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【声騎士明媚小説】夜に咲く花の種埋める

明咲千寿💙
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2019-09-23 21:11:05

#声で勝ち取る騎士戦争 #声騎士_明媚インフォ 登場/チヒロ・シキ

声で勝ち取る騎士戦争


石山瑞角さん(@zuishiyama)が発足させた声が主体のTwitter企画
略称・声騎士

明媚な花は夜に咲く

夏祭りをテーマにした企画内企画
略称・明媚

登場人物
チヒロ
https://privatter.net/p/4392037
レッドバルディッシュ魔法兵団第2部隊『紬の一手』副隊長
性別不詳な容貌をした女性。
お願いしに来たはずが態度がでかい。

シキ

ホワイトファルシオン魔法兵団 第14部隊『御旗の要』
風呂上がりに驚かされた。


最盛期を迎えたかと日毎に誰かが口にすれども、翌日にはより上回ってしまっていくような、蒸し暑い夏の夜。
湯浴みをした帰りなのだろう。
暗くて長い、ホワイトファルシオンの隊員達が詰める宿舎の廊下を一人の少女が歩いている。

彼女は、しっとりと濡れたままの重さの増した長い銀髪を、自身が発する穏やかで優しげな雰囲気そのままの手付きで、肩に掛けたタオルと髪とを包み込むようにして何事かを唱えながら拭き取っていった。
掌に魔法で熱を与えたのだろう。毛先から滴り落ちていた水滴は見る影もなく、見る見るうちに乾いていく。

掌とタオルと髪の毛とと云った具合に吸水に富んだタオルを掌と髪との間に挟む事で水気の蒸発を促し、速乾性が高まったのだ。
らしいけれどもらしくない。
そんな雰囲気とは裏腹の隙のない合理性を併せ持つ彼女こそ、湯上がりでトレードマークでもある、ツインテールこそ結い上げてはいないが、魔法兵団第14部隊【御旗の要】のシキである。

「よお、シキ。聞こえているか?」
「――っ!?」

突然聞こえた、居る筈のない人物の声にシキは驚き、咄嗟に胸元へと両拳を構え、肩に掛けていた筈のタオルがトサリ、と床へ落ちていくのを気にも掛けずに大きく振り返った。

だが、そこには当たり前のように、シキが思い描いた人物は愚か、目立つ金糸の髪も、赤と黒の装束も、視界の先ではためく事はない。

「ふっ、はははは! アンタ、今、めちゃくちゃ驚いているだろう? 姿が見えないのはお互い様だが、音だけでも容易に想像がつく」

人によっては男だとも誤認してしまいそうな低い声。
笑い声になると、それがいつもより高くなる。
ぶっきらぼうに見えて、案外と感情の発露が素直な彼女。

「驚きました。本当に。……わざわざ手間の掛かる術式を使ってまで敵対組織にいる私に声を届けた目的は何か? 聞いても良いでしょうか――チヒロ様」

そんな声の主、チヒロにシキは好感を抱いている。
どころか、ほのかな友情さえ感じているシキではあるが、それとこれとは話が別だ。
シキの声はさらに警戒を深め、語尾に近づくにつれて段々と強張った物へとなっていく。
チヒロと呼ばれた女の声の正体はレッドバルディッシュ、魔法兵団第2部隊【紬の一手】のチヒロ副隊長、その人である。

シキの所属する、ホワイトファルシオン。チヒロの居るレッドバルディッシュの他に、ブルーファランクスと呼ばれる騎士団が存在する。
三者三様の色の名を持ち、信条と特性を掲げる3つの勢力が、いつ、誰が、なぜとも言えぬほど長い間、三つ巴の戦争を繰り広げている中での突然に話しかけられたのだ。
シキでなくとも警戒してしまうのは想像に易い。

「仕方はねえが、そう警戒するような用件でもねえさ。――ただな、アンタに友人として協力してもらいたい案件があって声を掛けたまでだ」

そう言い置くと、「まずは黙って聞いてくれ」と学者先生かと見紛うような、気難しげな声色で以て、チヒロは説明をし始める。
その抑揚の薄い話し声に、そういえば講師として学生に魔法を教える事もあると言っていたようなと、いつかに聞いた話をシキはぼんやりと思い出した。

「――と、まあこんなこんな事情で、当日3日間に何か予定が入っていないようなら、中立地帯で行われる夏祭りに参加してほしいんだが……アンタ、さっきの今で警戒を解くのが早すぎる」
「へ? でも、お友達として……私に話し掛けてくださったのですよ、ね?」
「それが嘘である可能性は鑑みねえのか?」
「ふふ、そんなの、チヒロ様がする筈がありませんよー! だって、策略はお好きですけど、騙し討ちは趣味ではございませんよね?」

