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[次郎P♀]独占欲の味

全体公開 1448文字
2020-02-05 12:48:54

「キスしながら、何考えてたの?」
じろちゃんとPさんとキスのお話です。

Posted by @toasdm

 好奇心は猫をも殺す、とはよくいったものだ、と彼女はどこか、他人事のようにそれを眺める。目の前七センチ、いや、五センチ。右と左、どちらに焦点を合わせていいのかわからない至近距離で、次郎の瞳がすっ、と細められる。
「んふ……
 そんな彼女の慌てぶりが見て取れたのか、思わず吹き出すように笑った次郎の鼻息が、頬にかかってくすぐったい。後頭部に回された手の親指が、ふる、と震えた彼女の髪を優しく撫でて、腰に回された腕はぐ、っと力が入って体はより、その密着度合いを増していく。

 こんな、大人っぽいキスなのに――

 触れ合った唇の隙間から、ゆるりと侵入してきた次郎の舌先にくすぐられて、彼女はまた、ほんの少しの好奇心で開けた目を反射的にぎゅっと閉じる。脳内で、次郎の声がするようだった。
 あーあ、キスだけでそんな、とろっとろになっちゃって……
 どこかいたずらめいた、からかうような子供じみた声なのに、声も吐息も大人っぽくて、頭がおかしくなってしまいそう、と彼女は足腰の力ががくんと抜けそうになる。
「んっ」
 それでも、彼女が頽れないのは、次郎の腕がしっかりと、彼女の腰を抱きかかえて支えているからだ。ほら、ちゃんと立って、と聞こえたような気がして、彼女はもう一度、目を開ける。
……
「っ」
 至近距離で目線がぶつかる。絡み合う舌から渡された熱の色香と、その、純粋そうな瞳のあどけなさとのギャップでくらくらする。くらくらするのはもしかしたら、呼吸を忘れてしまったせいかもしれないけれども。
 息苦しさにも似た眩暈の情熱に、潤む瞳は次郎には、どんな風に見えているのだろうか――彼女には、それを考えるだけの余裕はなかった。
「っふぁ」
「ね」
 上からのぞきこまれるようにコツンと額を合わせて、次郎はへらりと笑う。
「キスしながら、何考えてたの?」
「ふ、んっ……
 何、と聞かれると、困る。とりとめもない雑多な、感想未満の思考の断片をつなぎ合わせても、何か伝えられるような、答えになるようなものにはなる気が全くしなかった。
「んー?」
「っん、じろ、さんの」
 答えを待つ瞳の強制力に、彼女は観念して思ったままを口に出す。
「目、きれい、とか」
「うん」
 穏やかに見下ろす瞳が嬉しそうにへにゃりと垂れる。うまく伝えられる気がしないけど、と続ける彼女の頭を優しく撫でながら、次郎はじっと、ゆっくりと、彼女の言葉を待っている。
「どんな、顔して、キスしてるのかな、って思って」
 時系列すら滅茶苦茶な、支離滅裂な言葉の羅列が始まる。
「目、きれいで」
「そう?」
「熱くて、くらくらして」
 うまくまとまらない、やっぱりだめ、なんか、もう、無理、と次郎の胸板に顔を埋めて唸るだけの彼女を、あーほんと、かわいい、と抱きしめて、次郎は背中をとんとんと優しく叩いて落ち着かせる。
「そっか」
 嬉しそうな穏やかな声が、吐息交じりに耳に注がれる。

「キスしながら、ずっと俺のこと考えててくれたんだねぇ」

 ああそうです、それです、と次郎のまとめたひと言に、彼女はゆるっと顔を上げる。
「じゃあ、ずっとちゅーしてよっか?」
「?!」
 にこっと無害そうな顔で笑いながら、この人いきなり何言うの?!とびくつく彼女をさらに強く抱き寄せて、次郎はにんまりと笑う。
「もっと、おじさんのことしか考えられなくしちゃいたいなー、なんてねぇ」

 再び触れ合いだした唇に残る甘い痺れは、独占欲の味がした。


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