X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

目が覚めたら15世紀のテンプラーだった件

全体公開 1 2744文字
2019-08-20 22:35:37

一時期なろうの異世界転生モノにはまっておりまして。

Posted by @acbh_dmc4

俺は人類を救うために死んだはずだった。
エデンの果実を巡る戦い、先祖たちの記憶――刺客として生き、仲間と共に歩み続け、そして最後に選んだ犠牲。
すべてが終わった――そう思っていた。

だが、目を開けたとき、そこにあったのは見知らぬ空。
鐘の音が響き渡る石造りの街、鋼鉄の甲冑に身を包む兵士たち。
俺は十五世紀のローマにいた。しかも、アサシン教団ではなく――テンプル騎士団の一員として。


俺はデズモンド・マイルズ。これは俺の物語だ。


***


目の前に踊るように剣を振るうその姿は美しささえ伺えた。
初めて見るのに、以前にも見た事があるような、そしてそれはとても身近だった錯覚を覚える。
しかし、赤く閃くその手首の剣を目の前にして突如意識を揺さぶったのは、あり得ない目の前の白い暗殺者の記憶だった。

俺はこの男を知っている。
知っているというよりも、寧ろその男となり、辛く厳しい現実を生きたことがあった。
恐れから武器を取り落とし、咄嗟に両手を顔の横へと上げる。
ガランと重い金属が地に転がる音が響いたと同時に、「デズモンド・マイルズ」という男の記憶が濁流のように流れ込んできた。


騒げば殺す。そこの扉の鍵を開けたい。協力するなら見逃そう」
「かっ鍵っ!!」

ハッとして自身の腰に吊り下げている鍵を手に取る。
そして目の前にいるアサシンへと顔を向けると、アサシンが顎で扉を指し示し開けろと命令した。
ふと扉の奥の事を考える。
他の警備の番兵がうようよといるのだ。
このアサシンがこの中を突破できないとは思わないが、少々手古摺る事は必須だ。

そんなことを鍵穴に鍵を差し込んで、少しの間考えてしまったのがいけなかった。
後ろのアサシン、エツィオ・アウディトーレが容赦なくアサシンブレードを俺の背に突きたてようと動いた。
咄嗟に小手でアサシンブレードの軌道を逸らす。
エツィオは少々驚き、しかし纏う殺気を強めて俺の首を抑えて壁に抑え付けた。
俺は慌ててエツィオに落ち着け、と両手を上げ無害を主張し、押し殺した声で状況を伝えた。

……この扉のすぐ近くには仲間が5人ほど詰めている。俺が先に入って、奴らを部屋から出す」

まっすぐエツィオの目を見つめて必死に説得するが、一、番兵の戯言など端から信用していないとばかりに目を細めて隠し刃をゆっくりと俺の首筋に突き付けた。
そして低い声で「応援を呼ぶつもりだろう?」と言い捨てるエツィオに、俺は必死に彼に訴えた。

「いいや!応援など呼ばない。だが、俺がアンタに協力する代わりに、俺もアサシンに入れろ!」
「何?」
「ボルジアにはもううんざりだ!というか、テンプル騎士団の陰謀に気が付いた。俺は末端だから大した情報は渡せないかもしれないが、多少役には立てる……と思う」

心臓が早鐘のように脈打つ。
2度目の喪失で復讐心に心を焼かれているエツィオは、ロドリゴ・ボルジアと対峙した時よりもいっそう容赦がない。

「俺には、幼い妹がいるんだ……ここで俺が死ぬわけにはいかない」

必死でうわごとの様にそう告げれば、エツィオはまるで鼻で笑うように息をつくと、俺を締め上げていた手を放し、俺から間をとった。
俺はこれからの行動に気合を入れるため、長く細い息を吐くと、再度鍵を差し込んで扉を開けた。

扉の前に見張りが一人が立っており、顔をのぞかせた俺にその男が「どうした?」と問うてきた。
廊下の奥に視線を走らせれば、1人は奥のデスクで休んでいる番兵の方に向かっている最中で、ちょうど視線がさえぎられていると判断し、俺は素早く仲間の口をふさいで強引に扉に引きずり込んだ。
エツィオが引き込んだ番兵の鎧の間から急所へと隠し刃を差し込む。

うめき声が漏れないよう、全力で男の口と動きを封じ、事切れたことを確認してから男を床に寝かせ、スルリと扉に滑り込んだ。
音を立てずに移動する術は目の前のアサシンの記憶からすでに学んでいる。
目くばせをするとエツィオは意外そうにこちらを見つめていた。

洗練されたアサシンの動き。
実際ここにはエツィオと同等のアサシンが二人になったようなものだ。
完全に俺を信じ切ってはいないだろうが、エツィオは俺を盾にほかの4人の番兵を始末するべく共に部屋を進んだ。

背を向けて進んでいる番兵が


*******

*******

*******

「俺は出来ないと判断するような任務は与えない。命懸けには違いないが、俺はお前を信じている」

薄く微笑みを湛えてエツィオが俺の肩を叩いた。
この男は本当にずるいと思う。絶妙なタイミングと言い回しで相手の心を擽る。
俺がこの男の人生を追体験していなければ、その言葉と魅惑の笑みで彼の期待を裏切らぬよう全力で応えようとしただろう。
いいや、真実彼の心を知っている今の俺でさえ、失望されたくないと思う程、彼の魅力は絶大だ。
どこかムズムズした心持でエツィオの期待の言葉に頷こうとした時、背後から肩を万力のような力で掴まれた。

「エツィオ殿。ご心配には及びません。この不肖ルーカス。命を賭して貴方に仕える所存。この者を生かせというならそうします」
「フン、命を落とした処で問題ないだろう。なんなら俺が引導を渡してやるか?」

背後からいつもはあまり仲の良くないやり取りをする男たちが、こんな時だけ息もぴったりに言い合い、俺に絡み始める。
そして背筋のゾッとするような殺気を纏わせ俺を睨みつけ、不穏な事を言う男に向き直った。

「ルチアーノ、俺はアサシンなんだ。そんな殺気を向けないでくれるか?」
「元・テンプラーだろうが。信用ならない」
「エツィオが迎え入れてくれたんだぞ?自分たちの長が信じられないのか?」
「エツィオ殿を呼び捨てにするな。シニョーレかマエストロを着けろ無礼者」

「おいおい、そこまでにしないか。それに、デズモンド。俺は長ではない」

困ったように苦笑してルーカスとルチアーノを宥める。
そしてルーカスに骨を粉砕されそうな勢いで握られていた肩の手を優しく叩いて離させると、俺の背中を押して部屋から退出した。
多分、ルーカスとルチアーノには指示を出したのだろう、俺とエツィオに着いて来ず、一瞬物凄い殺気を放った後、二人とも部屋から姿を消した。

「あの二人には困ったものだ。すまないな。俺に関して盲目な者がたまにいるが、多くは気の良い者たちだ」
「いや、みんなアンタに気が良いだけで、大体あんなもんだぞ」
「そうかな。まぁ、暫くすれば慣れる。今は元テンプル騎士だったことが尾を引いているかもしれないが、お前の実力を知ればきっと一目置かれるさ」


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.