魔法使いの贈り物〜文学少女の日記 Part.18〜

Publish to anyone 3043
2019-10-26 16:54:08

今日は賑やかな豊穣祭。
魔法使いたちが祭りを華やかに彩る。
鈴の図書館物語、第18話。
鏡司書ラブストーリー。

Posted by @natsu_luv

風が冷たくなり、木々の葉が少しずつ赤と茶色に染まっている。
温かい紅茶が美味しく感じる季節の到来だ。
特務司書としての仕事は相変わらずで、有碍書の浄化はまだ終わることを知らない。
そんな中、桜川町図書館ではハロウィンイベントの準備に取り掛かっていた。
ハロウィンイベントは毎年恒例で、仮装した職員たちが子供たちにお菓子を配るという内容のものだ。
イベントの前日、私は食堂で子供たちに配るお菓子の包装をしていた。
扉の開く音が聞こえてきた。
目をやると、鏡花さんと和郎くんの姿があった。

「司書さん、お疲れ様です。何をされてらっしゃるのですか?」
「あぁ、鏡花さんに和郎くん。明日のイベントで配るお菓子を包んでるの」
「自分たちにも手伝わせてもらえないだろうか?」
「もちろんだよ。人手は多い方が良いからね」

鏡花さんと和郎くんがせっせとかぼちゃのクッキーを包んでいく。
ほっくりした甘さのクッキーは、きっと子供たちにも気に入ってもらえることだろう。
ひととおり包み終わった時、敦くんと八雲先生も食堂へやって来た。

「皆さん、お疲れ様です」
「これはキュートなお菓子デスね!」
「ありがとう。明日のために取り寄せたんだよ」
「明日……豊穣祭の催しですね」
「その通り! 図書館も綺麗に飾り付けちゃうよ」
「楽しみですね」

私はハロウィンイベントの概要をその場にいるメンバーに話した。
話の途中に携帯電話の着信音が鳴った。
一体何があったのかと電話に出てみると、明日のことでの緊急連絡だった。
仮装する予定の職員に何人か欠員が出てしまったとのことだ。
このままでは人手が足りない。
そこで、私は急なお願いを聞いてもらうことにした。

「急で申し訳ないけど、明日のイベントで仮装した職員の役をやってほしいの!」
「僕らで良いのなら、お手伝いさせていただきます」
「そうですね。是非ともやらせてください」
「ワタシも頑張りマス!」
「ところで、衣装はどうすればいいのだろうか?」

和郎くんの疑問に答えるため、私は昨年使用した衣装をいくつか持ってきた。
魔法使いの帽子とマントならば、サイズを気にすることなく着られるだろう。
吸血鬼とキョンシーの衣装もほつれた箇所が無く、特に問題なく着られる。

「この中華風の衣装、可愛いですね」
「ワタシは吸血鬼の服を着てみたいデス」
「僕は無難に魔法使いにしましょうか……
「和郎くんも魔法使いになる?」
「では、そうさせていただこう」

敦くんにはキョンシー、八雲先生には吸血鬼の衣装を試着してもらった。
サイズもちょうど良くて、ふたりとも良く似合っている。
鏡花さんと和郎くんに着てもらう魔法使いの衣装は、少しだけ手直しすることにした。
鏡花さんの分には紫のリボン、和郎くんの分には紺色のリボンを付け足した。

「うん、ますます可愛くなったよ」
「可愛い……良いでしょう。司書さんがそう仰るのなら」
「マントの下は洋服で問題ないだろうか?」
「そうだね。シャツとスラックスで良いよ」
「承知した」

配るお菓子と仮装の準備も整った。
あとは、図書館を綺麗に飾り付けるだけだ。
背の高い八雲先生にオーナメントを天井に取り付けてもらい、私と残りのメンバーはテーブルにジャックランタンの置物を飾って廻った。
無事にハロウィンイベントの準備が終わった。
私達は明日のイベントの成功を願い、それぞれの部屋へと戻った。



