X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです
Xフォロワー限定公開・リスト限定公開の停止について

[薫P♀]甘えん坊

全体公開 2 1053文字
2019-09-12 20:22:53

「いやや」

寝ぼけてPさんに甘えん坊する薫さんのお話です。

Posted by @toasdm

 あ、これ寝ぼけてるやつだ。絶対、すんごく。
 彼女はそれを察して、くすっと笑う。腰に巻きついた腕は白く細いのに、引き止める力は男のそれだ。最近お疲れだったから、と猫のような柔らかな髪を優しく撫でて、彼女は極力優しく呼びかけた。
「薫さん」
「いやや」
 言葉もお国言葉に戻っている。発音からして、文字表現するならひらがなになるだろうか。間延びした話し方は珍しいが、朝の薫にはよくあることだった。
「遅刻しちゃいます」
「いくなや」
 反応は速いが口調はゆるい。そしてなにより、とびきりの甘えん坊になる。普段とのギャップが激しすぎて、彼女は笑いを堪えるのに忙しくなってしまうのだ。
「ちゃんと夜には戻りますから」
「またれへん」
 本人に言えば確実に怒られるであろう言葉をあえて選ぶとするならば、寝ぼけた薫は可愛い。目は開かない、布団から出ない、髪には寝癖がついている。眼鏡をかけていないから、目を開けたところでやぶ睨みになるのは知っているが、それでも可愛いとしか例えようのない朝の薫は、今のところ彼女が独占している。
「薫さん」
「かおるよべやぁ」
 しかも、欲求がダイレクトだ。普段なら「よそよそしさが目立つな。呼び捨てにできないのか」と赤らめた頬に仏頂面を浮かべるか、「君は僕の恋人なんだぞ、呼び捨てで構わない」と不貞腐れるあたりだろうが、甘えん坊の朝はそのどちらでもないのだ。
……薫」
「ん……
 ようやく、もぞもぞと身を捩りだす。ここらへんでやめておかないと後が面倒だ、と彼女は乱れた前髪をそっとかきあげ、薫の額に触れた。
「薫、私もう行くよ」
………………遅くなるなら、連絡を寄越せ。恋人を一人歩きさせる趣味はない」
 あーあ、起きちゃった。
 起きてほしいと思ってはいたものの、ほんの僅かのお楽しみタイムが終わってしまう寂しさに、彼女は苦笑混じりにため息をついた。
「はい」
「それと」
 この後に続く言葉も、彼女にはわかっていた。

……僕は寝ぼけていただけだ」

 そして、どう扱えばいいのかも、わかりきっている。
「はい。わかってますよ」
 わかっているならいい、と布団にもぐりこむところまでセットだ。シーツの白の中、恐らくは赤いであろう薫の頬に心の中でいってきますのキスをして、彼女はベッドから立ち上がった。時間には、少しだけ余裕がなくなってしまったが、彼女は幸せを噛み締めて家を出る。

 甘えん坊に後ろ髪を引かれながら吸い込んだ朝の空気は、心なしか甘い気すらしたものだ。


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.