@acbh_dmc4
男の納得のいく『攻撃魔法』の完成まで数日をVRルームで過ごした。
何もないと思っていた部屋は望めば生活スペースをいくらでも提供してくれた。
だが殺風景な真っ白い部屋にいつまでも居ると気が滅入ってくる。
俺は定期的に地上に戻り、評判の店の料理を食したり、大浴場でリフレッシュしたりと自由にしていた。
第5元素の攻撃モーションの構築は、男に付き合わされて二人で協力して作り上げた。
男が納得する派手で見ごたえのあるエフェクトがたっぷり盛り込まれた技の数々。
例えばファイアーアロー。
ネーミングの通り発射する直前は弓矢の形を持つが、手から離れると鷹の姿を模り、的に着弾すると周囲を巻き込んだ大爆発を引き起こす。
的の近くに落雷を落とす場合も、上下に丸い雷の玉を配置し、玉を繋げる様に電流が走っており、それが6つほど横に配置されたものが3~4連発派手な音を立てて落とされる。しかも無駄な放電が辺りを飾る。
そもそもこれは『魔法』ではなく、いくらでも出現させ続けることが出来るエフェクトである為、これを使う際に制限を設ける事にした。
その制約は細かく、MPを100とした場合、小攻撃が10、中攻撃が15、大攻撃が25、特大が50MP消費するという案配のようだ。
所謂『MP切れ』を起こすとペナルティとして一時的に全身の力が抜け、倦怠感を感じる様にしたようで、そのペナルティ調整の為に断りもなく俺で試したので、腹が立って殴り合いと作り上げた魔法擬き攻撃交じりの喧嘩に発展し、大いにシステム調整に役立ったようだ。…腹の立つ。
納得のいく魔法システムを構築し終えると、あとは支柱相手に攻撃魔法を繰り出して訓練を積んだ。
満足いく成果を出したと判断した男が、練習の終了を告げた。
「それで?いつ狩りに行くんだ?」
「ふむ、そうだな。システムの調整をしたいし、明日の朝ポータルに入ろう」
VRルームから出て、地上へと出る。
地下に籠ったきり一切食事や睡眠を摂らない男を引っ張って大浴場へと向かった。
別に汚れた様子もなく体臭も変わりなかったが、心無し埃っぽいような気もするので、人としての営みを是としている男の手助けをしてやった訳だ。
服を脱ぎ、二人揃って大浴場へと向かう。
先ずは埃っぽい(ような気がする)身体を洗い流すために洗い場へと向かった。
横並びで石鹸を泡立てて体を洗う。
周囲には同じように石鹸で体を洗っている利用客が、時折シャボンを作ってはしゃいでいた。
そんな風景を見つつ、この浴場に来ていて常々疑問に思っていたことを男に尋ねる。
「露店で販売されている石鹸やタオルはアンタが卸しているのか?家で使っている物と同じだろう?」
「ああ、そうだ。工場を作って色々作らせている。レシピはあるからな。勿論、初期投資の費用はこのメモリーで働いたものを増やして得たのだ。レシピだけでもチートだからな」
「……アンタの資産は今どれくらいあるんだ?」
「銀行に預けっきりで確認はしていないが、あまり使わないから相当貯まっているのは確かだ」
男の話を聞き、エツィオの生前ボルジア兵を打倒し身包み剥いだり、虐げられていた市民から心づけを貰ったり、スリなどで多少の金を稼いでいたのが馬鹿らしく思えてくる。
現実を生きたアサシン教団の主な収入源は娼館だったが、それすらも既に収入を超えていそうだ。まぁ比べるものでもないのだが…。
体の泡を掬った湯で流す。
男も湯で泡を流しており、露わになる男の体に目を奪われた。
傷だらけの体は俺よりも幾分逞しく引き締まっており、水に濡れ前髪が顔に降りると、鏡を見ているように自分にそっくりだと、当然の事なのだが驚いて見つめてしまった。
まるで間違い探しのように、見知った傷と見知らぬ傷を眺める。
そして自身の体に視線を戻して、男との違いに眉を顰めた。
