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金子一馬画集8感想+金子先生の絵柄考察

全体公開 1 18 7990文字
2019-12-14 12:17:08

アマゾンのレビュー通り、パッケージやポスター、ゲーム誌の表紙、攻略本の挿絵、ラフ画などの類は収録されていません。でもこれは画集1~7も同じ。そこはもう画集10の「補足」に期待するしかありませんので、今回はマイナスポイントとして数えない。
過去の投稿に『ペルソナ20フェスの罪罰キャラの絵に違和感を感じる』を書いたことがありますので、その時使った絵はどこからなのかやっと謎が解けました。

感想としては、プラスもあり、マイナスもある、贅沢を言えば両方のバージョンを載せて欲しいところかな
USAバージョンも載せたぐらいページに余裕ありそうのに。



以下は個人的にプラスポイントとマイナスポイント

プラスポイント:
人間キャラは前のバージョンよりとっつきやすい、肌の温かみを感じる。最初からこっちにすればマネキンと言わずに済むでしょう。
デジタル絵画に移行した以降の独特な質感の肌が嫌いな人多いようで、この修正はわからなくもない。けど、罪と罰はもう何十年前の作品、今さら原絵を修正してどうするって感じもあります。

若い女性キャラは前より可愛くなった感じ(リサ、マキ、トリッシュ辺り)。

ご存知の通りデジタル着彩は先生本人ではなくアシスタントの副島さん、白石さんに任せた場合が多いので、絵のディテールは両氏の判断に任せることも多いと思います。
(塗りが終ったら金子先生にチェックしてもらって、最終調整を入れるみたいな流れ)
また90年代頃のデジタル絵画はフソトもハードも黎明期であり、今のように誰でもペンタブがあれば気軽に描けるような環境ではありませんので、サマナーから罪までは塗り方を模索している途中だった時代という感じもあります。そして罰と魔剣Xで塗り方を熟成させ、金子一馬の絵柄の特徴として定着していた。それ以降の作品はアバドン王を除くと全部この塗り方。


*罪と罰の舞耶の塗り方を比較して見れば分かる。



また、人間の色への印象は背景との対比に依存するもの、同じ色でも背景が違えば印象も違う。

90年代頃の金子先生の絵は、基本的にどれも「夜」を前提として黒や濃い色を多用するタッチ。PS版の公式サイトも背景が黒。
本人曰く「都会に限ったことではないけど、人の集まる場所には昼の顔と夜の顔がありますから、昼はともかくとして夜というか”闇”の部分のリアルさを描くことで、よりインパクトのあるメッセージを発信できるのかな」だそうです。
*同じ絵でも「夜」と「昼」ではっかなり印象が違います。だから90年代頃の金子先生の絵を見る時ぜひ「夜」前提で見てください。

でも、画集はどれも背景が白一色。だから画集の場合オリジナル版より今のバージョンのほうが見えがよい可能性も十分にありえます。


ただ、オリジナルバージョンも罪罰という作品の一部として、金子先生の絵の歴史の一部として大切に扱うべきものだと思う。
そしてこれが公式画集だからもしかして今後公式でオリジナル版の絵を見る機会もうないかも
だから、両方載せてよって話。


マイナスポイント:
人間としての温かみが増えた反面、金子先生の絵の個性の一つ「白磁の彫像みたいに綺麗な肌」がなくなったので惜しい。なのであの独特な質感の肌が好きな人にとってはマイナスポイント。
人間としての温かみのある絵は、ゲームで使われている副島さんによるアニメ塗りのバストアップ絵がそれに該当するので、わざわざ金子先生の元絵を修正しなくても

金子先生の元絵と副島さんによる実際ゲーム中で使われている絵は、ある意味原作とアニメ化する際の「アニメキャラデザイン」みたいな関係。


みんなちがって、みんないい。アニメ化する際もわざわざ原作のタッチを修正しないでしょう。

また、金子先生にとってこの彫像のようなタッチは自分の美学をもって磨き上げてきたもの。
決して万人向けではないが、万人の絵師さんの作品の中でも一目で分かる「これ金子一馬のタッチだ」という個性を持っている。
だから、せめて個人作品集の中で、その美学を最後まで貫き通してほしいものですね。


