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幕間

全体公開 8022文字
2019-11-23 23:58:40

 数日ぶりに全員揃い、リズットが作ってくれたフレンチトーストを食べ終えた面々は、怤藍に招かれ談話室に集まっていた。まだ食料の補充が追いついていないらしく、リズットは申し訳なさそうな顔で全員分のグラスにアイスティーを注いでいた。
 リズットが全員にアイスティーを配り終えたのをみて、怤藍はこの世界のことを語り始める。


 
 【日向に恋い焦がれた書き手は、影を踏まれる】
 
 さて、どこから話そうか。ことの始まりは、確か数ヶ月くらい前だったかな。あたしが彼シナリオライターの阿久津さんに反抗したあの日。
 
アイザック『…………(茶々は入れない方がいいよな、という顔でお口ミッフィーしてる)』
イヴァン「…………(静かに聞いてる)」
 
 結論から言うと、この世界の原型を作ったのはあたし。それを形にしてくれたのが、そこにいるプログラマーのアイザックさん。そしてここは『あたしが考えた物語の世界』であり、実在しない『バーチャルリアリティーの世界』。もしかすると、なんとなく気づいていた人も多かったんじゃないかな。
 現実世界では皆、病院にある冷凍カプセルの中で、コールドスリープになってるの。意識だけがこの世界にやってきている状態かな。ちょっと難しいよね。だから、夢の中にいるようなものだと思ってくれたらいいと思うよ。
 あたしは小説家見習いだけど、実のところは『阿久津さん専用のゴーストライター』らしいの。阿久津さんはお金と名声のためならなんだってする人で、この世界も彼が『とある理由』で用意させたの。それについてはまた後で話すけども。
 なんにせよ、あの人が何の罪もないりんごさんを操って、リズットやイヴァンさんを消そうとしたり、アイザックさんに迷惑をかけたりしてる。きっと今頃、あたしも濡れ衣を着せられてるんだろうな。
 あの人は酷い人だけど、阿久津さんを止められなかったあたしのほうが、もっと酷いよね

アイザック『……ニホンゴ、ヨク、ワカリマセーン。メーワク、イズ、ワカンナーイ。キニシナーイ』
 
 ……んふふっ。阿久津さんも大概だけど、アイザックさんにはもっとかなわないや。
 阿久津さんはね、いつもあたしに「お前の才能は、使える」って言ってくれてね?あたしにいっぱい小説を書く機会をくれたの。コンクールにも沢山応募したんだ。
 でも、あんまり上手く書き続けることが出来なかったみたい。事あるごとに、あたしの作品を見て阿久津さんが激怒するようになったの。なんかね?あたしが書いた物語の結末が、阿久津さん好みの結末じゃなかったんだって。何回書き直しても、あたしは阿久津さんの好きな展開にできなかった。
 
 それにあたしがやりたい物語の結末は、どうしても受け入れられなくてね。阿久津さん、何でかしらないけど、明るい『ハッピーエンド』ってものが嫌いだったみたい。最高の形でハッピーエンドにしたら平手打ちをされたし、無理矢理にでもバッドエンドにしたら「ぬるい」って言われるし、ある時は作品そのものを捨てられちゃった。

🍎「………………(アヒルチャンを持つ手がふるえている)」

アイザック『…………それこそ、気にしなくていいんだよ。物語の本質は自由にある。……書き手が満足する結末が1番だろうに』
 
 凄く悔しかったし辛かったけど、反抗したら家族にとばっちりがいかないか心配で、何も出来なかった。実はね、あたしのおうち、阿久津さんのおうちの使用人をやってる一族なの。あたしが阿久津さんに恥をかかせることは、親の顔に泥を塗ることになっちゃうの。
 実際あたしが「好きなものを書きたい」って言って駄々をこねたせいで、阿久津さんがあたしの従兄(いとこ)に手をあげたみたい。従兄はあたしのことすっごく心配してくれて、こっそりあたしにあいに来てくれたのに、その日以降来てくれなくなっちゃったの。
 そんな生活が何年か続いた後に、日本の高校に留学してきたリズットと知り合って、阿久津さんに認められた数少ないあたしの作品を読んでもらったんだ。この子はね、学校の教育実習であたしのいる病院に来てくれたの、最初は全然喋ってくれなかったけど、小説読んでる時は、年相応のリアクションを見せてくれたんだよ!
 けどそれを読んだリズットが、あることに気づいたんだよね。確か