「…俺よりもガタイが良くないか?普通年を経れば筋肉も落ちる筈だろう?創造の力を得て体を作り変えたのか?」
「肉体を変化させたことはないな。いくらかお前よりも逞しいのは、衰える暇がなかったという事だ。
体力や筋力だって10代の若者にだって引けを取らんぞ?」
「どうだか」
「自分の未来の姿が安泰だと知れて安心だろう?」
軽口を交わしながら、体を洗い終えた俺たちはゆっくりと心地よい温泉に浸かった。
思い切り足を延ばして浴場の縁に背を預けて寛ぐ。じわりと湯の温度が体に浸み込むようだ。
男も湯を掬って顔を拭い、髭を絞るようにして水気を払うと満足そうに溜め気を吐いた。
無機質な空間でひたすら試行錯誤していたのだ。知らず体が強張っていたようで、男はとろとろと眠そうな目を擦っていた。
「好きな事に夢中になっていたとはいえ、根をつめ過ぎるものではないな…少し眠くなってきた」
「この後食堂に行こうと思っていたんだが、食事はしないで帰るか?」
「いいや、せっかくだ。ワインを飲んで帰りたい。ああ、近くに宿泊施設を作ればもっと稼げそうだ」
商魂逞しい発言に少々呆れつつ、確かにここからテベル塔までは少し遠い事を考える。
飛べばあっという間だが、面倒なのは確かだ。
どの道、男が必要とすれば直ぐにでも建物や施設を作り上げるだろう。
風呂から上がり、上手い飯とワインで腹を満たした。
案の定テベル塔に帰るのが億劫になった男が、浴場施設の2階部分に休めるスペースを作り、寝椅子よりも簡易的な椅子…男曰くビーチチェアと言うらしいが、そこで一夜を明かした。
朝食に関しては浴場に併設されている食事処の厨房を借り、男が大いに腕を振るった。
「さて、早速ダンジョンに潜ろうか!ここのはお前の好きな指輪物語に出てくるようなTHEファンタジーな敵を用意したぞ。他のダンジョンではアブスターゴが出しているゲームをそのまま流用している。そっちは技もアブスターゴのゲーム仕様だから、心配ならまた練習しよう」
「アンタが作ったダンジョンは肩慣らしってやつか?」
「いいや、何作かオリジナルの物を造りたいと考えているので、あくまでメインはこちらだ」
ロムルスの旗の下の入り口から長いスロープを滑り降り、鉄格子の扉が並ぶ広場まで進む。
何日間も籠っていたVRルームとは対面に坐する鉄格子の鍵を開けると、曲がりくねった道の先に重厚な扉が現れた。
鉄格子を開けた鍵と同じ物でその扉を開ければ、そこは武器庫のようだった。
壁に立てかけてある様々な形の武器や防具を見渡す。
一際大きなクローゼットを開けてみれば、またそこは大きな衣裳部屋となっており、アサシンローブやテンプル騎士団の鎧は勿論、あらゆる衣装がズラリと掛けられていた。
「どうだ、見事だろう?コスプレも出来るんだ。ここの世界観はファンタジーを売りにしようと思っているから、エルフォやナーノのような見た目になれる衣装を整えている。世界観的には我々の衣装も合いそうだと、そのまま揃えてあるぞ」
「………このタッチパネルは何だ…」
入り口脇にある液晶に触れると、俺の目の前の中空に半円形のスクリーンがいくつも現れた。
スクリーン上にはきっとこの部屋の衣装だろう、それが並べられていた。
人差し指でそのスクリーンの衣装を指せば、指の動きに反応してクルリと衣装が回転した。
試しに大きく指を横に引けば、衣装の表示されたスクリーンが横に流れていった。
「音声認識もするから、自分が着たい洋服のジャンルを言えばいくつか選んでくれるぞ。
例えば、エルフォ長のローブ」
男がそう言うと、目の前のスクリーンは真っ白で金糸の刺繍を施された美しいローブや朝焼けのような淡い紫のローブ、雫を湛えた新緑の若芽のような色の滑らかなローブなどがピックアップされた。
真っ白なローブに人差し指でちょいとつつき、そして了承を伝えると、目の前の衣装棚が大きく揺れた。
