@satomi8429
崩れたように横たわる少年の傍らには、蓋の開いた箱がころがっていた。
表情のない顔が表情のない言葉を零す。
「…失くしてしまいました」
「何を?」
「全部」
「全部て」
一拍遅れて返って来る返事に、箱を拾って覗き込む。この中身のことだろうか。
「まだあるやん」
「ないですよ」
「ほれ」
「ないです」
目に入るように箱を傾けてやるが、彼の返事は頑なだ。
「見えへんのか」
「……」
「…ならそれでええ」
「……」
「今は見えへんでも、そのうち見えるようになるわ」
「そうでしょうか」
言葉は無意味だ。少なくとも、今は。
黙ったまま小さな手をとると、その手が俺の手を自分の頬にひた、とつけた。つめたい頬だった。
逆の手で反対側も包んでやる。まだ、だ。これはきっと、今ではない。
「そのままでええよ」
まだ今は、と胸の中で付け足す。
大丈夫、抱きしめたその箱の底には、まだちゃんと残っているから。
***
ひっそり。
プライベートのあれこれを反映したあれです。