@umeshu0876
悠久とも思えるような虚無を越え、古き寝床が開いた。
棺より溢れ出た魔力が世界を変容させ、わずかに残されていた石造りの城壁が崩れ落ちる。
まるで絡みつく蛇のような蔦が、最後の抵抗のように崩れる石を掴み、千切れた。
夜の王はゆっくりと眼を開き、周囲を見渡す。
「えっここどこ?」
夜の王は偉大である、彼女は現状の異常さにすぐに気づくことが出来た。
かつてこの地は彼女を崇め、尊敬する者たちで溢れていたはずなのだ。
だと言うのに、今この地にあるのは朽ちた城跡と豊かな自然ばかりである。
「ダメよ、落ち着きなさいジニー、またミファに嘆かれてしまうわ」
夜の王は偉大である、故にすぐに自らの頬を思い切りつねり、痛みを堪えて頬を撫でながら落ち着きを取り戻すことが出来た。
なお、ミファというのは彼女の従兄弟のあだ名である、彼女をよく慕っていたが、今この場にはいない。
「というか、なんで全裸なの私!?」
夜の王は偉大だが全裸は恥ずかしかった。
彼女が寝ていた棺の中には、恐れ多くも彼女に纏われていたであろう豪華絢爛な衣服だったものが見つかる。
夜の王であれば悠久の時に耐えることは出来るが、彼女の纏っていた服は夜の王ではない。
全裸であるが故、彼女はここから動くことが出来そうになかった、夜の王も威厳が大事なのである。
「ど、どうしよう、どうしたらいいの、こんな時にウィズがいれば……うぃず……うぃずどこぉ」
ウィズというのはウィザードという名前の使い魔の略称である。
夜の王の帰還を、悠久の時の中ずっと待ち続けていた忠臣であり、こうして壁に擬態して夜の王を見つめている私のことである。
だが我が主よ、泣くのを我慢しなければ夜の王の威厳が保てないと思われる。
頑張っていただきたい。
「うぃずぅ……」
我が主は可愛いなあ。