-----キャラへの感想------
達哉(罪ver.) ○ 頬骨の影の修正によってオリジナル版の少々精悍な顔つきより柔らかい感じ。よく考えたらまだ18歳なので歳相応かも。

リサ ○ 好みの問題。こっちの方が今風な美少女っぽい。でもオリジナル版は白人の「彫りの深い顔」という特徴をよく表現した、肌も日本人キャラより白い。

栄吉 △ 学ランのシワがスーツみたいになっておかしい学ランに使う生地はスーツのよりシワの多い素材だからシワないと不自然に見えてしまう。

舞耶 ○ 好みの問題かな。舞耶の普段の明るい印象から考えるとこっちも悪くない。

ゆきのさん △ 修正ver.では鼻筋の高さがわからなくなってる、美少女キャラみたいに鼻がチョンと付いてる感じ。自他公認の美少女ではないキャラだったのに。
でもボタンホールに関しては修正ver.のほうが正しいと思う。これは多分PS版の時金子先生のチェックミス、だって白石さんの証言によると金子先生のチェックかなりいい加減らしいw

淳 △ 学ランのシワがスーツみたいになっておかしい。淳だけではなくすべてのキャラの唇の色がオリジナル版より薄くなってるので好みの問題。

トリッシュ ○ オリジナル版より美少女キャラ。特に膝の塗りが前より自然に見える(そもそもオリジナル版の膝の線は影の指示っぽい、罰の塗り方だとこういう線は仕上げた絵に残されない)

うらら△ 化粧美人って感じが足りない気がします。モデルの江角マキコさんの顔から考えると、もっとしっかりした鼻筋のはず。

克哉 ○ 好みの問題かな。 確かにオリジナルの方は多少顔が怖い印象、兄さんの人柄を知らない人から見れば『赤い眼鏡にダークスーツの刑事さん』ってあんな怖い雰囲気でしょうね。しかしこれはパオフゥも同じ、修正ver.の平たい顔がちょっといただけない。

パオフゥも △ オリジナル版の胡散臭いさ全開な感じが好き。

南条くん ○ 好みの問題。 オリジナル版の顔がより大人っぽい、修正ver.はお坊ちゃま度アップ。

エリー △ 大人キャラの中エリーだけ口紅が消されて、モデルさん設定なのにノーメイクみたいになってるリサと同じ白磁の肌担当なので普通の肌色になってて惜しい。

達哉(罰ver.) △ ゆきのさんと同じ鼻筋の高さがわからなくなってる、罪の修正ver.はちゃんと鼻筋の影を描いたのに。 髪の色も色素が足りないみたい。あと肌の色白すぎて女性キャラみたい。

ブラウン(罰ver.) ○ あまり変わらない。

レイジ(罰ver.) △ 神取もレイジも彫りの深い顔だからオリジナル版の方が好き。 肌の色白すぎてレイジっぽくない。異聞録とオリジナル版の神取兄弟は他のキャラより深い色だったはず。

マキ(罰ver.) ○ オリジナル版より美少女度アップかも。オリジナル版の人形みたいな顔も好きだけどよく考えたら罰のマキは理想のマキと同化したから異聞録のエンディングのあの顔グラと同じ明るい感じになったはず。


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余談一

「それ以降の作品はアバドン王を除くと全部この塗り方」ってのは実は今回の陰影がほとんどなかった感じすごくアバドン王っぽい。



でも、好みの問題ですが、私はアバドン王より昔の作風が好き。リサやアヤセのような少女なら分かるけど、大人キャラはやっぱり鼻筋の通った顔のほうがよい、男性も女性も。

鼻筋の影やほっぺの影に注目してください。これがあれば顔の立体感を出すことができる、女性キャラだって例外ではない。



また、個人的にアバドン王の頃の塗り方の劇的な変化にちょっと不自然さを感じます。
これまでのシリーズはデジタル絵であれば必ず共通的な塗り方もあります。
例えばデビルサマナー、異聞録とハッカーズの人間キャラの立ち絵はセル画塗り、でもポスターは罪罰と同じ塗り方。
真3からツールをphotoshopからPainterに変更した、それでも陰影のつけ方は罪罰と一緒。
アバドン王の頃のサラっとした感じはサマナー頃のセル画塗りでもなく、むしろ昔のマーカー塗りに近い感じ。

