている。
 今日の仕事も終え、カインは自宅へ戻ろうとしたとき、彼の聡い耳がある異変を聞きつける。女の荒い息づかいのようにも聞こえるが、これは?
「フリューゲル、家に帰るのはもう少し後になる」
「グォ?」
 愛竜フリューゲルの頭を撫でてから、カインは手綱を握る。直感を信じて、カインはフリューゲルを走らせた。

 ヒールスタイルに整え、長く美しい赤髪をしたアークビショップの女性が、息も絶え絶えに逃走を続けていた。その手に一封の封筒が大事に抱えられており、重大そうな雰囲気を醸し出している。堂々と町中を走るようにして人目に付くようにしていたが、それでも追っ手に姿を捉えられた。
 絶体絶命か、とアークビショップが思ったその時、彼女の視界に一騎のルーンナイトが写る。
「どんな事情があったのかは分からないが、堂々と物騒な物持って、こんな町中で人を追いかけるって、どういう了見だよ?」
っ」
 アークビショップを追っていたギロチンクロスの女は、ルーンナイトを見るなり聞こえないような小さい舌打ちをしながらその場を後にした。白昼堂々、かつプロンテラの市街地のど真ん中で事を起こされては、元軍人として敵わない。
「フリューゲル、深追いはよせ」
グォン、グォ」
 「マスターの命令とあらば」という態で不服そうにしていながらも、フリューゲルはギロチンクロスの追跡を諦めた。
 フリューゲルを宥めてから、ルーンナイトはアークビショップの顔を見たとき、彼の中での記憶が蘇る。
やっぱりだ。君は、セラなのか?」
「え?」
 アークビショップとルーンナイトの視線が合った時、それぞれの記憶が蘇る。



プロンテラ東の森 カインの家

 カインがプロンテラの外れに住まいを構えていたのは、単純にフリューゲルのストレスにならないよう広い場所を確保したかったのが一番の理由だった。もう一つの理由は、カイン自身込み入った場所をあまり好まないというのもある。
 表に居るフリューゲルが火を吹き、窯に火をくべてくれた。ちょうど昼下がりだったので、カインは昼食にしようとしていたのだがこうなっては仕方ない。パンの焼ける匂いがセラの鼻をくすぐる。
 その後、カインは焼き上がったパンをテーブルに置くが、一皿余分に置かれていた。その事に首をかしげたセラに対してカインは、「腹ごなしでもして落ち着くと良い」とだけ付け加えた。ほどよい焼き味で焼かれたパンは、彼女の食欲をそそる。
いただきます」