 「怤藍の知らないところで、怤藍の作品と全く同じものが、とある雑誌に掲載されていたってことだろう」

 そうそう、それだよリズット。
 あたしは雑誌のために小説を書いたことなんて、一度もなかったの。リズットがたまたま雑誌を持ってたからそれを読んだんだけど。そしたらあたしが書いた小説が、阿久津さんが書いた小説として、そこに掲載されていたの。
 
🍎「盗作…………!?駄目、それは駄目だよ…………(怒りで震えが止まらないアヒルチャン)」

 「自分の支配下にある怤藍に作品を書かせて、それをあたかも自分が書いたかのようにふるまう男。それがあの最低野郎の正体です。自分が世間に受け入れられるように、立場も体も弱い彼女の才能をまるごと奪い取ろうとしたのです。やっぱりあの猿に満たない低脳なゲス野郎、僕は嫌いだ虫唾が走る

 うんご覧の通り、リズットは阿久津さんのことが大っ嫌いみたい。もしかしなくても、皆阿久津さんのこと苦手になってるよねあはは……
 あたしは書き手として皆に受け入れられるものを書きたいし、そうでなくても、書いている側が本当に伝えたいことを書きたかったの。あたしにしかかけない世界を書きたい誰かの手でめちゃくちゃにされた世界で、バッドエンドになるのは嫌。わがままかもしれいけど、あたしは阿久津さんに反抗して、自分の書きたいものを書くようにしたの。
 そうしたら阿久津さんがすごく怒って、あたしが普段お世話になっている主治医の先生に『人の免疫力を餌に肥大する、強力な未知の感染ウイルス』を開発させたの。
 先生は拒否したけど、阿久津さんはお金と権力がある人だから、先生やその家族を潰すのも簡単だったの。先生は「ウイルスを作らないと、奥さんが危ない目にあう」って言われたらしくって、泣きながらウイルスを開発させちゃったの。
 それで、阿久津さんはそのウイルスの感染力をテストするためにリズットを利用したの。

 「あんな奴に利用されるのは、まっぴらごめんだったのですが所詮わたくしは『元・女性』です。力の差では敵いませんでした。元々『とある理由』でまともな食事をとっていなかったことと、どうあがいても『本物の男性』のような力強さがなかったことが、仇となったようです」

🐤「アホツク……
🍎「アヒルチャンシャラップ!!(小声)」
 
 それでリズットは、そのテストのせいで重症仮死状態となったわけなんだよ。意識だけはこの世界に上手く飛んできているけど、この世界でリズットが死んじゃうと、現実世界のリズットは永遠に目を覚まさなくなるの。
 阿久津さんは、あたしの弱みを握ったと思って「自分もこうなりたくなければ、才能をよこせ」って言ってきたの。
 ほんとはね、阿久津さんに才能をあげてもいいやって思っちゃったの。けどそんなことしたら、絶対リズットに怒られちゃう。リズットは、あたしが書いたものがどんなに下手っぴな文の羅列でも、ちゃんと最後まで読んでくれた。
 だからあたしは、阿久津さんに言ったの。
 