だから、これはあくまで私の推測ですが、アバドン王の頃の作風の劇的な変化は、金子先生が求める美学というよりもファンの声に応じて「じゃあ今回はデジタルでマーカーっぽい塗り方を見せます」ではないかな。


だって金子先生、実は見た目のイメージに反して結構繊細な人っぽい。
絵の専門学校に行って技術を勉強する機会がないから、「自分には技術がないから頑張るしかない」ことを常に意識してる。
*色彩王国インタビュー
ネット上の意見は怖くて見れない、でも結局ネット→若手のスタッフたち→金子先生の形で影響を受けていると思う。
*SJインタビュー
マネキン塗りよりも昔のマーカー塗りを望む声が多ければ、影響を受けないわけがないでしょうね。


ただ、アバドン王の後のSJ、そして現在まで最新作品の信長の塗り方を見る限る、やはり金子先生本人が求めているものはマネキン塗りの方だと思う。アバドン王の頃の作風は、ファンサービスみたいなものかもしれません。



だから今回の修正絵は、アバドン王の頃の作風に戻っただけでは?に対して、これはもうアトラスの社員さんだけが知っていること。
そもそもアバドン王の絵は元絵に修正を加えたケースではなく新規もの。
そして、金子一馬画集4(2017年)以降 ©Kazuma Kanekoという表記がなくなったので、今の金子先生は塗り方を修正したいでも著作権の関係でできないかも
そして公式の20周年絵を見る限り、罪罰の立ち絵だけではなくリメイク版真1、真2、ifの主人公たちも修正されたので、たぶんもうファンサービスの範囲じゃない。

うーんどうなんだろう?

*どう見てもオリジナル版のほうがイケメンでしょ。


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余談二 金子先生のタッチについて自分なりの考察
あくまで仮説なので参考として見てください、今では金子先生に確認を求める術ないから

金子先生のあの独特なタッチ、いわゆるマネキン塗りはどこからのものでしょか。
なんでデジタル塗り以降、悪魔も人間もみんなマネキンっぽく見えたのかな。
アトラス入社前の仕事はアニメーター、しかし他のアニメーターさんの絵があのタッチではない。
金子先生の特撮好きは有名ですが他の特撮ファンの絵があのタッチでもない。

結論から言いますと、あれは欧米の映画、ファッション業界、マンガからデザインの素材を集めて、一見とても西洋風なデザインをした金子先生の心の根底にある「和の心」によるもの。
つまり金子先生の美学の本質は和洋折衷、和の心に西洋の骨や肉。だからあんなに大正時代が好きかもしれません。


まずは陰影の付け方、特にあの上唇の黒色。これはたぶんアニメーターの仕事で付いた癖。
80年代のアニメは全部セルアニメだから、セルアニメの性質上どうしても黒い陰影を多用してる。
透明なセル画を何枚も重ねるて撮影するからどうして画面が暗くなり、その暗い画面の中で視聴者に「これは影です」を伝えるためには黒い陰影が一番見えやすい。
監督さんの作風にもよりますが、上唇のを黒く塗ったアニメ結構多いようです(特にOVA)





次は塗リについて、マネキンっぽく見えた理由の一つは、デジタル絵画の黎明期でPhotoshopのエアブラシを使ったから。
色彩王国のインタビューによるとあの頃のソフトはPhotoshop3.0、けっこう原始的なバージョンで今ではお馴染みのレイヤー機能はp3.0からやっと使えるもの。
当然油絵ブラシ、水彩ブラシとかもない、あの時使えるのはエアブラシのみ。

エアブラシだけだと、どうしても質感が単調になりがちで、肌も服もみんな金属っぽくでピカピカ。
仕方ないんです。あの頃の他の絵師さんのデジタル絵を見れば分かる、金属っぽくのは金子先生の絵だけじゃない。

*今見ると、むしろよくエアブラシだけでここまで表現したなと感心しました。


ちなみに、副島さんのインタビューによると、当時のアトラスにタブレットがないから、本来の予定はPhotoshop+マウスでセル画塗り。副島さんの進言で、エアブラシで塗るようになりました。
つまり、マーカー塗りからエアブラシ塗りにシフトした金子先生の絵柄の変化は副島さんの影響が大きいです。

