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歯をこぼす

全体公開 その他色々二次創作 1657文字
2019-09-09 17:15:23

森くんのギザ歯すき(FGO/森長可と水着ノッブ)

Posted by @syuu_29

果実をかじった跡を指したのか、それともその歯並びそのものについて言った言葉であるのかは長可に判断できることではなかった。陣羽織姿の自分の横には少女姿の信長が一人。赤いTシャツをだらっと着ているのは夏の祭りに合わせた特別な姿だという。霊基まで違っているらしい。少なくとも長可にその違いはよくわからないが。
「齧られたら痛そうじゃのー」と横から見上げる信長を見下ろして、長可はもう一口齧って飲み込む。皮も剥かず切りもせずに齧っていた黄金の果実はそれで芯だけになった。
長可はまだカルデアに召喚されて日が浅い。塵箱がどこにあったかもあまりはっきり覚えていないことを思い出し、わざわざ腰を上げてどこかへ捨てに行く億劫さにしばし口を閉じて思案したが、結局ものぐさに任せて芯を口の中に納めた。林檎の形をしていても本性は魔力の塊だ。噛み砕けば擬態はすぐに解けて、味さえもしなかった。知らなかったが結果よしだなと本人が納得する横で、しかし信長のほうは狼狽える。
「うおおい。食うんかい。もちっとこう、躊躇とかせんか。あいも変わらず蛮族ポイントの高い男じゃのー」
「ああ? ンだよこのぐらいで。つーかよ、大殿、お行儀よすぎねーか? 小さくなるとなんかそういう効果、あんの? あんただってバーサーカークラスじゃねーっけ、今。えっとなんつーんだっけか。あ、ろっく? ろっくってのが足りてねえんじゃねーの、そういう発言は」
「ぐっ 勝蔵のくせに痛いところを――しかしほら、たしか林檎って芯に毒があるとかないとか言うじゃろ。じゃからなーそう死に急ぐ必要もなかろう、っちゅーわしの親切心をそうバカにするとは。はーーまったくどこで育て方を間違えたかの。人の言うことほんっと聞かんし。そのまんまで先に死んだのがまずったのかのー甘やかしすぎじゃったかのー」
言いながら、信長は襟元を掴むべく具足の胴に手をかける。ぐいぐい遠慮せずに引いて、座高さえ高い男を引き寄せる。
「何だよ大殿」
体重をかけるように引っ張られ、長可も信長の方へ屈み込むしかなくなる。
「ほれ、口を開けよ」
「ああ?」
長可が何でと二の句を継ぐ前に、信長の指がその口を掴むと、細くて小さな指で無遠慮に口内を弄った。口の中を覗き込みながら、歯列をなぞる。その鋭さを確かめる指は長可が口を閉じれば簡単に噛みちぎってしまえそうだった。しかし人の指を噛む趣味はないので、長可はおとなしく口を開いておいてやることにした。
少女の姿をしている信長は小さい。長可の半分ほどしかないだろう。それでも人に対する接し方はまるで変わっていない。まるでわけがわからない。
「いや噛み跡見とって気になってたんじゃが――やっぱ生前よりなんかやたらとギザギザしとらん? 歯。なーんか獣みたいにでかい歯になっとるような。図体でかいと歯もでかいのか?」
「ほうかあ?」
「あっ 人が指をつっこんどるのに喋るな。さくっと噛まれそうでこわいわ」
「ほあってよ」
「待てというに」
聞き分けのない!と信長は慌てて指を引き抜き、シャツの腹で長可の唾液を拭う。聞き分けがないのはお互い様じゃねえのと言いかけ、不毛だと気付いた長可はめずらしくもため息をついた。
「ま、いーけどよ。大殿が満足なら」
「おお? なんじゃ勝蔵。わからんが急に殊勝なことを言いよって」
よいこじゃのーと信長はにこにこ笑って長可の肩を叩いた。本当はちっとも痛くはなかったが「なんだよ痛ぇって」と長可は笑った。それから「うははは」とまるで意味もなく笑う。なぜならば目の前で信長が笑っているからだ。それ以上の理由もなくけらけらと笑ってしまえるのはたぶん、サーヴァントになる時にそういう欠け方をしたんだろうという自覚があった。それはべつに、何か問題のあることではなかったけれど。

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「歯」というセルフお題だった。
森くんの言動がもうだめすきですって感じなんですがいざ書こうとするとノッブも森くんもめっっっちゃ書きづらくてつらかった。おそまつさまでした。


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