目の前にあったスクリーンが消えて、衣服が脇に引っ込み、かと思えば奥から先ほど選んだ白色の衣装がトルソーに掛けられて俺の目の前まで進み出された。
男は丁寧にその衣装をトルソーから外すと、俺にその衣装を差し出した。
「中に入ってじっくり選ぶのも良いが、こうして簡単に選ぶ事も出来る。勿論、ここのクローゼットにランダムで衣装を選んでもらう事も出来る。ここの扉を潜れば自動で体型をスキャンしてぴったりの物を出してくれるんだ」
「一人で随分と楽し気な事をやっているじゃないか」
蚊帳の外にされていた事に少しだけ面白くない思いがする。
思わず恨みがましい目で男を見つめれば、気まずげに目を逸らした。
「私は剣士の格好にでもするかな。アラゴルンだ。格好良いだろう?」
「俺がアラゴルンにする!アンタはホビットの衣装でも着ていればいいだろ。それかこのローブでも着てろ!」
白い絹の上等なローブを男に押し付ける。
選ばれて出て来たアラゴルンのローブを取り、サイズを少しだけ直してから着替え用の小部屋へと向かった。
着用してから外へ出て、男が出てくるのを待つ。
男も俺より少しだけ間を置いて、灰色の魔法使いのローブを纏って出て来た。
「魔法使いか?いつものローブよりは地味だがあまり変わり映えしないな」
「エルフォのローブも着てみたんだが、こちらの方がしっくりきたのでな。魔法も使うから調度良いだろう」
武器も同様のシステムで適したものを選び、木製の扉の前へと立つ。
扉を開け放てば、深い森の中に立っていた。
「階層ボスを倒せば次のステージに行ける。このダンジョンはまだ作りかけでな、3ステージまでだ。作り込みとステージの追加などはお前の意見も聞きつつ追々な」
「剣士として装備も剣にしてしまったが、魔法攻撃を試すのには不向きか?」
「そうだな。実は身に付けるものによって攻撃にボーナスがつく。魔法も使えるが、お前のは剣士だから筋力がアップしている。ステータスオープンと唱えれば自分の状態を確認できるぞ」
森を索敵しながら慎重に進む。
周囲を見渡せる高い木の先端に駆け上がり、周囲をスキャンすると、500メートル先の岩場からオルコが数匹顔を出しているのが見えた。
「オルコの巣があるかもしれんな」
男に見た物を告げると、そう言ってにやりと笑みを浮かべた。
音を立てず森の中を駆け抜ける。
目的の岩場へと近づき、物陰から醜い数匹のオルコを伺うと、その奥に洞窟があるのが見えた。
大振りの剣を振り回すよりはアサシンブレードで静かに仕留めた方が良いと判断し、男が口笛でオルコを引き付けた瞬間に2匹を静かに仕留めた。
男は入口にまだ残っている数匹目掛けて小さなウィンドカッターを放つと、数メートル先に居た獲物は首を撥ねられ騒ぐことなくこと切れた。
近寄り洞窟内部を窺う。
耳を聳てながら少しずつ進むと、洞窟の奥に大きなスペースがあり、そこでオルコの集団を見付けた。どうやらそこで生活しているようだった。
男が掌に小さなファイアーボールを発動し、目配せで広場を指し示す。
炎で焼き尽くすジェスチャーをすると、俺は逃げ出してくるオルコを迎え撃つべく、剣を鞘から抜いて構えた。
男の掌から最大火力のファイアーボールが広場に向かって放たれ、中にいるオルコを見る見るうちに焼き尽くしていった。
俺が相手をする事もないのではないかと思ったが、鎧を着たオルコの一匹が男の火炎から逃れて飛び出してきた。
そのオルコの鎧の隙間を目掛けて、申し訳程度に雷を纏わせた剣を振るった。
まるでチーズをスライスするように、すっぱりと胴と首が離れ、刃から零れた電撃が、パチパチとオルコの死体を電気で覆った。
そのまま死体は発火して燃え尽きると、炭のような黒いものが地面に転がった。
炎から逃れて来た残党を始末し、洞窟内のオルコは全滅となった。
