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★ウォルター・C・ドルネーズの裏切りについての考察

全体公開 2 10 3773文字
2014-12-13 00:13:51
Posted by @K1eleison




★ウォルター・C・ドルネーズの裏切りについての考察

 漫画「HELLSING」の登場人物の中でもその言動について謎の多い人物なので、その裏切りについて自分なりに納得がいくよう考察しました。なお推測と妄想で補完した部分が多いので、何かの参考にされるのはオススメしません。


・ウォルターが執事になるまで

 ウォルターの裏切りについてよく取り沙汰されるのは「いつから裏切っていたのか?」ということですが、むしろ「誰を」「どこまで」裏切っていたかが重要ではないかと思います。彼が仕えていたのはインテグラですが、そもそもを遡れば前当主のアーサー・ヘルシングであり、執事でありながらゴミ処理係(吸血鬼専門の殺し屋)として雇い入れられていたわけです。
 ウォルターがどのようにしてヘルシング機関へ雇い入れられたかの描写はないのでここはかなり推測になりますが、「THE DAWN」での少年ウォルターはかなり好戦的でなおかつ自分の力に自信があるように見えます。そこでアーサー・ヘルシングは既に「死神」と呼ばれるほどの実力を持っており、もはや人間では相手にならないウォルターに自身の仕事を説明したあとに持ちかける。
 「名実ともに最強の吸血鬼、アーカードと戦わせてやる」と。
 そうしてアーサーの契約に乗った彼はヘルシング機関の対吸血鬼用戦闘員として雇い入れられる。執事という役職はきっとカモフラージュのようなものだったのでしょう。
(※個人的にはあの歳で既にあれほどの実力を持っているというところから、もともと戦闘に特化するようヘルシング機関に育てられた説もオイシイ。でも教育を受けたというには煙草を吸ったり言葉遣いがアレだったりと育ちの悪さがちょこちょこ見受けられるので、やはりスラム街出身とかそのほうがしっくり来るかな……

・アーサーの契約違反

 さて、ウォルターは晴れてヘルシング機関のゴミ処理係として雇われ、吸血鬼を倒してさらに力を増していきます。アーサーからウォルターへの評価から、かつてのミレニアム研究機関殲滅における対大尉を除いて負けなしと見ていいでしょう。共に任務に赴く中で吸血鬼アーカードの危険さや異常さを再三目にし、ウォルターはアーカードとの戦闘を心待ちにしていた。(アーカードこの契約について知らなかったかもしれません。何か裏でやってるくらいは気付いていたかもしれませんが)
 しかしアーカードの力を見ていたのはアーサーも同じです。彼はヘルシングの当主として円卓会議との決議の結果、アーカードを「危険すぎる」として地下に封印してしまいました。ミレニアムなどの大きな動きもなくなり、通常の吸血鬼殲滅ならばウォルターがいれば十分でしょう。そう考えると皮肉ですね。つまり、アーサー前当主はウォルターとの契約を違えてしまったのです。そうすると先に裏切ったのはヘルシング機関側ともとれますね。
 そうなっては堪らないのがウォルターです。長い間ヘルシングのゴミ処理屋と過ごしそれが存在意義であり生業となったウォルターは「じゃあ辞めます」と去るわけにもいかない。アーサーがアーカードを再び解放して戦いの機会を作ってくれることを祈るしかありません。

・インテグラの誕生

 ウォルターの望みもむなしく、アーカードを殺し切れるほどの実力を持った全盛期をひたすらヘルシング機関のゴミ処理係として過ごします。既にアーカードと戦う望みも尽きた頃、アーサーの子供インテグラが生まれます。
 (余談ながらインテグラが生まれたのがアーサーの歳から考えてもけっこう晩年であった、アーサーがかなり女好き、母親の話が出てこない、インテグラとアーサーの肌の色が違う、などを考慮すると正式な結婚の元生まれた子供ではないのかもしれませんね。インテグラの叔父がヘルシングの当主の座に必死だったのもそういった理由だったのかもしれません)
 インテグラのウォルターへの信頼ぶりから、幼少期から彼女へ完璧に執事として勤めていたことがわかります。しかしインテグラにはあくまで表面的なヘルシング機関の役割だけが教えられ、ウォルターもそのように接したでしょう。