「そういえば、セラは全然変わってないな。元気そうで何よりだよ」
「うん。カイン、大人になっても全然変わんないね」
「軍に居る時は、毎月送ってくれるセラからの手紙を楽しみにしてた。おかげで茶化されたりもしたけどな」
「あはは。私も、貧民街の子供達にからかわれたりしちゃったよ」
 これが普段ならば懐かしい昔話に花を咲かせるところだったが、セラと再会した状況が状況だけに、カインも真剣になって彼女の話に耳を傾ける。
ところで、なんでセラは白昼堂々追われるような真似をしてたんだ? あのギロチンクロスの武装振りからして、洒落にならないことに巻き込まれたんじゃないのか?」
カインなら信じてくれるかな? 私、手紙でも書いたけど、今はリヒタルゼン貧民街に派遣されているのは知ってるよね?」
「ああ。そこで何かあったのか? っと、紅茶の湯が入った」
 フリューゲルが起こした火で紅茶を煎れ、カインはセラにも紅茶を差し出してから、カインは封筒を眺める。厳重に封がされていたそれは、一度開けられていることが分かる。だが、それだけの書類をセラが持っているのも不可解と言えた。
 そもそも、セラは誰かに追いかけられるような事をしでかすような子ではなかったのを、カインは知っている。今もそうだと信じていた。
「この封のしかたただ事じゃないのは分かる。一体何があったんだ?」
「レゲンシュルムに潜入していた人を助けたんだけど、その人からこの封書を託されたの。レッケンベルの武器密輸の物証とか、人身売買の記録とか、かなり深いところまで入り込んだ書類だったわ」
 本当ならカインとの再会を喜びたかったセラだが、浮かれていられる状況にない事も理解していた。だから、その想いを胸にしまい、カインに封書を見せる。
「託されたか。人の生命を容易く弄ぶ連中の事だ、君にこれを託した人は
 そこまで言ってから、カインは目を閉じて十字を切る。自分に信仰心があるとは思っていないが、軍人として幾多の生命を殺めた過去を持つだけに、カインはセンチメンタルにもなりたくなる。
「ところで、届け先はどこだ? 場合によってはすぐ出発する事になる」
「届ける先はワイエルストラウス元シュバルツバルト大統領閣下の《秘密の羽》よ。ノーグハルト地方にある小屋まで届けてくれって」
「《秘密の羽》だと!?」
 カインは現役時代、軍属でありながら冒険者としてのライセンスも取得していたので、レッケンベルと対立している《秘密の羽》の事は知っていた。元々シュバルツバルトはレッケンベルとの癒着が指摘されていながらも、シュバルツバルト国内での解決が難しいとも言われているのが、《秘密の羽》設立の背景にある。
 だが、レッケンベルのスパイの手によって《秘密の羽》は瓦解、今は消息が分からないという。それでも届け先が《秘密の羽》となっている以上は、彼らはまだ活動しているということだ。だから、カインは驚きの声を上げた。
「あの組織、まだ息があったのか。それは嬉しいことだが
 突如、爆音が鳴り響く。プロンテラ東という場所で爆音が起きるとすれば、誰かが攻撃魔法を暴発させたか、スキルの試し撃ちをしたのか、あるいは
「どうやら、もうセラの追っ手が来たようだな! 伏せろ!」
「ひゃあっ!?」
 セラを突き飛ばし、自らが盾になる形でカインは爆風から彼女を守る。常在戦場という心がけは特にしているつもりはないが、「備えあれば憂いなし」という天津の言葉に倣い、常備していたベルカナルーンストーンを砕き《ミレニアムシールド》を展開することで無傷にとどめる。
「無事、か?」
「う、うん
 突然自分を庇った時に、間近に迫ったカインと視線が合い、セラの胸が高鳴った。しかし、すぐさま二発目の爆発が起き、セラの意識は現実に引き戻される。
「それ以上は良い。フリューゲル、今行く!」
「グォン!」
「さ、セラも早く!」
「あっうん!」
 セラの手を取って、カインはフリューゲルを繋いでいる玄関まで走る。ふとカインは窓の外に目を向けると、《ドラゴンテイル》ミサイルの発射態勢が整ったリベリオンが数人見えた。時間はない。
「詳しい話は逃げながら聞く。まずはアルデバランに行くぞ!」
「アルデバランってきゃあっ!?」
 セラをお姫様抱っこの形で担ぎ上げ、無理矢理フリューゲルに相乗りさせてから、カインはフリューゲルの手綱を握り全速力で小屋から逃げ出した。直後、《ドラゴンテイル》ミサイルがカインの小屋に直撃し、軍時代に貯めた金で建てた小屋が見るも無惨に爆発四散した。
 カインは大慌てでカプラ転送サービスをアルデバランまで頼み、カインとセラは追っ手の手が届く直前にアルデバランへと転移する。あまりにも物々しい格好をした男達がプロンテラの市街地に取り残され、却って目立つ結果となってしまった。