 「あなたにあげる才能なんてない。リズットと同じ目に合わせたいのなら、どうぞあなたの好きにして」って。

 たぶんそれがいけなかったんだと思う。
 阿久津さんはあの後、あのウイルスを世界各地の医療機関に密輸したの。世界の医療機関は、何も知らずにそのウイルスを小説っぽくいうと、パンドラの箱を『開けてしまった』の。
 このウイルスの特効薬がまだ開発されてない状態だったのと、爆発的な感染力のせいで、そのウイルスに触れた人々が瞬く間に死んでしまった。これが後に『新手のバイオテロ』として世界を震撼させて、メディアで結構報道されるようになったの。
 阿久津さんは「お前が反抗したから、お望み通り好きにさせてもらった」って言って、このバイオテロの全責任をあたしに押し付けてきたの。そりゃそうだよね。あたしが最初から言うことを聞いていれば、こんなことにはならなかった。あたしのせいだよ。あたしがあたしが全部悪いの!!!
 
アイザック『オレ知ってるぜ。そーいうの責任転嫁って言うんだ。ところでなんでこの四字熟語は嫁って漢字を使うんだろうな。嫁は大事にして』
 
🍎「…………ふらんちゃん……

 「責任転嫁阿久津のやりそうなことだ。ところで貴女のことだから、罪の意識に苛まれて、首をくくろうとしたんじゃないのか?」

 そうだよ。あたしは最初、死のうとした。あたしが死ねば、責任が取れると思った。
 けどね、それでも生きているのはここにいる皆のおかげ。
 ねぇ皆、知ってる?ここにいる搭乗人物のみんなは、あのウイルスに感染しても【奇跡的に生還することができた人たち】なの。代償として、皆余命宣告を受けなくちゃいけないくらい体が弱くなっちゃったけど。
 あのウイルスに感染してもなお、生き残ったのはあなたたちだけ。
 だからあたしは、希望を捨てないことにしたの。あたしね、阿久津さんには内緒で、先生たちと協力しながら皆の特効薬を作ろうとしたの。そうすれば、皆の余命宣告もリセットされると思って。

 でもやっぱり、そう簡単にはいかない。先生が特効薬につかうものを発注しているのが阿久津さんにバレて、絶体絶命のピンチになったの。そしたらね、阿久津さんにこんなことを持ちかけられたの。

 「あのバイオテロにより余命宣告を受けた者を寄せあつめて、没入型シアターを公開させろ。余命宣告を受けている連中を物語の『搭乗人物』にして、一つの物語一つの舞台を作れ」ってことを。
 あたしがその土台を作り、あたしと阿久津さんが雇ったプログラマーさんアイザックさんが形を起こす。
 
アイザック『(ヒラヒラ~っと手を振った)』

 物語のコンセプトは『死と隣り合わせの運命からの敗者復活劇』って感じ。
 かつて存在した修道女、マザーテレサが作った『死を待つ人の家』がある町『カルカッタ』をモチーフにした、死者が住まう架空の街『カルカタッタ』を目指して、皆が本当に生きたい理由を見出す。皆のことだから【まだ死ねない理由】があるかもしれないけど、あたしとしては皆に【生きたい理由】も見つけて欲しかったの。
 「まだ死ねない」と思うことと、「生きたい」と思うことは、全然違うことなんだよ。
 
🍎「生きたい、理由………………
 
 あたしの狙いはそれだった。この世界は、あたしにとっては『賭け』なの。ギャンブルとかパチンコとか、そんなものの比じゃない。皆の命と、あたしの人生がかかっているの。
 
イヴァン「……生きたい理由、か。……
 
 ねぇ皆、一つ教えて。皆、生きたい理由はある?
 