それに、と、緊張を解き放ち、目を糸のように細めて蕩ける程の笑顔でタオルを拾い上げながら、嬉しそうに言葉を続ける。

「そんな事より、チヒロ様がお友達だと、言ってくださることが嬉しいのです」
「……馬鹿だな、アンタ」
「馬鹿でいいです。だって嬉しいですから!」

心底そう思っていそうなシキの明るい声にため息と共にくすりという笑い声が自然と漏れ出す。
そんな自分がまた笑えてきたのかチヒロの笑い声はますます大きくなっていった。

「あはははは!」
「もう、そんなに笑わなくったって良いじゃないですか……!」
「はは、いや、だって、なあ? ――甘いのに悪くねえと思っちまうんだ、笑い事でもねえのに笑っちまうぜ」

笑っている気配が未だ滲むが、シキの膨れたような声にバツが悪くなったのだろう。

「でもまあ、なんだ、それがアンタの強みでもあるんだろうな。これだけ懐かれてしまったら誰だって絆してしまう」

きっと対面でなら、いつもの難しい顔のまま、金色の髪を掻き回しながら言葉を探している姿が目に浮かびそうな唸り声と共にまたもチヒロは語り始める。

「詫びついでに良い事教えてやる……祭りの3日目にな、花火っつう、火薬に色を付けて花に見立てた火花を空に何発も打ち上がるんだ。……試し打ちを見たっきりなんだが、あれは良いぞ。火薬ってのは人を殺すでなしに、こんな楽しい事にも使えるのかって、感動して、興奮して、ついには家に戻って再現実験だ」

楽しそう。自分も見てみたい。
チヒロがこんなにも感慨深げに愛おしそうに語る、花火の美しさを。
シキはそう思うと同時に、何故か理知的な青い目をした黒髪の青年を思い出して、一緒に見てみたい。と、そうも思ってしまった。

……きっと、その人はそうは思わないのだろうけど。

慣れてしまった厭世的な思考に気が滅入ったのか、シキの長いまつげは自然と伏せられ、ふんわりと下まぶたに影を作る。

「いつかは小型化させて半永久的に形状保存出来る魔法をかけた上で、瓶に詰めて、インテリアとして楽しめる花火を作るのが目下の目標だな! ……なあ、そんなすげえ花火を間近で、誰かと見るってのは乙じゃねえか?」
「チヒロ様はそう思うのですね」

肯定も否定もしない。シキという少女の自我は時折、月に叢雲が掛かるかの如く、隠れてその端緒を掴ませない。
そんなシキのにべない言葉に「ああ」と短く答えてチヒロは大きく頷くと、口端をニッと釣り上げてこう言った。

「一人よりも大勢で共有したくなる風景だ、そんな相手がいるなら遠慮なく誘っちまえよ」
「いらっしゃれば、ですけどね……私が望んでいても、その方が同じように思ってくださる訳はありませんから、ご期待には添えないかもしれません」
「独り占めもありだろうさ。けど、それはアンタが共に見たい相手の気持ちを聞いてから結論付けるべきだと俺は思うがな」
「……ただの思い込みだとおっしゃりたいのですか?」
「いいや? 決めつけ癖がある身からのお節介だ。当日まで日はあるし、アンタの好きにすると良いさ、それじゃあな」

言うが早いか、切るが早いか。
話し始めには聞こえなかった、ぽちゃりという水音と共にチヒロの声はかき消えた。

「え、待ってくださいチヒロさ……ま……切れちゃった」

呼び止める声がチヒロに聞こえていたのだろうかと不安になる程、一方的な終わりに行き場をなくした言葉を持て余してしまう。

「……もしかしたら思い込みかもしれない、かあ……」

チヒロに言われた言葉を反芻し、ポツリと口に出してみる。
断られるのは怖いが、少しだけ勇気を出してみてもいいかもしれない。
もし本当に思い込みでしかなかったのなら、もし二人で花火を見ることが出来るとするなら、きっと私は身に余る程の多福感と忘れ難い思い出を手に入れることができるような気がする。そうシキは思い直したのだった。

END

【おまけ】
シキ「あの、結局どうして私を特定して音声伝播魔法を行使できたのですか?」
チヒロ「ああ。忘れてた……はい、落とし物」
(チヒロ、懐から何かを取り出すと、シキの手を取り握り込ませる)
シキ「あっ、これって」
チヒロ「ご覧の通り、アンタが片方落とした髪飾りを媒介にしたんだよ」
シキ「な、なるほど……お手数をおかけしました」
チヒロ「勝手に使っちまったが、返せてよかったぜ」

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