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ゴジラとおっぱいと時々おでん

全体公開 2171文字
2019-11-14 16:49:05

三人揃って8トントラック

 プロクス団、それは爪弾き者たちの自己主張の場。
 今日も彼らは気ままに、各々の気持ちの丈を振り回し続けている──。

 記録的な寒波が時城市を包み込み、街一帯がさながら雪国に飛び込んだかのように白く染まる。
 根城であるぼろ工場に最低限の冬備えをし、隙間風に身を震わせながらプロクス団のとある三人組は今日も何気ない話に華を咲かせていた。

「いや~~~、なんまらさみぃなあ。今日はなんしたんだべもう」
「あれじゃないか? あの人がまさかの戦闘で大怪我撤退なんかした反動」
「あながち本当にそうなんじゃないかって思えるからすごいよね……あーさむ」
「ストーブ全然つかねんだけど、石炭ストーブのあったかさが恋しくなるなあ。この期に買ってもらえねえべか」
「オレはストーブ買う金で今すぐ暖かくなれるもんが食いてえよ……おでん、ラーメン、オレイケメン……
「電気ストーブ、暖かくなるまで時間かかるからね……僕はこたつがほしいかなあ」
「トンヌラ、気持ちはわかるけどさあ。ちょっと考えてみろよ、こたつなんて買ったところできっと姐さんのワガママボディに締め出されて終わりがオチだぜ?」
「一理ある」
「ここまでワガママボディって言葉で邪な感情を抱かせないって言うのも逆にすごいよね」
「でも改めて考えるとでっけえよなあ、あの人のおっぺえ。叩いたらええ音しそうだ」
「お前、オレ達が紅一点に気を遣ってかれこれ3年は自重してた話題を」
「一周回ってまな板だよね、横に」
「あの無頓着で戦闘民族なあの人が、あんな重りを削ぎ落としてないってのもおかしな話だよな」
「そうだね……もしかしたら、何か理由があるのかもしれない」
「ああ。……あれはきっと断頭台かもしれねえだ」
「断頭台」
「その心は」
「ダーりんがあのまな板おっぱいに板とヤクザの頭だ載っけて、そのままえいやっと首にナイフを」
「んふっ」
「デデーン」
「トラ助アウトー」
「いでっ。いや今のは無理だろ!? 冷静になって考えてみろよ」
……ごめん、僕が悪かった」
「文字通り地獄の断頭台ってやつだべな」
「処刑場まで自分の体で用意する、末恐ろしいぜ姐さん……!」
「なんだ、呼んだか」

 がらっ。微かに音を立てて引き戸が開いた。
 返事をしかけて恐る恐ると振り返る。……尖端だけ見えるのは、艶かしいを通り越して恐怖の象徴にしか見えないヒールの靴。
 それだけで三人には割り開かれたドアの向こうが見えた。見えてしまった。

「随分と興が乗っているようだな」

 一切の情の滲まない声が鼓膜を震わせた途端、三人の身体までひきつるように硬直する。
 ──現れた女の手には、人の頭ひとつぶんほどに膨れたコンビニ袋が握られていた。
「ひええええええっ!!!? 生首!!?」
「マジで!?打ち首!?」
「いよいよ不敬罪だべ!?」
……黙って聞いていれば打首生首となんだ。そんなに首がお望みか?」

 大きく溜め息をついた女は、ぐっと親指を己の喉元に向け、真横に動かして見せる。
 そうすればもう、三人は一様に顔の色を赤と青に点滅させるしかなくなった。
 軽口も叩けない程に怯えた三人を、やれやれ、と二度目の呆れたような溜め息で諌める。はたと三人が顔を見合わせれば、ようやく止まった空気が流れ出した。

「あ……あれ、クビにされないんですかオレたち?」
「『じょうく』と言うやつだ。要らんなら私が食うぞ」
「食う……って、あっ」
「おでんだ」
「おでん? おーでぃんではなく?」

 ずいと不躾に差し出された袋からは、よく見ると小さく湯気が立ち上っている。
 頭ほどの大きさがあると認識したものは、何故か木目がプリントされているようなよくあるプラスチックの容器であった。

「もう三月の終わりではあるが、今日はやけに冷えるだろう。気が向いた」
「あ、あったけえ……声は冷たいけどいつも冷たいぶん今日が余計にあったけえ……
「ありがとうございます、ダーリエさん。ちょうど小腹がすいたところで」
「オデンデンデデン……オデンデンデデン……
「やめろハチ、もう一生シラフでダースベイダー観れなくなっちまう」
「~♪」
「そこ乗るの、こんな荘厳な鼻歌僕生きてて初めて聞いたんだけど」
「やってまいりました、絶対に笑ってはいけないダースー黒光りゴジラ対策室24時」
「っぐふっ」
「デデーン」
「トラ助アウトー」
「いや流石になんだよダースー黒光りゴジラ対策室って!? 言葉の勢いだけで乗り切ろうとしすぎだろ!!」
「ケツを出せ、釘バットしかなかったがまあ問題ないだろう」
「年の終わりより命の終わりが見えるようだよ」
「『じょうく』と言うやつだ。軽く構えていろ」
「天丼か!」
「おでんなんだよなあ……
「おうい、早くしねえと冷めちまうぞぉ」
「玉子は私のだからな。やらんぞ」
「そこは人数分買ってきてくれたりするところだったんじゃないかなあって思いますよ僕」

 プロクス団、それは爪弾き者たちの自己主張の場。
 今日も彼らは気ままに、各々の気持ちの丈を振り回し続けている──。

「いや、ナレーションとか入れても丸く収まる訳じゃ、あっっっづぅ!!! 誰ッスかこの人に芸人式あーんとか教えたの!?」


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