初っ端のクリーチャーとの戦闘で、随分と派手に炎を放出した男に、MPは低くなっていないか確認をする。
「3分の1程減っているな。調子に乗りすぎたか。ここの階層がどの程度の規模かはランダムだから、少し節約した方が良いかもな」
「考えなさすぎではないか?それに階層ボスというのはかなり強いのだろう?」
「多分な。何が現れるかはランダムだが、一応プレイヤーのレベルに合わせた程々の強さの敵が出てくるはずだ」
念のため部屋に入って中を探索する。
煤焦げた洞窟内は、先ほどの男の攻撃で地獄のような暑さだったため、俺の力で壁を凍らせて空気を冷ました。
オルコが使っていた武器や武具も煤焦げており、価値がありそうにも見えない。
男はというと、洞窟内に他に出入り口はないかを壁を叩いて確認していた。
「森の中だが岩場も多いし、他にもオルコの拠点があるかも。そこにボスもいるかもしれない」
男の作ったこのダンジョンの説明では階層を移動すればすべてのステータスが回復する。
またボスを叩けばポータルが開くため、そこに飛び込んでしまえば、他の階層には他の階層の敵は入ってこれないらしく
、安全が確保できる。
途中退場も勿論できるし、そもそもこの男が管理者なのでどうとでもなる。
洞窟を出てまた探索を行う。
地上に出ても動くものはなく、豊かな森には必ず居るだろう鳥の姿さえ見えない。
その為に互いの息遣いすらも近くに聞こえるようで、逆に神経を張り詰めさせた。
カサリと俺たち以外の草を踏む音を拾う。
音のした方に速攻で忍び寄る。急な山の向こう側に武装したオルコが一匹無防備に歩き回っている。
俺と男は互いに頷き合い、オルコを揺動するために各々散って、陰から攻撃を仕掛けた。
男が太い木の上からオルコの足元に向かって氷の矢を放つ。足を貫くギリギリのところでわざと外して打ち込んだ。
急に襲ってきた矢に焦ったオルコが周囲を忙しなく見渡す。その瞬間に男が打った逆方向から弾丸のような石礫の雨を降らしてやった。
慌ててオルコがその場から逃げ出す。
あまり頭は良くないようで、オルコは簡単に自分の住処に俺たちを案内してくれた。
「随分大量に穴から這い出してきたな。もしかしたら早々に当たりを引いたかもしれない」
「あまり張り合いがないな」
「一般に開放した場合、まずまずなんじゃないかな」
思わず男を思い切り小突く。
男は困ったように笑って肩を竦めて見せた。
オルコの集団が辺りを探索しているのを尻目に洞窟へと忍び込む。
最初に入った洞窟とは違い、随分深くまで穴が続き、道が何方にも分かれて曲がりくねった複雑な構造をしていた。
洞窟の中には光る水晶がそこここを照らし出し、とても幻想的ですらあったが、醜い生き物がうようよと徘徊していて残念この上ない。
時折対面からやってくるオルコを物陰で待ち伏せし、アサシンブレードで切り伏せて陰に隠しながら進む。
魔法擬きの試し打ちや娯楽の狩りとは名ばかりで、やっていることはアサシンの仕事と変わりない。
仕事ではないだけで何故こんなことをしているのかと疑問に思い始めたあたりで大きな広場にたどり着いた。
それは下に大きく抉れたドーム状になっており、下方には一際体の大きなオルコが乱暴に仲間を殴り倒したり、聞き取りにくいガラガラ声で何かを叫び合って地獄絵図と化していた。
「体の一際大きいのが数体いる。というか、雑魚も大量にいるぞ。外に出て行った数もかなりのものだし、これだけを
相手にMPが持つとは思えない。ここは広いから火責めにする事も出来ないし」
「そうだなキプロスでやったように派手な爆発を起こせばパニックになったオルコがこぞって出口に殺到するだろう。
いくつか出入り口も塞いでしまえば恐怖して雑魚共は散る筈だ」
「爆発を起こす魔法なんて作っていなかったろう?」
