@acbh_dmc4
アルタイルの写本は画期的な武器や知識を提供してくれるし、友人のレオナルドは嬉々として謎解きに夢中になる。
そして真に隠された予言の謎を紐解くカギにもなるのだから、積極的に集めている。
そしてたまに落書きのように書いてあるらしい、アルタイルの人柄を知らせるエピソードなどを読むのも面白い。
伝説のアサシンはどんな人柄だったのだろう、と想像する事も多く、興味の尽きない人物であることは確かだった。
昨日も新たな写本を見つけて、本日レオナルドに持って行ってやろうと纏めていたのだ。
だからきっとこれは夢で、想像力逞しい俺は、アルタイルになる夢なんて見ているだけなのだろう。
そうだ、その筈だ。
でも夢ならもっと楽しい感じになればいいのに、なんで俺は良く分からないアサシンにお説教をされているんだろう。
しかもなんだか自分の事を言われているわけではないと思うんだが、的確に人の事を詰まるその言葉は、アサシンブレードよりも
鋭いのではないかという位、ズバズバと浴びせられて心が折れる。
思わず涙目になってしまうと、先ほどから途切れなく暴言を寄越している男が怯んでいるような気がした。
「珍しく反省でもしたのか?それとも新たな戦術で泣きまねまでうまくなったという事か?」
おっかない目の前の『支部長』の格好をしている隻腕の男は憎々し気な目で俺を睨めつけて居る。
「おい。聞こえているのか?アルタイル!よもや頭だけでなく耳まで悪くなったとでも言うのか?何とか言え」
「……あの、俺…アルタイルじゃないんだけど…」
「あ?」
目の前の男の米神にギュルンという効果音が付きそうな勢いで青筋が立った。
思わずビクリと体を揺らして飛ぶように後退ると、目の前の不機嫌の権化が目を見開いてビックリした顔になった。
もうここまで来たらこちらも言いたいことを言ってやろうと思い、男に顔を向けるが、驚いているとはいえ、未だ険しい顔をしている男から逃げを取るようにそろりそろりと出口へとにじり寄りながら震える声を上げた。
「そ、そんな怖い顔で睨まれたら誰だって怖いと思う!」
ダッシュで出口へと駆け出る。
男の顔色も見ぬまま、飛び跳ねる様にして中庭から壁を越えて外へ出る。
そして屋根に登ったあたりで俺の体はフリーズした。
周りは砂肌一色の、箱型の簡素な建物ばかり。
時折いかついイスラム教の教会のような建物が見えるが、華美でもない。
いつぞや見た、異国の絵画のような見慣れぬ街並みに、逃げ出そうとした体が躊躇した。
下の部屋で怒りを露わにする男から逃げるよりも、夢とは言え、この見知らぬ街に飛び出していく事の方が恐ろしい気さえする。
そうして引け腰になっているところで、中庭の方から呆れた男の声が掛けられた。
「おい、アルタイル。そうは見えなかったが体調でも悪いのか?自己管理もできないアサシンなど無能の極みだな」
「…あの、さ、ここって…どこ?」
「……は?何を言っている?エルサレムに決まっているだろう?」
エルサレム!
俺ってば来た事もない異国の街並みを想像できるほど想像力が豊かだったのか。
現実逃避もそこそこに、すごすごと中庭へと舞い戻る。
呆れたような男の視線に身を竦ませて、でも申し訳なさそうに項垂れてみる。
「あの、俺、これからどうしたらいいかな?」
「知るかっ!!」
急に怒鳴りつけられてヒェとなる。
「導師の任務を遂行すればいいだろう?そんなことも分からないのか?」
「導師の任務?えっと…その任務ってどんなのだっけ?」
更に質問すれば、驚いているのに怒り心頭に顔を凝視され、それはそれで恐ろしくて後退る。
俺のその行動にやはり面食らっている目の前の男は、頭を抱えるかのように片手を額へ添えると、憎々し気に口を開いた。
「その無駄口を叩いてないで、さっさと情報収集なりしに行けっ!」
「えっと、貴方が俺の事嫌いなのは分かった。でもその…暗殺とかするにしても情報が必要と言うか…アンタもアサシンなんだろう?ならその最初の情報収集をさせて欲しいんだけど…」
男の剣幕に気おされ気味ではあるが、あまりの態度にこちらだってムッとする。
至極当然の
「お前本当に頭がおかしくなったのか。俺が誰だかわかっていないようだな?」
「…その、すまない。誰だか知らない」