@takonsm
次元旅団に所属してどれぐらいの時が経ったのだろう。
そんなものカレンダーを見れば一発で分かるが、今この瞬間は直ぐに答えられなかった。
俺の爺さんが俺の部屋にいる。俺の爺さんが、俺に会いに来た。
理由は単純で爺さんの息子達……つまり俺の両親命日だからだ。
話は戻る。俺は整理された部屋のテーブルにお茶をことんと置いた。
「爺さん。久しぶり……」
「まだ生きてたのか。粗大ゴミ君」
「……お、おう」
俺の爺さんは俺のことが嫌いだ。というのも、俺の両親は俺が赤子の頃プレイライトに誘拐された直後、俺が死んだと思って自殺した。
所が、その数年後俺がガイアに帰って来たんだ。爺さん婆さんに事情を説明したら、プレイライトで遊んでいたと判断された。
「何度も言うがな。お前のせいだぞ。お前が失踪したって言った結果、アイツらはお前を心配して探し回ったさ、寝ずに、苦しんで、壊れて行きながら」
「……何度も聞いた」
「ずっとお前を想ってだぞ。ああ、アイツらは良かった。自分の子供を心配してたんだからな。立派な奴だよ。……ところがお前はなんだ?」
「プレイライトに居た」
「そこだ。お前はずっとプレイライトで"小悪党"って役に縋りついていた。ヘラヘラ笑いながら遊んでたんだろう? ああ、そうだろう。お前にはそれしかないんだからな」
「……そうだな。俺にはそれしかなかった」
「お前はそういう奴だ。誰が心配してるかも知らずに、苦しんでるかも知らずに、お前は自分のことも良く分からずに遊び惚けていた」
「……」
「結局はそこなんだよな。お前の許せない所。分かってるんだろう?」
「……それも聞いた」
「小悪党に縋るお前なんてそのふざけた役を引っぺがしてやりたい。奪われちまえばいい。その外面引っぺがして、お前も苦しみ続けろ。あいつらの苦しみをお前が一心に受け続けろ。ゴミが」
爺さんの話を聞きながら、俺の記憶は過去へと誘われた。
あれはいつの日だったか。
ああ、そうだ。18歳の誕生日
………
……
…
「む」
長髪の眼帯の男……つまり、Nickという相棒はジャズのBGMが流れた小汚い部屋で壁に立てかけられた的にダーツを飛ばしていた。
3度投げ全て円の中心へと命中する。
「おー。やるねえ、Nick。流石じゃねえか」
「次お前なHeld」
「まじかよ」
ヘラヘラ笑いながら手渡されたダーツを持って、一投! あらぬ方向に当たった
「ドンマイ!」
続いて一投! 横に居たNickの顔に当たった。
「いてえ!」
「すまん」
最後の一投! ダーツが壁にぶつかって壊れた。
「アーーー!!」
「アアアーッ!!」
「アアアアアアアーッ!!!!」
「マーーーーーーーーーーッ!」
「ミーーーーーーーーーーッ!」
「ちょっとアマミってどこの女!?」
「私よ!!」
茶番は長いので俺の記憶から消した。
話はその後だ。
「……Held。お前に足りないのは真実を直視する力だと俺は思う」
「は?」
「都合の悪い現実から目を逸らして、自分の都合の良いことばかり言う。お前はそういう節があると思う」
「(素直に素直じゃないって言えばいいのに)」
「お前、この前仲間がやられた時に何した?」
「ああ、先に進んだ。どうしようもなかったし俺が指令塔を担当したのもある」
「ダメだ。そこが真実直視力が足りねえって言ってんだよ」
「何の造語だよ。ってか何だよ意味わかんねえ」
「……あのな、Held。仲間をやられる展開を作ったのは誰だ? お前だ。司令塔なんだろう?」
……司令塔だから、何だ?
