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マクロスFの三角関係考察

全体公開 120 8156文字
2014-12-10 18:56:19

12月6~7日にかけて、某笑顔動画でマクロスFのTV版一挙放送がありました。

私も途中抜けてはいましたが、できる限り視聴に参加し、リアルタイム放映当時の気持ちを思い起こしながら最後まで楽しむ事ができました。

今回はマクロスF、およびマクロスシリーズにおけるテーマのひとつである「三角関係」についてのいち考察です。
資料としてはTV版と劇場版。それに考察の引用としては2ちゃんねるの三角関係考察・おさらいスレを参考にもしている点があります。

最初に、Fにおける三角関係の結末は、最後まで見た方はご存じの通りアルトとシェリルとなっています。
これは劇場版後編で初めてはっきりとした形で出たものでしたが、後にTV版でもアルトは恋愛の対象としてはシェリルで一貫していたことが公式で示唆されています。

これを踏まえた上でTV版を見直してみると、まず目についたのはミスリードの多さでした。
恋愛関係の場面では、アルトの視点ではなくシェリルとランカ、二人のヒロインの視点になっているものが多く、そうでなくても視聴者はヒロインの方に感情移入してしまう構図が多いんです。
公式としては狙ってやったことなんだと思います。Fにおけるテーマのひとつに「誤解」がありますので。

放映当時、私もそれにまんまと釣られました。アルトはシェリルとランカ、どちらを選ぶのかと。
何でこいつこんなに優柔不断なんだと。でも違ったんです。

アルトは恋愛に関しては終始一貫しています。というか、シェリルだったという結果が分かった上でTV版と劇場版を照らし合わせると、対になっている場面がいくつもあり、それがいい考察の材料になりました。
一見するとアルトはシェリルとは喧嘩ばかりでランカと親しいように見えますが、改めて見てみると、二人に対する対応や態度は残酷なぐらいにはっきりしています。
その生い立ちから、恋愛に踏み込むことに迷いがあったり、自分がどう生きるのか、空と舞台との間で迷う事は何度もあっても、恋愛で迷った事、二人の間で揺れた事はありません。

シェリルとランカに対する態度で一番分かりやすい例としては、6話と21話が挙げられます。

命の危機にある非常時には、アルトは命がけでランカを守ります。ですが、アルトは基本ランカでなくても、ルカなどの親しい人物やフロンティアの住民の命が危なかったら必死で助けようとする人間です。
そして平時においてはランカ本人から乞われない限り、もしくは第三者から「行け」と言われない限り、決して自分から行動は起こしません。
21話でランカがテレビ中継で「歌えません」と言った時も、アルトは反応こそすれどもそれでランカを探しに行こうとはせず、結局はランカからの深夜のメールに呼び出された形になりました(しかもメールを受け取った時の反応が「誰だこんな時間に」)。

一方シェリルに対しては彼女が病気である事が判明する前でも、6話において自分からシェリルの為に行動しています。6話でのシェリルの記者会見を見たあと、すぐに部屋を出てシェリルのもとへと向かっています。
18話においても雨の中必死にシェリルを探すのですが、この際街に流れているランカの映像などは眼中にありません。
さらに劇場版では、ギャラクシーからのスパイ疑惑がかかっているシェリルに対して、周囲から警告をされたにも関わらず、自分からシェリルのもとへ駆けつけている。しかもその時のアルトは謹慎中の身です。

これが態度の違いにおいて、一番分かりやすい点ではないかと考えます。

また、他にも対比とされている場面が、TV版24話の楽屋の場面と、劇場版後編のランカの告白シーン。ここでも二人に対する違いが明確化しています。

まず前提として、TV版と劇場版後編ではシェリルとランカの立場が入れ替わっています。TV版ではシェリルが残り、ランカはブレラと共に出奔。劇場版ではランカが残り、シェリルはオズマと共にランカを守って生死不明の状況です。
ここで分かる事は、「もしアルトの近くにいる相手がランカだったとしても、アルトはランカを選ぶ訳ではない」という事だと思っています。
まず、TV版ではアルト自らシェリルのいる楽屋へ向かい、劇場版では出撃しようとするアルトのもとへランカが向かっている。この時点で違います。

もっと分かりやすいのはこの後。

TV版:シェリルに必ず生きて帰ってくる事を伝え、シェリルの「恋人ごっこは終わり」に対して「待てよシェリル!俺は」と明らかに動揺し、シェリルの言葉を否定しようとします。直後のキスシーンでは陰になって見えにくいものの、アルトの腕がシェリルを抱きしめるような形になっています。

劇場版:ランカの告白に対して特に動揺はせず、さらに「ランカ、俺は」と告白を断るような態度。それを「言わないで」と制したランカが、アルトに「必ず帰ってきて」と伝える。その後のハグも恋愛的なものではなく、手を添えるような、あくまで親愛としてのそれです。

