@corona_moca1111
「何もできないんじゃないかって?」
目の前の人が驚いている。
僕はそんな顔を見てることもできなくて下を向く。涙が出そうになる。
「でも、田町さん成績はバッチリだし、人当たりも大丈夫だし、別に仕事はあると思いますよ?大丈夫ですって」
戸惑ってる声がするから、にこ、ってする。
「……そうですかね?」
「ええ、そうですよ、例えばですねー」
ガサガサと紙をあさる音、その中から数枚の企業案内とともに、説明が続く。……どの仕事も、どの業務も、僕に合わないことばかり書いてあって怖い。できない事が多すぎて多分いらないって思われる…。……と、後ろの方からの声が耳に入った。
「…でさ、哲学人関係の研究所。悩んでんだよなー」
「はぁ?そんなとこ行くの?」
「だって研究自体の環境が最高レベルでさ。」
この国で?という言葉が頭に浮かんでは消えた。……僕が気をとられてるのを察したのか、目の前で話している人が目配せをしてきたのがわかる。
「どうかしました?」
「は、え、なんでもないです!ごめんなさい…」
……変な奴だし、それだから仕事に就けないんだろうと僕でも思う…呆れさせちゃったかもしれない……
手で裾をぎゅっとしたら、皺々になってしまった。そのあとまた前で話し始める受付の人は業務的でかつ説明しつつ、的確な笑顔を向けているように見えた。後ろで歪みのように話し続ける声の大きい人たち。
「やめとけよ。死んじまうぞ?まだ事故が多いんだからさ。」
「えー?そんだけ面白いことできるって事じゃねーの?」
「お前そんなに馬鹿だっけ?化け物と隣り合わせで暮らせるほどのガッツなんか、お前にあんの?」
「ないでーす、あはあはあは」
「笑い方ヤバ!」
通り過ぎていくノイズ。後ろでドアが閉まる。なんだかその歪みが頭に残って音を立てる、気がして。
受付の大人は淡々と話を続ける。パンフレットの中には、研究でも事務でもないような名前が整列している。すでにパンフレットから合わなそうなデザイン、文字が多すぎてわからないやつ、これはブラックなので、と弾かれる言葉たちの中、
ファイルに入っている、別の文書たち。そこに、別の名前がふってあった。
「……哲学人研究所?」
「ああ、ええ、まぁ、あるんですよ。」
冷ややかな目線をファイルに送る前の人。
「ただ、規格外すぎますから引き止めさせていただいてます。消防士や警察官、自衛隊なんかと同じかそれ以上の危険がありますしね。……それの研究者バージョンって説明はしてます。」
「……戦うんですか?」
「流石にそれはないと思いますよ、研究職ですからね。全然知らないし、卒業生も出ていません。…それより、こちらはいかがでしょう?田町さんなら、分析力が役にたつかも…」
そうやって別の資料を開き出す。見てはいけないものを見てしまった、ような雰囲気だった。
「でも、なんだか、気になって。調べたら助手がほしいって書いてあって、それで、ええと、来たら、入ってました。」