あの頃のツールはエアブラシしかないから、金子先生と副島さんと白石さんのタッチを見分けることはとても難しい。誰が塗ってもピカピカになるからサインを見ないわからない、実際ペルソナ3初期の絵もエアブラシ塗りでピカピカ。その後は金子先生&白石さんがpainter、副島さんがSaiを選択したことで塗りを見分けできるようになった、これはもうペルソナ4の頃のこと。

もちろん、同じくエアブラシ塗りのペルソナ3の絵を見れば分かる、金子先生の絵がマネキンっぽく見えた理由は、塗りだけではない。



ここでもう一つの仮説を書きます。
最初のデジタル作品デビルサマナーから最新作品の信長まで金子さんの絵がマネキンっぽく見えた理由は、金子先生にとってこのタッチは自分の美学をもって磨き上げてきた答え。
つまり、金子先生の心の根底にある「和の心」によって、彼がずっと憧れている東洋の、古典的な美を自分の絵に組み込んだ結果があのタッチです。

そもそもあれはマネキンではなく彫像風です。
悪魔も人間もみな彫像として捉えて、ハイファンションで奇抜きな外見をしながら、彫像のように揺るがない、恒久的な美しさを見せてくれる。

1993年の真・女神転生ファイナル・ストーリーより金子先生のインタビュー


2013年の時金子先生の公式アカウントからの返答

一回だけの幻のアカウントですが、それで分かることも多い。少なくとも1993年から2013年までの金子先生は、仏像の美しさに感動され、仏像ばっかり見てることが分かった。



次はこれらの如来像、菩薩像の写真を見てください



私は仏教専門ではないので、あくまで素人視点。そこで私が見出した如来や菩薩像の最大な特徴の一つは、この三日月のような眉弓の表現ではないでしょうか。
リアル人間の眉弓と違って鋭い縁を持ち、明らかに彫り刻んで作り上げた感じ。
でも、だからか、リアル人間の顔と違って、静かで穏やかな、洗練された様式美を感じさせてくれる。

この特徴をPhotoshopのエアブラシで表現したら、こんな感じになる。



次は金子先生のキャラ(人間も悪魔も)の眉弓を注目してください





いかがでしょか。だから金子先生のキャラはリアル人間の顔と違ってどこか作り物っぽい。
しかも私はエアブラシのせいだと思わない、だってpainterに移行した以降もずっとこの作風。


だから私の結論は、金子先生の美学は仏教に強く影響され、悪魔も人間もみな彫像として捉えて、ハイファンションで奇抜きな外見をしながらも、彫像のように揺るがない、恒久的な美しさを求めているではないかと。


また、SJのこのインタビューの見てください、特に「写し絵」の部分を。

「メガテンの神や悪魔は人間の写し絵である」、だからどこか作り物っぽい、そして彫像は紛れもない人間の作り物。
そして黙示録のインタビューによると「人間キャラを考える時は、ある意味ウソを考える。熱いキャラの場合は冷たい目の解釈で『熱い奴はどういうことをするか』と考える」
キャラ作りはウソ作り、そういう意味ではキャラもまた人間の写し絵にすぎないでしょう。


躍動感あふれる現代のアニメ原画やイラストと違って、金子先生の絵はとても古典的、静かなら彫像のような雰囲気を持っている。



もちろん金子先生が古代ギリシャの芸術家レベルとは言いてない。ただ、彼の絵は古典への憧れる、そしてリスペクトに溢れることを主張したい。


確かに、これは万人向けそうな作風ではない。
「私が欲しいのは生身の人間キャラ、彫像ではない」という意見も理解できます。
絵柄に正解はない、あくまで好きの問題。

ただ、あくまで好きの問題だから、金子先生の絵柄が好きなファンの方たちには、ぜひ彫像の視点でもう一度先生のデザインを見て欲しい。
金子先生の美学の根底にある「和の心」を少しでも理解できたら、きっと金子先生も嬉しいでしょう。




*金子先生の絵と仏像の類似性は眉弓だけではなく、他にもいろいろあります。
後日資料が揃ったらまた金子先生のタッチ考察完全版を作ると思います。


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