シェリルの生死が不明となってしまった劇場版において、アルトはランカに「生きて帰ってくる」とは言いません。それどころかランカの方から「生きて帰ってきて」と言われています。
その後の決戦において、アルトの機体が被弾する点は同じですが、シェリルが歌っていたTV版でも被弾するもののすぐに脱出し新しい機体に乗り換えており、対してランカが歌っていた劇場版では被弾した後に気絶し、そのまま落下します。結局アルトが目を覚ますきっかけになったのは、地上から聞こえるシェリルの歌声でした。そして彼女が無事である事を知ると、非常に嬉しそうな表情でシェリルの名を呼びます。そしてシェリルもそれに応えます。

これらだけでも、アルトの恋愛が終始一貫していたことへの大きな根拠になりえると思います。ランカの事は確かに大切に思っていますが、それはあくまで友人として、庇護対象として、あるいは可愛い妹的なポジションとしてだったのかもしれません。


TV版のみで言うと、アルトと二人がどのような関係を築き、結果どうなっていったかがよく分かります。ランカとは次第に噛み合わなくなっていき、21話での決別に繋がった。シェリルとはぶつかりながらも互いに理解し合い22話で彼女の病気ごと受け止める決心をしています。
ここも狙って演出されたミスリードですが、22話での離れにおける会話で、アルトはシェリルの涙に反応し、彼女を抱きしめます。ですが涙がアップになると同時に、彼女の太股も一緒に映っているため、視聴者は本心ではなく同情やその場の勢いでシェリルを抱きしめたと思ってしまう。まんまとミスリードに引っかかる訳です。かくいう私も当時は引っかかりました。

今考えると、アルトというキャラクターは例えどんなに親しい相手であったとしても、恋愛的に好きではない相手を同情で抱くような男ではないんですよね。2話でシェリルの胸元を見た時の反応や、ミシェルの女遊びを非難するのを見る限り、ことそういった事に関しては潔癖であろうことが伺えます。
そんな人間が同情で好きではない女と関係を持つかと言われると、普通に考えてNOです。ですがその離れでの一件以降でのアルトとシェリルの場面は、シェリルの視点で進行することが多いため、視聴者は「アルトがシェリルを抱いたのは同情だった」と誤解しやすくなるのです。当のシェリルが、アルトが自分と一緒にいてくれるのは同情だからだと勘違いしているんですから。

また、同じ22話のラストで、シェリルが歌う「ノーザンクロス」をバックに新統合軍に残ったアルトと、統合軍に残らずSMSの仲間たちと共に脱走したオズマとの対峙があります。ここでオズマはアルトに問うのです。「流されているのではないか」と。
「その時の感情や状況に流されているんじゃないか」「お前の翼は何の為にある」。これに対しアルトは答えられません。ただ悔しさを噛み締めるように絶叫します。
ここも台詞だけを見ると、アルトがシェリルと一夜を共にした事についての、恋愛についての言及にも見えます。しかしアルトは前述の通り同情やその場の雰囲気に流されて好きでもない相手を抱くような人間ではありません。そもそもオズマはアルトとシェリルの関係を知らない、つまり恋愛の事についての問いかけでもありません。しかし歌っているシェリルのカットを入れたり、オズマ自身が「惚れた女を守るために~」といった台詞を口にするため、視聴者はアルトの恋愛関係を連想してしまいます。
ここでオズマが指摘する「状況に流されている」というのは、アルトが新統合軍に残ったことであって、シェリルを選んだことではありません。実際アルトは間違ってはいないし、流されるままにフロンティアに残る選択をした訳ではないので、本当のところは流されている訳でもないし間違った行動をとった訳でもない。
では何故、アルトはオズマ達が去った後にあの反応をしたのか。
ここに関してはまだ推測の域を越えませんが、理不尽さに対してやり場のない怒りをぶつけたのではないでしょうか。オズマはキャシーを守るために、SMSと共にフロンティアを出奔しました。オズマ自身が戦えば、キャシーを守る事はできるのです。
ではアルトはどうでしょう。アルトが戦ってシェリルを守っても、彼女は不治の病に冒されており、しかもいつかは死に至ります。その事実に対する理不尽。守る事で彼女を死から救えるのならばどんなにいいか。それに対する怒りではないかと私は考えます。