国境都市アルデバラン 酒場「ソドムとゴモラ」

「んで、お前は家を爆破されたあげく、セラちゃんと逃避行をするハメになった訳か。すぐここを出るにしても、休憩くらいはしていけや」
「恩に着る、アベル兄さん」
「つーか、ミサイルで家ごと爆破とか、相手もなりふり構ってねえな。上手く行けばレッケンベルに損害賠償請求できるんじゃね? 一体お前ら、何やらかしたんだよ」
 あまりにも事が大きくなっていることに、アベルはあきれ顔で二人を見る。かつての二人を知っているアベルだからこそ、呆れて物も言えなくなった。
「兄さん? もしかして、アベル君なの?」
 セラは自分の目の前に居る、カインとうり二つのバーテンダーの青年と、隣に居るカインの顔を見比べる。
「セラちゃんも随分美人になったもんだな。俺はここでバーのマスターをしてるんだよ。まー、俺もジェネリックとして腕を振るってたんだが、ウェルスの科学技術に惹かれてな。そっち方面にも多少は精通してるそう、セラちゃんに付けられた発信器の存在を見抜く程度にはな」
「えっ!?」
「胸元のロザリオの裏側。そこなら自分で外せるだろ?」
 アベルに指摘され、法衣の胸元に飾られた大きなロザリオの裏側に仕掛けられた発信器を、セラは慌てて取り外す。よりにもよってそんなところに取り付けられたことで、カインはセラの豊満な胸が生み出す谷間にどぎまぎしていたのは本人のみぞ知る。
 セラが取り外した発信器を受け取ったアベルは、それがただの量販品と知ったときに悪巧みを企てる。
(ククク、これで遊ばせて貰おう、我が弟の生命のためにもな)
「あ、あの?」
 一人悪い笑みを浮かべるアベルを不気味に思ったか、セラが彼に声をかけると、アベルはセラに「これで奴らに対して悪さが出来る」と返した。
「それでカイン、セラちゃんとは何処で出会ったんだ?」
「プロンテラの町中。ギロチンクロスに追われていたセラを俺が助けてから、連中に狙われてここまで逃げてきたって事」
 ギロチンクロス、と言われてアベルは首をかしげる。レゲンシュルム研究所の連中ならば確かに傭兵を雇っていても不思議はないが、それがプロンテラまで追いかけてくるとなると不自然だ。余程センシティブなものをセラが持っているのだろう、と推測が立つ。
「セラちゃんが大事に抱えてる封書、それが訳ありのようだな」
「かなりの訳あり物件だった。セラ、兄さんに話せることは話しても良いか?」
アベル君、口は堅いよね?」
 命からがら逃げてきたセラとしては、この兄弟に頼ることも少し不安が残っていた。それでも、信じることが出来るのも事実だった。だから、セラは封書の内容を一部、筆談でアベルに伝えることにした。
 セラから打ち明けられた内容を聞いて、アベルは「なるほどな」と返すだけだった。
「ここからノーグハルトか相当遠いな。発信器は俺が弄っておくから、無事に届けられることを祈っておく」
「恩に着る、兄さん」
「ま、こんな美人つーか、セラちゃんを引っかけたお前との縁だし、暇つぶしには面白いから俺も手伝ってやるよ」
 人の悪い笑みを浮かべながら、アベルはグラスを磨く。昔からこの兄はこうだった、悪巧みをするときは全力で行う。だが、その全てはカインの為だと言うことを、カインは知っている。
 何よりも、アベル個人としては、同じ科学を扱うジェネリックの矜持が、レゲンシュルムを許せなかった。場末の酒場を経営してはいるが、生命倫理は人並みにある自覚がある。
「さ、まずはアルデバランから出るところからだな。夜に出た方が良いだろう、その方が夜闇に紛れて多少は距離を稼げる」
「元からそのつもりだ。セラ、君は夜に強いか?」
「え? 夜は
 夜と言われて違う方向に捉えてしまい、セラは顔を赤くするがすぐに立ち直る。修道女故に夜の見回りをすることもあったので、セラは「多少は耐えられるわ」と返した。彼女の返答を受けて、カインは夜中に出る事を決心する。場合によっては、仮眠を取りながらでも逃げるしかない。

 アベルに酒場の一室を貸して貰って仮眠を取ってから、カインとセラはアルデバランを発った。国境検閲所に向かう際、アベルが時計塔へ向かったのをカインは見届けつつ、アルデバランの門をくぐる。
「ノーグハルトか。ところでセラ、フィゲル行きの《ワープポータル》なんて都合良く持ってないよな? それがあれば、フィゲル経由でノーグハルトに行く方が早い」
「フィゲルなら持ってるわよ。いつでも実家に帰れるからね」
(フィゲルか。思えば、俺がルーンナイトになった動機はセラのためだった
 カインが「思い出してきた」事がセラの記憶と一致するかはさておき、セラは《ワープポータル》の転移先に指定した地点を確認する。幸い、フィゲルは登録されていた。