「……お前が本来直視するべき真実とは"仲間がやられる展開を作った己の不甲斐なさ"だったのだァーッ!!!」
「な、なにぃーーーーっ!?」
ババーン。と雷に打たれた気がした。気がしただけ。
「じゃあお前ならどうするんだよ。Nick!」
「簡単だ。仲間がやられそうになる展開を作らないように指示をする。それでもやられそうだってなら、俺がやられる」
「……あー。上手い指示と身代わり? でもいいのか、司令塔がやられて」
「構わんよ。だって」
「だって?」
「俺らの指示能力等たかが知れてるからだァァーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」
「な、なにぃーーーーーーーーーっ!!?」
ババーーーーン!!!と雷に打たれた気がした。それ言っちゃうの。
「あんまりにも驕るなよ。お前はただの人だ。全知万能だと思うな。お前の指示能力などその程度! だとしてもそれでも活かせ」
「……?」
「お前の能力はお前だけのもんだ。お前がやらなきゃ誰がやる。どうしようもなく程度の低いお前の強さを活かせるのはこの世でお前だけだ」
「……Nick」
「……もう1つ」
「ん?」
「仲間がやられたとしても絶対に死体を跨ぐな」
「そう言う展開を作ること自体が間違いだから、だろ?」
「ああ。それもある。……だとしてもそれが避けられないなら、自分の死体を跨がれろ」
「……と、いうと?」
「それが優良な敗北を得たい悪党のプライドって奴だ」
「……意味分かんねえな」
「プレイライトなら普通じゃないか?」
「そういうもんか……」
…
……
………
「だから、お前は粗大ゴミだ。何も出来ない癖に粋がっているだけ。何故? お前が馬鹿なだけだろう」
「……いや」
「お前のお仲間もお前を狂わせただけの奴でしかない。ああ、そう思うとお前も可哀想になってくる。ハハハハッ!!」
Nickのことを言ってるのか?
「聞けばアイツは違法使いだって言うじゃないか。やはり違法使いのお仲間は、ゴミにしかならない。と」
「何?」
「お前はアイツにロクなことを仕込んでこなかったようだな。思い返してみろ。ろくでもないことばかりじゃないのか?」
俺は目を閉じた。目を閉じれば暗い世界。暗い世界といえば、俺は相棒とのチェスはこんな感じに暗かったな。と
………
……
…
「真実を直視しろ」
「駄目な毎日を自分誤魔化して目を背け続けてきたんだろう」
「失敗して、恨まれて、苦しんで来たんだろう」
「だったら、お前の苦しみも、喜びも分かち合ってきたこの俺が何度も言ってやる」
「"負けるな"と」
…
……
………
「……ははは、はっは。ああ、そうだな。ああ、いや。……初めから、相棒は言ってたんだ」
「どうした。急に笑いだしたが。ついに狂ったか?」
……歪んだ通りに見てるから、歪んだことしか言えないんだな。
「相棒は言ってた。弱いなら弱いなりに負けるなと。……驕るなと。ああ、きっとこう続くか。お前なんぞの価値で出来ること等限られてるわ馬鹿がと」
「……だから、何だと言うんだ」
「爺さん。……俺に出来ることはアンタにずーっとどやされることなのか? 違うよな。アンタは俺に苦しみを吐きだし続けたいだけだ」
「それが文句あんのか? お前は俺の恨みを聞き続けることを唯一の贖罪としろ」
「……爺さん。墓、参りに行こう。婆さんも連れてさ」
「……は?」
分かって来たぜ。相棒。真実が。
「もうやめようぜこんな愚痴。……俺も顔も知らない父さんと母さんのことで苦しいんだ。……だったら、分かち合おう」
「……」
「……俺の知らない父さんと母さんを教えてくれ。俺の知らないことを教えてくれないか。爺さん」
「……お前、お前」
……言葉を詰まらせた俺の爺さんは、席を立って、怒るように俺の部屋を出て行った。
「相棒は、俺のことを想い続けてくれている。爺さんはその思いは父さんと母さんも思ってのこと。んで父さんと母さんは俺の事を想い続けてくれた」
「なんなら、あの世界の仲間も皆、俺のことを想ってきたんだ。……おいおい、悪ばっかだな。家族以外だと。……めっちゃ面白いぜ」
「……はは、何だこれ。知らなかったな。俺は色んな人に想い続けられてきたんだ」
「何が、1人だ。……真実なんて、ちっとも見えてねえから正しいことも分からない、か」
「俺にとっての真実が分かったぜ。相棒」
Side:white-After
赤羽銀
『出来ること等ほとんど無いのは分かっているが、それを全力でやり遂げる』
『多くの悪に想い託され続けられた英雄』
『歪んだ信念という正義に真実という悪を叩き付ける』
『プレイライトでの名前はHeld。Holdの過去形。何度でもその真実を手に取り続けよう』