それとミスリードで忘れてはいけないのは、23話のアルトとクランの会話です。アルトがランカを殺す覚悟を決めた後の、クランの「それがお前の愛か」。そしてそれを聞いていたシェリルの「分かっていたことよ」で、また視聴者は盛大なミスリードに引っかかります。
まず、アルトとクランがその発言の直前まで話していた内容は、恋愛に関することは微塵も含まれていません。何のために戦うのか、何故SMSに入ったのか、その事について話しています。
そしてその中でアルトは言います。ランカの歌がこれ以上戦いの道具にされるのならば、ランカを殺すと。要約すると、シェリルを含めたフロンティアの人々を守る為なら、ランカを殺す覚悟を決めたという事です。それに対するクランの「愛」発言は人類愛のニュアンスですが、主語抜きの台詞である事と、ランカの映像が台詞の後ろで流れるので、ランカへの愛だと勘違いしがちになります。
TV版のクラン(とミシェル)はアルトとシェリルの間にある感情を悟り、背中を押すような立場にあります。22話ではクランはアルトに、「お前には私たちのようになってほしくない」と言い、シェリルの病気の事を告げたりと、シェリルのアルトへの好意はもちろん、アルトのシェリルへの秘められた恋愛感情に気付いている節があります。そんなクランがあのシーンで、ランカへの愛だと考えるのは不自然です。あえて言うならば、「それ(フロンティアの人々やシェリルを守るためならばランカを殺すこと)がお前の愛か」でしょうか。
さらに対比となる描写として、劇場版においてシェリルにスパイ容疑がかかっていたり、後編でシェリルが三島達に連行された後も、イヤリングを捨てられないなど、シェリルにかかった容疑の事で割り切る事ができていません。
極めつけはそれを聞いたシェリルの「分かっていたことよ」と涙です。シェリルはアルトは自分ではなくランカが好きで、自分と一緒にいるのは同情だからだと思い込んでいます。だからこの台詞です。そのまま受け取ってしまうと、見事に釣られます。私も釣られました。

シェリルからすればそう勘違いしてしまうのも仕方がないことかもしれません。
視聴者がミスリードに釣られたり誤解したりした根底にあるものは、シェリルの誤解にあります。

2話において、自分にはないランカの素直さや強さを可愛らしいと思い
そのランカに対し恋では正攻法では勝てないと思っている。それ故の行動が、11話や12話。
そしてシェリルが14話で「帰ってきて」と伝えた際のアルトの台詞が、「ランカを連れて~」。
ずっと信じていたグレイスが自分を捨て、ランカのマネージャーとなり、さらには街ではランカが希望の歌姫として扱われる。
さらにそもそも、自分に対してはツンツンして喧嘩ばかりなアルトが、ランカに対しては優しく命がけで助けようとする。

ここまでの要因が集まっていると、シェリルが誤解するのは仕方ないといえば仕方がないし、視聴者がミスリードに引っかかるのも仕方がないことです。
アルトは好きな子に対しては素直になれない(いわゆるツンデレ)、言葉が足りていないというのも大きな原因でもあります。それでもアルトからすれば、シェリルを好きな相手として意識し、大事に思っている。基本的に真っ直ぐ一途な主人公です。アルトは。
まあだからこそ、その好きな相手にずっと勘違いされてたのが気の毒だとも思いますが
一方でランカの視点で見るとどうでしょうか。

7話において、シェリルもアルトの事を好きだということに気付きます。
10話の映画の撮影でのキスで、シェリルを恋のライバルと認識し、それ以降は「私だって!」といった気持ちになります。アルトとシェリルが親しいのではないか、付き合っているのではないかと不安になったり、ナナセから「このままだと取られちゃいますよ」という台詞に対して動揺したりと、あからさまに2人の仲に不安を覚えるようになります。。
そんな中で、12話から14話のガリア4での一件で、アルトは自分にとっての王子様だと思うようになるのです。

中盤からはシェリルもランカも自分の歌について思い悩む事となりますが、ここでアルトは軍人であるが故にランカの悩みを理解できず、彼女が望む言葉をかけられません。そしてランカは「アルト君の為に歌っている」と思うようにします。しかしそれによってますます自分の歌を見失う事になります。
19話のライブの後の、「伝えなきゃ、私の気持ち!」は一見唐突に見えますが、言うなれば凄まじく前向きな逃避行動です。自分はアルトの為に歌っているという気持ちを確認するための行動。しかしそれも、アルトがシェリルと抱き合っている光景(実際はふらついたシェリルを支えていた)を目の当たりにして、現実に引き戻されます。

どんなに周りに味方がいても、ランカは結局、一番理解してほしい相手(アルト)から理解を得られなかった。そして彼女が一番言って欲しかった言葉はランカの兄であるブレラが答えました。そして21話の「サヨナラ、大好きでした」に繋がります。それに対してシェリルには、歌手と元歌舞伎役者という、共に舞台を知っている人間だからこそ理解しあい、「お前が歌を捨てられるはずがない」とシェリルが無意識に望んでいた言葉を伝え、結果彼女が歌姫として復活するきっかけを与えます。