フィゲル

 シュバルツバルトでも外れにあるフィゲルは、昔から戦火と無縁の地だった。今は夜中と言うことで寝静まっているが、日中は農業で生計を立てている農村として知られる。
 中央広場に転移したカインとセラは、そのままフィゲルを後にする。二十年ぶりの故郷があの時と変わらぬ姿である事だけ確認出来れば、今はそれで良かった。
 野生のポリンの親子が寝静まっている中、カインはフリューゲルの手綱を握り夜闇の街道を走る。フィゲルから南西に行けば、ノーグハルトはすぐそこに控えている。
 追っ手がいつやってくるか分からない状況下という事で、セラもフリューゲルに相乗りしているが、カインからすれば幼なじみの成長にいくらかドギマギしていた。それは、セラも同じだった。
(カイン、ホントに大きくなったのね
 カインの前でフリューゲルにまたがっているセラは、彼の大きくなった腕を眺める。フィゲルに居た時はセラが姉のように振る舞っていたが、今もその通りに出来るだろうか?
「ねえカイン、覚えてる? 昔アビスレイクまで私達がピクニックに行ったときのこと」
セラを見て、それを思い出したんだよ。ノーパスの群れに襲われて、父さんが蹴散らしてくれなかったら俺達は今頃アビスレイクに沈んでた。だから、俺は竜に負けないためにもルーンナイトになった。本当はソーサラーになりたかったが、魔法の才能が皆無って言われてな」
 若気の至りという言葉が天津にあるが、今カインの頭にはかつての記憶が蘇り、よぎる。
「あの時のこと、覚えててくれてたんだね」
っ、そりゃ、そう、だ……
 都合が悪そうに、カインは顔を赤くしてセラから目を背ける。思えば、彼女が結っているブルーリボンも、父の仕事の都合でフィゲルを起つ前に誕生日プレゼントとして送った物だった。それを今でも大事にしているのだろうか? あるいは、同デザインの別物か
 カインが照れているのが分かったからか、緊迫した状況下でもセラから笑みが零れた。
だ、だが! まだ仕事は終わっていない。それに俺も何時までもうかうかしていられないようだ。セラ、しっかり掴まっていろ。飛ばすぞ」
「飛ばすってきゃあっ!?」
 フリューゲルの手綱を強く握り、カインは彼と共にフィゲル街道を疾走するのと同時に、この地方に相応しくない「音」が響く。レッケンベルはシュバルツバルト全域に網を張っていたのか、セラの追っ手がフィゲルにまで迫っていた。
 暗がりで追っ手の詳細までは分からないが、フリューゲルがペロスとしてひいては竜としての知識でカインに警戒の声を上げる。数にして、三つ。カインも、音で把握できた。
「数からすれば、振り切れないほどではない。フリューゲル、軍時代を思い出すな」
「グォン」
 追っ手に追われているという状況下でも余裕を崩さないフリューゲルは、「うむ」とカインに答えてから鼻息を荒げ足を速める。そうでなければ、追っ手に追いつかれる。
 夜闇に紛れているせいで姿こそ見えないが、カインは耳で追っ手の小隊が魔道ギアと判断した。魔道ギア特有の機動音は、軍時代にも聞き覚えがある。
(見たところ、追跡してきている魔道ギアは一個小隊クラスある程度纏めて、《イグニッションブレイク》で纏めて行けるか? あるいは
 片手でフリューゲルの手綱を握りつつ、カインは天秤宮が刻まれたオーブが填められた大剣を抜いた。こうなってしまえば、戦闘を回避するのは難しい。
「できる限り殺生はしないつもりだ。だが」
うん」
 セラも覚悟は決まっていた。もとより、リヒタルゼン貧民街に派遣されていた彼女は、生命の重みを知っていた。だから、今回レッケンベルに追われる理由となった資料を手にしてから、なんとしてでもこれを届けなければならないとも思っていた。
 カインも、思いは同じだった。レゲンシュルム、ひいてはレッケンベルの悪逆非道を世に知らしめない限り、ミッドガッツとシュバルツバルトの同盟もいつかほころびが出来る。
 レッケンベルの犠牲者は、これ以上許してはならない。ミッドガッツとシュバルツバルトの両方を知っているカインは、軽い使命感を背負っていた。
