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[信玄P♀]らしくない強引さ

全体公開 1 739文字
2019-12-09 12:45:14

「冷えてるぞ」
「寒いからです」
信玄さんが飲み会の帰りにスマートにPさんをお持ち帰りするお話です。

Posted by @toasdm

 冷えた空気に撫でられた頬を、後ろから伸びてきた手がふわりと包む。
「酔ってるんですか?」
「そんなに飲んでない」
 ゆるい口調と手の熱さ、それと人目を憚らない誠司の誠司らしくなさに、彼女は跳ねた胸を押さえながらできるだけ、冷静に聞いた。
「冷えてるぞ」
「寒いからです」
「なら」
「うわっ……
 こうすればあたたかい、と彼女を包むのは、普段なら誠司の羽織りやマフラーのはずだが、今はアルコールがふわりと香った誠司自身だ。
「これで、あたたかい」
……酔ってるんですね」
「そうかもしれんな」
 ふっ、と笑った誠司の、機嫌のいい顔が好きだ。底冷えのするほどではないにせよ、雪の予報は当たるであろうキンとした空気に曝された体を、包む温もりは優しさだ。
「このまま」
 雑踏と、こちらもへべれけに酔っ払った事務所の仲間の集団から少し離れた喧騒とを割って彼女にだけ届く、柔らかな声。
「攫ってしまいたい」
「酔ってるんですよね」
 耳元の誠司の声に、彼女は誠司らしくなさを見る。酔ってるぞ、と少し笑って、誠司は彼女を徐々に、仲間の集団から引き離す。
「あの」
「どうせ誰も気付かん」
 羊の群れから獲物を見定め、牙を突き立てるように。誠司は彼女をじわじわと攫う。
 酔ってるからな、と指したのは、いつの間にか二人がいなくなってることに気付かない彼らのことなのか、それとも、誠司自身のことなのか。

 もっと、あたためたい、と。

 寒さのせいにして甘えるように頬をすり寄せる誠司の、誠司らしくない強引さを知っているのは自分だけだ、という優越感が、彼女の首を縦に動かす。

 そういやあいつらいつも気がついたらいないよな、と誰かが言う声を、二人は背中で聞きながら夜に溶けていった。


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