パピヨン『…………生きたい、理由、………?』

アイザック『オレはあるぜ~!!宝くじ当てて仕事辞めて金持ちニートになる!!!!!!!!』
 
 おかねもちかぁいいね。それも素敵だね。
 
 どんなにささいなことでもいいの。生きたい理由がそこにあるのなら、あたしは嬉しいな。

イヴァン「弟たちの行く末を見守っていたいなぁとは思うけど、それくらいか……あぁ、あと親友達の行く末も気になるな」

アイザック『ないならオレが作ろうか?金がないとかだったら宝くじ当てるまで待ってもらうことになるけども』
 
 弟さんかぁ、いいね。あたしも妹と兄さんといとこに会いたいなぁ
 

希更「あたしちゃん、また歌いたいな……色んなところで、色んな人の前で歌ってみたい……!」
 
 あたしも希更ちゃんの歌がききたいな。ちゃんと聞くまでは、しっかり生きなくちゃ。
 

パピヨン『私は幸せにならなきゃいけない、から。……生きたい。』
 
 パピィちゃんは幸せになれるよ、きっと。あなたはきっと、ここで大きなものを手に入れられたはずだもの。
 

🍎「私、は……………………
🍎「どうだろう…………分かんない、何したいんだろう……?お絵描きはしたいけど………………
 
 りんごさんの絵、あたしまだまだみれてないの。だからもっと長生きして、沢山かいて欲しいな。
 


 さて、続きにもどるね。
 阿久津さんはね、皆が淡々といろんな街に行って遊ぶだけの展開に、物凄くつまらなさそうな顔をしてたの。けど「もう長くない」と言われた人が、白い箱庭みたいな病室で余生を過ごすのは、果たしてその人の『幸せ』になるのかな。あたしとリズットは、そんなの「おとといきやがれ」って思うけど。
 
 とにかくそのシアター演目かな?それを作るためのクラウドファンディングも立ち上げたし、この演目が成功して利益が出たら、特効薬の開発費を阿久津さんが出してくれるって。それから、これがうまくいけば、あたしのことも自由にしてくれるとも、言ってくれたの。
 クラウドファンディング実は阿久津さんの作品を全部あたしが書いてたのが公になって、今ちょっとプロジェクトが失敗しつつあるんだよね。ピンチだけど、先生はこうしてる間にも頑張ってくれてるはず!だから、上手くいくことを信じないとだめ
 それに先生の『助手』さんが、実はあたしたちに『協力』してくれてるの。この話もきっと阿久津さんに見られているだろうけど、あえて言ったよ。誰なのかは言えないけど、大丈夫。助手さんもあたしたちの味方。
 あたしたちには、頼れる仲間がいっぱいいるから、何があっても逃げちゃダメ負けちゃダメなんだ!!
 
 いい忘れてたけど、皆がいるこの世界はね、今『観客席』から『配信』されてるの。この世界での1日は、現実世界では30分くらいにおさめられているんだっけ?わかんないけど。
 
アイザック『おー、そんぐらいそんぐらい。精神と時の部屋っつって伝わっかな。だいたいそんな感じ』
 
 今、現実世界では真夏日だよ。すっごく暑い。一昨日最高記録更新したんだって。
 日によってまちまちだけど、見られているから軽い気持ちでよくないことは出来ないの。
 真夏日だけど、先生とアイザックさんと、あっち側のリズットとけてないかなぁ……
 
アイザック『冷房はいい文明』
 
 「いやむしろ冷えきってるから、とけてないと思う……この間まで、こっち側で冷蔵庫に入れられてたらしいから」
 
 おぉコメントに悩むけど、大丈夫そうで安心したよ
 
 阿久津さんや観客席の皆が、あたしたちの監視役。もちろんアイザックさんも、リアルタイムで見守ってくれてる。もしかすると、阿久津さんはこの物語を没落させないために『あんなこと』をしたのかもしれない。でもだからといって、やっていいことと悪いことがあるよね
 
 あたしはね、せめてみんなを助けたかった。嫌なものを「嫌」といい切れなかったし、半信半疑でこの話を受けて、アイザックさんにもいっぱい迷惑をかけた。昔あたしの物語の世界で旅がしたいって言ってくれたリズットも、この際だからって理由で巻き込んじゃった。この世界に【ブーケエクスプレス】って名前の寝台特急があるのは、それが理由だよ。
 
