@toasdm
いつも一人で、なんとかやり過ごして、寝て起きたら全部忘れていて。そうやって生きてきた私は、優しくされた時の正しい対応がわからない。そんなに優しくしないで、と目で訴えてみても、目の前の、都築さんの表情は、悲しみと怒りとを混ぜたような、マーブルグラデーションの色をしたままだ。
「ねえ」
「……」
こんなに引きずることなんて、なかったはずなのに。どうして私、こんなに弱くなっちゃったんだろう。誰かに頼るなんて覚えたくなかったのに、どうして私、こんなに、今、都築さんがいてくれてよかった、なんて思ってるんだろう。透明感と存在感が同居した優しく芯のある声が、さっきと同じ言葉を繰り返す。
「どうして、一人で泣くの?」
「っ……」
一人の方が気楽だからとか、誰かに迷惑かけたくないからとか、いろんな理由があるけれど、多分そのどれもが、都築さんからしてみれば、あまりにも脆くて、弱い理由なんだと思う。言えないでいる私の頬を優しく撫でる手が、よしよし、の甘い声と一緒に頭の方へと移動する。
「プロデューサーさん」
「……ごめん、なさい」
「うん……」
たまには僕たちも頼ってよ、と頭を撫でながら、悔しさでぎゅっと拳を握る私の手を優しく握ってくれた手は、あんな繊細な印象なのにびっくりするくらい男の人の手だ。ひゅ、っと息が詰まって、上目遣いに見上げた顔は、なんともいえない表情はしていたけれども、私を責めているわけではないように見えて少し安心する。
安心なんて、しちゃだめなんだけどな。
仕事のミスをいつまでも引きずってないで、とっとと立ち直らなくちゃ。なんでもないです、と意地を張る私の頭をゆっくり撫でていた都築さんの手が、急に後頭部にするりと移動して、ぐ、と一瞬だけ、力が入る。
「っ!?」
「……ん」
一瞬目尻に押し当てられて、すぐに離れた都築さんの唇が、私の涙で濡れている。少しお怒りの色が濃くなったきれいな瞳に射抜かれて、胸が少し、苦しくなる。
「次、無理をしたら」
「っん」
ゆっくり私の頭から離れた手がびしょびしょの頬を優しく包んでくれて、親指が、さっき唇の触れた目尻の涙を拭う。ほっとするような心地よさに気が抜けた瞬間、する、と降りてきた手の人差し指が、ふに、と柔らかく、唇を押した。
「今度はここに、しなければいけなくなるかも、しれない……ね?」
それは、どういう、意味なんだろうか。
僕がどんな気持ちでいるのかを、少しくらいは考えて、と優雅に立ち上がった都築さんの背中に、私は何も、問いかけられない。
付き合っているわけではない、でもきっと、私は都築さんが好き。そして多分、都築さんも、だ。超えてはならない一線を、どちらが先に超えるのかなんて、些細な問題だと思う。でも。今は、まだ。
あなたを支える私であるために、今はまだ、プロデューサーでいさせてください。
都築さんへの思いで奮い立たせた自分に気合を入れるように、ぺしん、と叩いた両頬は、まだ目尻を中心に少し、熱い気がした。