ハロウィン当日がやって来た。
私達はお菓子の入った籠を持って、開架図書エリアへと向かった。
明るい笑い声が聞こえてくる。
開架図書エリアはたくさんの子供たちで賑わっていた。
中には仮装した子たちもいて、その姿はとても可愛い。
お母様方からの視線を感じる。
それもそのはず、私の周りに顔の良い男性が勢揃いしているのだから。
そろそろ開始時刻だ。
私はイベント開始の合言葉を唱えた。

「トリックオアトリート?」
「良い子には僕らからお菓子の贈り物を授けましょう」
「わぁい!」

子供たちの歓声が館内に響き渡った。
私達の目の前にお菓子を貰うための行列ができた。
鏡花さんと和郎くんと私で、子供たちひとりひとりにお菓子を渡していく。
かぼちゃのクッキーを貰った子供たちは笑顔になっていた。
次から次へと子供たちが並び、しばらくは列が途切れることがないだろう。
最初の方こそ難なく配ることができたけれど、このままだとお菓子が無くなるか館内の子供たちに行き渡らなくなってしまう。
一方で、八雲先生と敦くんは写真撮影で多くの来客に応じていた。
写真撮影の列も途切れることはなさそうで、お菓子配りを手伝える状況ではないといったところだ。
頭の中で少しパニックになっていたところ、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「その仕事、我らにも手伝わせてもらおうか」
「どうして僕まで……
「紅葉先生! 秋声くんまで……!」

魔法使いの格好をした紅葉先生が助太刀に来てくれた。
秋声くんは魔法使いの弟子のような格好をしている。
私と同じように、鏡花さんと和郎くんも紅葉先生のお姿に圧倒されていた。
早速、紅葉先生はお菓子の入った籠を運んできた。
秋声くんもやれやれと言いたげな表情で先生の後に続いていた。

「小童たちよ、我らから褒美を授けよう」
「わぁい、ありがとう!」
「さぁ、我の前に並ぶが良い」

子供たちが紅葉先生の前に並び出した。
配る列が増えたことで、子供たちにお菓子が行き渡りやすくなった。
敦くんと八雲先生も写真撮影に専念できるようになった。
気付けば、時計の針が四時を指していた。
だんだんと子供たちも少なくなってきた。
用意していたお菓子も全て行き渡った。

「皆さん、お疲れ様でした」
「紅葉先生、秋声、助太刀ありがとうございました」
「お安い御用だ」
「どういたしまして。成功したみたいで良かったよ」

開架図書エリアもそろそろ閉館だ。
鏡花さんたちには先に談話室へ戻ってもらい、私は片付けの手伝いを始めた。
お菓子を持って帰る子供たちもみんな笑顔だった。
一時はどうなるかと思ったけれど、無事にイベントは成功させられた。
ひととおり片付けが終わった後、私は鏡花さんたちが待つ談話室へと向かった。

談話室に入ると、鏡花さんたちがかぼちゃのクッキーを囲んでいた。
イベントに参加していない先生たちの要望で、服装はそのままだという。
私の姿を目で捉えた鏡花さんが、プレゼントのようなものを持って歩み寄ってきた。

「司書さん、本日はお疲れ様でした」
「鏡花さん、みんなもお疲れ様」
「こちらをお受け取りください」
「ありがとう。早速、開けてみてもいいかな?」

包みを開けると、ジャックランタンが描かれた箱が出てきた。
中身は紅茶のティーバッグだった。
鏡花さんいわく、栗とキャラメルの香りの紅茶だそうだ。

「この間、和郎くんと雑貨屋に行った時に見つけたものです。あなたに飲んでいただきたくて、買って参りました」
「そうなんだ。ありがとう!」
「鏡花さん、喜んでもらえて良かったですね」

和郎くんの言葉を聞いた鏡花さんは、安堵の微笑みを浮かべていた。
ハロウィンの夜はまだまだ続く。
貰った紅茶はかぼちゃのクッキーとよく合うだろう。
私はハロウィンのお茶会に華を添えるため、紅茶を淹れる準備を始めた。


Press the Nice button to this post.


© 2022 Privatter All Rights Reserved.