 「なんにせよ、僕の夢を叶えてくれたんだ。ここじゃない世界にいたときよりと比べたら、ここなんて天国だ」
 
 そういってもらえるのなら、あなたの親友として嬉しいことはないよ。
 実は、搭乗人物を呼び寄せたのも阿久津さんなの。どういう形で彼が皆を呼び寄せたのかは知らないけど、きっと阿久津さんのことだから、皆を騙すような形でやったんだと思う。ごめんね、皆。結局はあたしが元凶だから、もしかすると、あたしがこの世界の黒幕なのかもしれないね。

 最初はアイザックさんがやっていることの見よう見真似で、『メイズさん』を作り上げて間接的に皆の手助けになれたらな、って気持ちで皆の見守りだけをしていたの。
 メイズさんに姿がないのは、作り物の存在だからだよ。メイズさんの話はまぁ、いつか教えてあげる。今はまだ内緒。

 何やら阿久津さんは、アイザックさんにあることないことを吹き込んで、この世界を間接的にめちゃくちゃにしようとしてたみたいだね。けど、もう阿久津さんの好きにさせちゃだめ。
 あたしのことは許さなくていいから、どうかお願い。搭乗人物同士で、責めたり傷つけあったりしないで。
 あたしができる罪滅ぼしならなんでもする。もう誰も傷つけさせない。あたしが全ての責任を背負う。

 みんなの幸せが、あたしの幸せなの。
 
 そうだ、ちょっと個別にいいたいことがあるの。長くなっちゃうから、ここでは代表して、アイザックさんと希更ちゃんに言いたいな……。だめ、かな
 
イヴァン「俺は構わないけど……聞かれて良いことなのか?」
 
 皆にも聞いてもらって大丈夫だよ。えっとイヴァンさんにも、実はいいたいことがあるから、あとでお部屋いくね。
 

アイザック『うん?なになに?謝罪以外ならなんでもきいちゃうぜ』
 
希更「あ、あたしちゃんにも?いいけど……
 
 まぁそう構えないで。大丈夫、難しいことは言わないから。

イヴァン「そっか、りょーかい。いつでも待ってるよ」
 
 ありがとうイヴァンさん。えっとまず、アイザックさん。
 
アイザック『ほーい』
 
 アイザックさん、あなたにあたしの背中を預けます。あたしもあなたみたいに、かっこよくなりたいな。いつもありがとう。この物語が終わるまで何が起こるか、あたしでもまだわからないけど、最後まであなたに見守ってて欲しいな。
 
アイザック『……オレはかっこよくないよ。ただのナマケモノさ。……だがここでお礼を蹴ったらそれこそかっこ悪いからな。だからこう言おう。Vous êtes les bienvenus!(どういたしまして!)』

 次に希更ちゃん。この世界を作ったのはあたしたちだけど、この世界の主人公に選ばれたのは貴女。そう遠くないうちに、貴女に大事なものを託すと思うの。
 
希更「大事なもの……?」
 
 そう、とっても大事なもの。そう身構える必要はないから大丈夫。けれど、あたしやアイザックさんにもしものことがあれば、貴女に皆を導いて欲しいな。
 
 希更「……うん、分かった。あたしちゃんに任せて。折角選ばれたんだもん。その分の役目はちゃんと果たさないとね。
……だから、心配しないで任せちゃってよ(にっこりと微笑む)」
 
 それからこの世界から無事に帰ってこれたら、この間二人で言ってたコンサート、やろうね。

 希更「もちろん!ぜったいぜったい、約束だよー!」
 
 うん、約束。あなたと果たせるの、楽しみにしてる。

 
 あたしから、これだけ。ごめんね、皆。話聞いてくれて、ありがとう。


 怤藍はそう言って席を立つと、フラフラと自分の部屋へと戻っていった。
 彼女の背中を眺めながら、搭乗人物たちはそれぞれ何を思ったのだろうか。
 ブーケエクスプレスは、まもなくカルカタッタへと到着する。カルカタッタで待っているのは一体何なのか。そして、この物語の結末はどうなるのか。
 
 それはまだ、誰にもわからない。


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