「爆発擬きを作ってやればいいのだ。ウィンドとファイアーボール、ストーンバレットを組み合わせれば爆発擬きは作れる」
男の指示通りに男と反対側にある広場の入り口に陣取り、男の合図とともにストーンバレットを俺が、男が特大のファイアーボールを放った。
タイミングを合わせることで、土煙と飛び散る火を纏った石礫が弾丸のようにオルコの体を貫き、男がウィンドで空気の層を作り、炎をさらに激しく燃え上がらせた。
激しくなる火力と同時にいくつかストーンバレットを発動させ疑似爆発を起こせば、オルコたちは途端にパニックとなり、一斉にまだ潰れていない出入り口へと殺到した。
リーダーと思われる大きな体をしたオルコは、統制を取ろうと怒り狂った醜い叫び声をあげ、周囲のオルコを掴んでは引き戻し、または殴りつけて従わせようとした。
しかし我先にと広場から逃げだすオルコの数は多く、思うようにいかないことに怒りを爆発させたのか、そこで殺戮が繰り広げられた。
これでは俺たちが手を下すまでもなく、ここを一掃できるのではと見物をしていると、俺の対面の男がニヤリと笑みを乗せ、
下方に向かって何やら細工を始めたようだった。
男の視線を追って下を見る。
視線の先に居たリーダーのオルコに、低い位置から石礫が勢いよくぶつけられた。
その勢いや凄まじく、一撃で頭部を粉砕して1匹が倒れた。
その他にも同じように石礫を男がいる逆側からまるで爆発によって弾かれたように大きな体をしたオルコに当てていた。
雑兵達が打倒され傷付いているリーダーの姿を認めると、一斉に群がり殺し合いを始めた。
そんな地獄絵図を見下ろして、確かに魔法擬きは使っているが、どうにも思っていたのと違う戦闘に思わず顔を顰めた。
広場の中央に蒼白い光を放つサークルが現れた。
男の居る穴へと合流し、一緒に下を覗く。まだ広場には多くのオルコが押し合いへし合い広場に残っていた。
「下の雑兵を蹴散らしてくれるか?MPが足りるだろうとは思うのだが、心許ない」
男のMPは半分より下程度の減り具合だったが、俺は殆ど減っていなかったのでポータルの周り以外に奈落のような落とし穴を作り、またポータル上に残った、崖の縁にしがみ付いていたオルコをウィンドで吹き飛ばし一掃した。
高い位置からポータル目掛けて飛び降りる。
難なく着地して、二人光の中へと入ると、より一層輝きが増した。
一瞬の浮遊感の後、周りの景色が変わり、足元からの強い光が収まると、次のフィールドへと転移されていた。
「座標は変わっていないな。転移したというよりも次のステージに景色を切り替えただけか」
「無粋にコードを確認するんじゃない。楽しむにはまず雰囲気が大事だろう?」
「さっきの浮遊感は一瞬だけ座標をずらしたんだな」
「だから!」
向学心から分析した事を口にすれば、男が額に手をやり、台無しだと言わんばかりにため息を吐いた。
しかし、次のステージも前のステージと然程変わりはなかった。
森の中という訳ではないが、目の前には草原、後方は森が広がっていた。
多分、相当遠くだと思うのだが、とてつもなく巨大な灰色のモノがのっしのっしと二足歩行で移動している。
その周りを狼にしては大きな黒いモノが、その巨大なものにちょっかいをかけて、巨大なものは鬱陶しそうに手にした
棍棒を振り回して追い払おうとしていた。
「…あれは?」
「トロッルにリカントロポだな。今度こそ狩りらしくなるだろう」
気を取り直した男が訳知り顔で胸を張る。
「なぁ、アンタこれ本当に面白いと思っているか?」
「…言いたいことは分かるぞ。さっきのステージは確かにイマイチだった。だが初級だし、肩慣らし程度にはなっただろう?
これからダンジョンのランクを上げていけば魔法無しでは進めないだろうし、面白くなっていくはずだ。デフォルトは3ステージまでだが、フィールド自体は12種類作ったんだ」