(このままでは追いつかれるか?)
 街道から少し外れた道に向かいながら、カインは魔道ギア隊を誘導する。魔道ギアに搭載された《ステルスフィールド》の稼働時間には制限がある。それ以上に、姿を隠す必要が無いと判断したのか、魔道ギア隊は一斉に姿を現した。
『そこのルーンナイト、止まれ! 止まらなければ撃つぞ!』
「レッケンベルの犬が何をほざく!」
 魔道ギア隊としてはカインとセラを見逃すつもりは到底無いことはわかりきっていたから、腕部を動かし《バルカンアーム》を連射しつつ距離を詰めてくる。フリューゲルの脚力でも全てを回避するのは難しいと判断して、セラも《ニューマ》で敵の弾幕を抑えつつ逃走経路を確保していく。
(少しでも、カインの助けにならなきゃ
 《ニューマ》や《速度増加》でカイン達の支援をしながら、セラの心には強い意志があった。形は違えど、セラもカインを守りたかった。ふたつ年上だからというのもあったかも知れないが、二十年前の事件を契機に、セラも神官の道を歩むことを決心した。だから、こうやってカインと再会出来たことは天の思し召しなのかも知れない。
 何より、時々顔をつきあわせては、彼への純情が強くなっていくのが分かっていた。こんな事でもなければ、こっちからプロポーズに出向くくらいだったのに。
『ちっ、相手も手練れと見る! 各機、奴を崖に追い詰めろ!』
 魔道ギア隊の動きを見ていると、カインは自分たちを崖に追い込もうとしているのが分かった。だが、カインはフィゲル街道を自分の庭のように歩いている。
 だからこそ、カインは相手の策に乗ることにした。乗った上で、勝算はある。追っ手がホバー移動で高速接近する魔道ギア隊というのも、ある意味で都合が良かった。
「カイン、このままだと崖があるわよ! それに何をつぶやいてるの!?」
「心配ない!」
 カインを追いかけてきた魔道ギアは合計して三機。カイン達は崖淵に追い込まれる形を取られたが、これこそがカインの策の内だった。
『さあ観念しろ! その資料を渡せば生命までは取らない!』
『その資料を公開してみろ、罪もない研究所員まで路頭に迷うことになるぞ!』
「貴様らの所業を自分で振り返ってから、そんな台詞は吐くんだな!」
 言葉では気丈に返しつつも、カイン達は着実に追い込まれていた。だが、ここでカインは秘策を発動させるに十分な時間を稼いだと確信する。
「セラ、俺を信じてくれ」
うん」
 不安そうに、セラはカインにしがみつく。そんな彼女の不安を拭うように、カインはセラの頭を撫でてから、ペオースルーンストーンの術式を唱える。
「跳ぶぞ、フリューゲル!」
「グォオオン!」
『何をするつもりだ!』
《ストームブラスト》ッ!!」
 BLAAAAAM!! 夜中のフィゲル街道で大爆発が起きる。《ストームブラスト》の爆風に乗じる形で、更にカインは《イグニッションブレイク》による爆炎を巻き上げ、フリューゲルともどもカイン達は宙に舞った。二つの爆発に乗じた大ジャンプで崖を一気に飛び越し、南東に広がる海岸部まで飛翔する。
「も、もう! 何するのよカイン!」
 突然の大飛翔に心臓を高鳴らせながら、セラはカインにしがみつきつつにらみつける。
「驚かせてすまん、セラ。俺は飛べないコイツに、フリューゲルと名付けたがそれは、俺と一緒ならコイツは跳ぶことが出来る。そう確信したからなんだ。そろそろ着陸するから、目を閉じていろ」
 フリューゲルの高度が落ちていくのを感じながら、カインは軍制のゴーグルをかけて目に砂が入るのを防ぐ。彼の動きを見て、セラは砂浜に着陸するのだと理解できたから、目を閉じた。
 目を閉じていたので音でしか判断できなかったが、カインが飛び立った崖が崩れ、魔道ギアが落下したことで大爆発が起きたことは容易に想像できた。だから、セラは魔道ギア隊に祈りを捧げる。
(どうか、来世までに悔い改めてください
 《ストームブラスト》で飛翔したフリューゲルの巨体を受け止めるのは、海岸の砂浜だった。莫大な砂嵐を巻き上げながらも、砂塵から抜け出る形でカイン達はノーグハルトへとコマを進める。