私がこの期間の場面で印象に残っている場面は、バーティカルキューピッドの場面です。
シェリルの為に雨の中を走り回ったり、シェリルに会う為に疎遠になっていた実家に忍び込んだり、本気で怒ったりと、とにかく彼女を救おうと必死になっているアルトと、自分を見失いかけ、そこからアルトの為に歌っていると思うようにするランカ。実際に、彼女はアルトの為に歌っていたというのは、本当の部分はあったと思います。
そして美星学園のライブシーンです。アルトは「見てろよ、シェリル!」と、シェリルを励ますような気持ちでアクロバット飛行に挑み、バーティカルキューピッドに成功します。それを見たランカは頬を赤らめ、「アルト君!」とアルトへの気持ちを再確認するのです。なんとも皮肉が効いた場面です。
まあその後に屋上の場面へと続くわけですが。

劇場版はともかく、TV版のランカはあらゆる意味でも子供です。子供であるからこそ、真っ直ぐで我の強いところがあって、そこが彼女の大きな長所でもあり短所でもある。幼いころに両親を失ったとはいえ、すぐにオズマに保護され愛情を注がれていたなど、環境に恵まれていたことも彼女の真っ直ぐさの所以かもしれません。甘えが認められない環境にあったアルトやシェリルにはなかった、あらゆる意味での真っ直ぐさです。

勝気なシェリルと、引っ込み思案なランカ。一見するとこう見えますが、大事な場面においてはシェリルはネガティブであり、ランカはポジティブなのです。

マクロスという三角関係が主軸にある作品である以上、視聴者はヒロイン二人の方に注目しますし、彼女たちの感情移入をしてしまう事も多々あります。だからアルトが優柔不断に見えてしまうのです。
ここで冷静になって、アルトの視点でもう一度見直してみると、シェリルとランカに対する態度はあからさまなぐらいに違います。
また、視聴者がアルトのキャラクターを把握しきれていなかったことも大きいのかもしれません。主人公であると同時に17歳の年頃の男子であり、好きな相手には素直になれない、例え恋愛対象として意識していない相手でも、異性が近付いたり水着姿を披露したりしたら頬を染めます。そりゃそうです。それが当たり前の反応です。
ただアニメなどの絵で表す作品では、この「頬染め」の動作が恋愛関係で一番ダイレクトに視聴者に伝わる手法として多用されます。製作側はそれを逆手に取って利用したことで、アルトの気持ちが、一見すると二人の間で揺れているように見えたのではないでしょうか。

こういった事から、アルトは恋愛に関しては一途で真っ直ぐな男であり、三角関係を引っ張っていたのはヒロイン二人の視点から来る勘違いと、幾重にも用意されたミスリードが主な原因であったという事が分かります。というか、私が言いたいのはそれです。無駄に長くなりましたが・・・

これからマクロスFを見ようと言う方、もしくは見直してみようかなという方が少しでもいらっしゃるなら、冷静な眼で見てみるのも面白いかもしれません。アルトの視点、シェリルの視点、ランカの視点でそれぞれ見てみると、色々と違って見えるものです。


ここからは若干蛇足になりますが、最後にTV版後記OPである「ライオン」の映像についての考察です。
このOPの映像の中に、三角関係の行方が暗喩で含まれていたのではと私は考えています。
https://www.youtube.com/watch?v=kexAkVkwYs0
映像内では、アルト・シェリル・ランカを象徴するかのような青とピンクと緑の3つの三角形が現れます。
OPの映像中においては、
・シェリルに手を引かれるランカと、その直後に現れ重なるピンクと緑の三角形
・歌うランカの頭上で、小さな緑の三角形の周りを回るピンクの三角形と青い三角形
・裸のシェリルの周りで回る青とピンクの三角形
・サビで3つの三角形の交差で、ピンクと緑、青とピンクは交差するが、緑と青は直接的な交差はしない(ここはほとんど一瞬なので見間違いがあるかもしれません)
・赤いリボンが絡まって沈んでいくシェリルの背景で燃える青とピンクの三角形
・青とピンク、ピンクと緑の組み合わせはあるが、青と緑の組み合わせは見られない
などがあります。
それぞれシェリルとランカの邂逅、ランカを守るアルトとシェリル、結ばれるアルトとシェリル。
そして惹かれあっていくアルトとシェリルに、アルトに片思いをするランカといった、三角関係の構図
の暗喩が含まれてるのかなと深読みしています。
まあこのあたりは個人的な妄想なので実際のところどうなのかは分かりませんが、少なくとも「シェリルの周りを回る青とピンクの三角形」と、「緑と青の組み合わせがない」点については、何かしらの意図があったのではと考えております。

長々とした考察におつきあい頂きありがとうございました。それでは


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