・アーサー・ヘルシングの死

 今際の様子から、恐らく病気で床に伏せたと仮定します。これは誰にも予想外のことで、当時の医療では治せない病気だったのではないでしょうか。あるいは彼が病を患ってから、娘のインテグラに吸血鬼やその殲滅方法、ヘルシング家の歴史を早急に伝えられたのかもしれません。
 そして、アーサーはインテグラにアーカードのことを伝える。ウォルターはアーカード復活の兆しを感じて動揺したでしょう。あれほど戦いたかった相手が復活するかもしれない。その予感に自身の中に燻っていた闘争心がさまざまと蘇ってしまった。だからアーサー亡きあと、吸血鬼殲滅のため言い渡された遠征がインテグラを殺すための罠だと分かっていながら、彼はそこへ赴いた。
 ウォルターは賭けた。天に任せた。アーカードを復活させるか否かを。


・アーカードの復活

 そして幸か不幸か、アーカードは復活してしまいました。そして事件を乗り越えたインテグラは覚悟を決め、以前の無邪気な少女の面影を捨てて当主としてめきめきと成長していく。ウォルターがインテグラに主としての尊敬を感じて確固たる忠義を見せたのはこのころかもしれない。
 しかし、復活したアーカードを目の当たりにしたウォルターは確信したでしょう。年老い、衰えた自分にこの化物はもはや殺すことはできない。そしてウォルターは「自分にもはやロートルである」と宣言し、アーカードのゴミ処理係の役目を譲った。
 そして、これは時期がこことは言えないけれど、ミレニアムの使者(まあシュレティンガーあたりでしょう)がウォルターに接触してくる。アーカード復活の折に、もう一度ウォルターの勧誘をしに来た。アーカードを殺しきれる作戦を手土産に。


・決定的な裏切り

 銃の細工をしていた時期から考えて、アーカードへの殺意も本物でしょうが、インテグラへの忠義もまた本物でしょう。前代のアーサーやヘルシング機関の自身への裏切りはインテグラの罪ではない。しかし円卓会議の連中にはその罪がある。ウォルターにもはやヘルシング機関への義理立てはない。しかしインテグラその人だけがウォルターの全面的な裏切りを食いとめていたのだと思います。

 ウォルターは元々二律背反的な運命を背負っています。裏では殺し屋として生きながら、表では何も知らぬような顔で執事として過ごさねばならない。時にはインテグラに対しては何も知らぬ執事として接したり、時には孤独に戦ったり。
 そんな生き方をしてきたウォルターの中に、インテグラへの本物の忠義と、アーカードへの執着が同時に存在していても何ら不思議ではないでしょう。そしてそれを完璧に隠すのも造作もないことでしょう。ウォルターの恐ろしいところは、彼は恐らく作中でほとんど嘘は言っていないだろうということです。自分の中に数えきれないほどの想いがあり、そのどれもを捨てきれずにいた。
 しかし、物語も終盤のあの夜。50年前と同じように再びあいまみえた大尉に渾身の一撃を片手でいとも簡単に受け止められ、ウォルターは自身の老いと衰えを、さらに「屈辱」を、痛いほど味わうこととなります。そこへ同じくアーカードへの殺意を持つ少佐が現れ、ウォルターにとっては悪魔の契約と言うべき甘い誘惑を持って、彼の前に満を持して現れるのです。

「自分の人生 自分の主君 自分の信義 自分の忠義 全て賭けてもまだたりない だからやくざな我々からも 賭け金を借り出した たとえそれが一晩明けて鶏が鳴けば身を滅ぼす法外な利息だとしても50年かけてあの男はあのアーカードと勝負するために全てを賭けた 我々と同じ様にな 一夜の勝負に全てを賭けた」
 
 そしてウォルターは裏切り者となった。
 


・終わりに

 ウォルターがいつから、誰を、どこまで裏切っていたのか。それがどうもハッキリとは言い切れない理由を自分なりに噛み砕いたら、どんどんとウォルターの「迷い」みたいなものが感じられてきました。裏切ったあとの「私を名で呼ぶな」という台詞、死に間際の「勝ちたかったなあ、あいつに」というアーカードに向けての言葉、それでも最後に思い出すのは「おさらばです、お嬢様」とインテグラのことであるという部分にウォルターの中にある相反する感情が見えてくるような気がします。
 恐るべきは彼の精神力でもあり、そこまで強固な意志を持ったウォルターを狂奔に一瞬で追い込んだ少佐の手腕といったところでしょうか。やはり彼は人を闘いに駆り立てるカリスマなのでしょう。

 この作品に出てくるキャラクターは皆迷いなく自分の意思を持っており、狂奔する者ばかりです。その中で迷いあがき苦悩するウォルターという人物は、「HELLSING」の中でもかなり「人間くさい」キャラクターなのではないでしょうか。他のキャラクターについてももっと語りたいところではありますが、ものすごく長くなってしまったのでこのへんで。
 閲覧ありがとうございました。




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