ノーグハルト地方、アビスレイク

 古くから竜の巣窟とされるアビスレイクも、夜となれば静まっている。ここにも、レッケンベルの魔の手が迫っていた。
 魔道ギア隊とは別動隊だったのだろう、とカインにはすぐ予測できたから、このアビスレイクを一気に駆け抜けて振り払う必要があると判断できた。
「セラとの約束のためにも! 生命を踏みにじられた者達の為にも、俺は行く!」
 フリューゲルの足を更に速めながら、カインはセラに「目を閉じていてくれ、すぐ終わらせる」とだけ告げてからまなざしが変わった。
「居たぞ、逃がすな!」
「こいつらをボルセブ様に献上すれば、俺達の生活は保障される!」
 若い正義感がカインを更に突き動かしていた。義憤は冷静さを欠かせるというが、今のカインは理性も冷静さもあった。
貴様ら、悔い改めろッ!」
 接近してくるアサシンクロスとギロチンクロスをクラスナヤで斬り捨てつつ、時には《スパイラルピアース》による剣圧で複数人纏めて串刺しにし、フリューゲルの《ウォータードラゴンブレス》で凍らせながらもカインは突き進む。
 ここまでで、セラも状況に身体が馴染んできたのか、積極的に《速度増加》や《ブレッシング》、《エクスピアティオ》でカインの支援を行いつつ、カインの討ち漏らしを《ジュデックス》で的確に倒していった。正当防衛ならば、神官も戦闘行動に出られる。
「そこまでだ!」
 一人のギロチンクロスが、斧と片手剣をそれぞれの手に持ち猛速度で接近してくる。ペロスが大型のモンスター故、斧が有効と判断してのことだろうが、カインに立ち止まるという選択肢はなかった。
「ここまで来たんだ、もう止まらん!」
「軍上がりのルーンナイト風情に用はない! その封書をこちらに渡して貰う!」
 残像を見せながらも、ギロチンクロスはカインに肉薄する。その事が分かってからセラは必死になって封書を抱き留め、ギロチンクロスに抵抗する。
「これは、あなた達には渡せないわ! あなた達の正義や信念があろうとも、私達にも私達の正義があるの!」
 セラが持っていた三色のジェムストーンが砕け散り、出力を調整して展開された《バジリカ》でギロチンクロスをはね除ける。しかし、ギロチンクロスはすぐに態勢を整え直した。
「ちっ! 二人まとめて始末する!」
 ギロチンクロスの残像が四つに分裂し、それぞれが《クロスインパクト》を繰り出すことでフリューゲルの退路を狙う。
「グォオオンンンッ!」
 「マスターはこのまま往け!!」とフリューゲルが吠えた。彼の意図を察することが出来たカインは、セラを抱きかかえながらフリューゲルから降りる。その隙をギロチンクロスが狙おうとしたが、フリューゲルが巨竜の体躯を活かして体当たりを行い、主達を逃がす。
「フリューゲルはどうするの!?」
「ここがアビスレイクなら問題ない! みんな、力を貸してくれ!」
 東の空を見ると、白み始めていた。日の出が近いことを確認して、カインは笛を吹く。するとどうだろう、かつてカインを襲った竜達が心強い味方となってくれるではないか!
「ギャオオオン!!」
「ちいっ、ペロスの群れか!」
 追っ手の行く手を、アビスレイクに生息している種々雑多の竜達が阻んでくれる。それでもギロチンクロスは《ハルシネーションウォーク》で無理矢理反射速度と移動速度を引き上げ、ペロス達による包囲網を振り切った後に、得物に《エンチャントデッドリーポイズン》を仕込んでカイン達に再び迫る。
「死ね!」
 カッ! 《メテオアサルト》による衝撃波を辛うじてかわしたカインは、アビスレイクが望める崖に視線をやる。笛に呼応して、彼が望む存在は姿を見せていた。
「心中などさせるか!!」
 猛速度でカインとセラに接近し、猛毒を仕込んだ《クロスインパクト》を放って二人を分断させたギロチンクロスは、すぐさまカインへ追撃を行い、セラと分断させる。
「しまっ!」
「カインっ!」
 セラの身体が空を舞った。しかし、彼女が空を舞う感覚を覚える前に、セラの身体はカインの腕に抱かれていた。《ファントムスラスト》で、強引に彼女を引き寄せることで難を逃れたのだ。勿論、威力は最低になるように槍どころではなく、ただの棒きれを槍と見立ててそれを行使した。
 しかし、カインがセラを助け出そうとしたことで、二人の身体はアビスレイクの崖に投じていた。ここまではギロチンクロスの読み通りだった。封書を取り返せればそれで良かったが、持っていたセラの生死は問わない。或いは、アビスレイクであれば封書その物は後で探せば良いのだ。
 だが、ギロチンクロスの思惑は正反対の方向に動くことになった。
何!?」
 カインはセラを抱き留めたまま、崖から飛び降りブルーオシドスへと乗り換えていた。野生の個体ならまだしも、それはカインの指示をしっかりと聞くだけの理知を持つ、れっきとしたカインの竜だった。
「荒っぽい真似をしてすまん、セラ」
「ううん、今は良いわ。それよりこの子はブルーオシドスよね?」
 カインとセラは、今ブルーオシドスの背に乗ってアビスレイクを飛んでいる。フリューゲルは追っ手を自分の意思で振り払いながらも、湖畔で主に追走しているのが見えた。
「ノーパスに襲われてから、俺は竜について調べられる限りのことは調べた。そうしているうちに、ペロスやオシドスのことは沢山分かった。さて、一気に振り切ってアビスレイクを抜けるぞヒンメル!」
「キュオン!」
 ヒンメルと名付けられたブルーオシドスは、カインの言葉に従ってアビスレイクを抜けた。フリューゲルが追走する間も、アビスレイクからはカインを援護するべく、野生のオシドスやノーパス、プティットが追っ手に攻撃を仕掛けていたのが、セラにとって予想外の光景だった。
 ドラゴンたちの群れを振り切ったギロチンクロスの女は、ただただカイン達が逃げ切るのを見届けるしかなかった。それと同時に、有ることを思いだした。
「《ドラゴンマスター》カインまさか、いや
 《ハルシネーションウォーク》の反動で身体の自由が利かないギロチンクロスは、ただつぶやくだけだった。


フィゲル西部

 アビスレイクを抜けたカイン達は、追っ手を振り切ったのを確認してからフリューゲルに乗り換え、助けになってくれたペロスやオシドス達に別れを告げる。
「す、すごいねカイン本当に、ドラゴンのこと勉強したのね」
「おかげで、俺はドラゴンマスターなんて異名を貰った。だけど、アビスレイクにいるペロスの大半は人間の敵なのは間違いない。だが、言葉が分かればコミュニケーションは取れる、そうすれば、争いを避けられる可能性は高い。下手をすれば、人間よりもな。セラ、あそこが目的地だよな?」
 日が昇りゆく中、セラは目的地といえる小屋に目を向ける。《秘密の羽》の構成員と思われる女性がカイン達を見るなり、驚きの声を上げていた。それは、こんな場所に冒険者が来ることは想定していなかった事もあるのだろう。
「あなた達は?」
「《秘密の羽》の者と見受ける。俺はプロンテラで輸送業をしている、カイン=デイヴィス元少尉だ。ある冒険者からこれを届けるよう頼まれて、ここまでやってきた」
 セラが封書を《秘密の羽》の構成員に見せると、それだけで彼女は状況を把握した。
「ありがとうございます、今すぐ中へ入ってください。レッケンベルの追っ手が来る前に、急いで」
 武装だけは解除せず、カイン達は《秘密の羽》のアジトへと足を入れた。

「わワイエルストラウス元閣下!?」
 小屋に入ると、元シュバルツバルト共和国大統領のワイエルストラウス自らが待っていた。「冒険者の諸君、ご苦労だった」と彼はねぎらった上で、部下に茶を出させてカインとセラ、フリューゲルを出迎える。
 その後、封書に目を通してから、ワイエルストラウスはカイン達に謝辞を述べた。
「ありがとう、君達のお陰でレッケンベルを告発するピースが一つ手に入った。君達の活躍には感謝の意を送る。少ないが、報酬も受け取って欲しい。君、あれを」
 秘書がワイエルストラウスに命じられて金一封をカイン達に手渡した。中身は冒険者が一回の冒険で手に入れるであろう額を遙かに凌駕するものであり、これだけあればカインの小屋を建て直すことも出来る程だった。
「しかし、ボルセブは懲戒免職処分となっていたはずだがこれは、アルナベルツやルーンミッドガッツにも影響が出る事態になるだろう。今はこうして辺境で雌伏の時を過ごしているが、必ず私はシュバルツバルトの政権に戻る。そして、この国をあるべき姿に戻すと約束しよう。重ね重ね、我が国のために貢献してくれてありがとう」
「身に余る光栄です。ところで恐れながら元閣下、私からお願いがあるのですが
 何のことだろう? とセラもワイエルストラウスも首をかしげたが、その後に出てきたのは、カインの小屋がレッケンベルの追っ手に爆破されたことだった。

 小屋を出ると、朝の陽射しが二人を照らした。夜通しの逃避行の末に、カイン達が見た朝陽は今までに見たものよりも綺麗に見えた。
「綺麗
「俺は夜勤があまり好きじゃなかったが、日の出を楽しめるのが唯一の楽しみだったんだよな。天津人も似たような感覚なのかも知れない」
 主を乗せてフィゲルから疾走し続けたフリューゲルにも疲労の色が見えていた。人間同様あくびをしながら、眠たそうにしているのをカインは頭を撫でてあげる。
「元大統領閣下からは報酬を頂いた。後はレッケンベルから俺の家を壊した賠償金をせしめるだけだ。だが」
 回り道はした、時間はかかった。だが、セラと再会してカインは思う事があった。あるいは、二十年前に誓ったことが、心の中で根付いていたのだろう。だから、カインは一呼吸置いて決心する。
(やるしかない、もう止まれない)
「ど、どーしたのカイン?」
 真剣な面持ちだったカインを心配したのか、セラが声をかける。それで我に返ったカインだが、言うべき事は決まっていた。
「な、なあセラ。二十年もまともに会えなくて、いきなりこんなことを言うのはぶ、無礼に程があるかも知れない。だけど、聞いて欲しいことがある」
 カインは、決意を固めた。今でなければ、言う機会などもう無いだろう。
「こっ、今回の代金だがゼニーは要らない。だが
え?」
 二つの意味で、セラは驚きを見せる。代金を要らないと言ったこともだが、その先は

「俺は君が、欲しい」

 朝陽に照らされるセラの美貌が、カインにとっては天上の女神のごときまばゆさだった。一方でセラは、カインの言葉の意味を理解できた時、自然に目から涙を浮かべていた。
「え、ええ私を!?」
「そうだ、俺はセラが欲しい。二十年前に言ったこと、これからも守りたいから!」
 セラを真っ正面から見つめながら、カインは真剣なまなざしを見せる。彼のまなざしを受けて、セラは結っていたブルーリボンをほどきカインに見せる。
「これ、カインがくれたリボンなの、覚えてる? カインがプロンテラに行ってからずっと、このリボンはカインだと思って肌身離さず持ってたの。カインが私を守るって言ってくれたこと、凄く嬉しかったんだから
「あの時の俺が買ったリボンずっと、持っていたのか
 幼き頃のカインの輪郭が今のカインの輪郭とかぶりながらも、セラはカインの申し出に二つ返事で答え、微笑む。
「うん。私も、カインの事ずっと好きで居続けたんだから。だからカイン、私を二十年も待たせたことこれから一生かけて償ってよね? 私を、絶対、ぜーったい、幸せにしてね?」
 セラは、満足そうにカインの胸に顔を預け、涙に濡れる瞳を閉じた。断片的だった二人の想いは、二十年と言う時間が、極上の純愛として熟成させた。


フィゲル

 事件から二ヶ月経ってから、カインとセラは故郷のフィゲルに帰っていた。単純にセラの両親に会いに来ただけではなく、大きな意味があった。
「お待たせ、カイン」
 セラの着飾った姿を見て、カインは息を呑む。普段ならアークビショップの赤い法衣に身を包んでいた彼女は、今日だけの特別な衣装ウェディングドレスに身を包んでいた。
「どう、似合ってるかしら?」
あ、ああ。じ、じゃあ行こう」
 緊張しっぱなしのカインを見て、昔を思い出したセラはクスっと微笑んでから「カインはタキシードに着られちゃってるぞ」と茶化しつつ、カインの手を取る。紆余曲折はあったが、これからは伴侶として同じ道を進むことが出来る。
 封書の中身に関しては、ワイエルストラウス元シュバルツバルト大統領の手から公表され、レッケンベルの会長が謝罪会見を開き、更にミッドガッツに対して数千億ゼニーとも言われる、莫大な賠償金を支払うことで和解に至った。
 更に、この一件を元にレッケンベル派だったシュバルツバルト政権に大打撃が走り、ワイエルストラウス一派による政権交代が起きるまでに至った。
 それは確かに歴史的な事件であるが、今のカインにとっては、セラとの挙式を上げる事の方が重要だった。
「遠回りしちゃったね」
「でも、こうやって俺はセラと結ばれた。結果に変わりは無い」
「二十年も待たせちゃって。でも、カインは私の幸せも運んできてくれたんだよ。父さん達も待ってるし、行きましょ」
 ニコッと微笑み、カインから送られたブルーリボンを揺らしてセラはカインを引っ張る。
(俺達の長い道のりは、これからだ)
「ねぇ、カイン」
何だ?」
「私カインの事、ずっと好きで居られて良かったよ。だから今度は、私がカインに幸せを運んであげる」
 一足先にと、セラはカインと唇を交えた。
 

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