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[雨P♀]串揚げパーティ/中編

全体公開 1672文字
2020-02-29 12:51:51

「こうやって、誰かと一緒にキッチンに立つ、って」
「ん?」
倉庫の片付けをしていた雨彦さんとPさんが埃被って死蔵されてた卓上フライヤーを見つけて串揚げパーティをする話、中編です。

Posted by @toasdm

「さて」
 どさっと荷物を置いたキッチンは、一人暮らしには少し広いような気がした。女性にしては背の高い彼女と、日本人にしては背の高い雨彦とが並んでも、そこまで圧迫感がなく導線を確保できるだけの広さの秘訣は、部屋全体の天井の高さだと気付いて雨彦は上を見上げる。
「アパートじゃなくて持ち家かい?」
「親戚の家、管理するついでに住まわせてもらってるんです」
 掃除の行き届いた気持ちのいい空間は、彼女なりの感謝の表れなのかと雨彦は感心する。一人暮らしにしては大きな家具家電、広い食卓テーブルや横長のこたつなど、家族で住まうことを前提に揃えられたそれらを失礼に当たらない程度に眺めつつ、雨彦は缶ビールを冷蔵庫にしまった。
「埃塗れなのは箱だけみたいですよ」
 こっちこっち、と手招きする彼女に近づけば、こたつの上、事務所の倉庫に死蔵されていた卓上フライヤーの箱が開封されている。彼女の言うとおり、中は付属品も全部そろったきれいな状態だ。
「テープ剥がした後もなかったですし、ほんとに忘れ去られてたんですねぇ」
 動くかなぁ、と発泡スチロールの緩衝材ごと取り出して、彼女はコンセントを差し込んで温度調整のつまみを回してみる。
「お」
「おお」
 加熱中のランプが点灯し、鍋底にちょんと触れてみるとほんのりと温もりを感じる。状態のいい新品未使用、今日は君にたんまり働いてもらうよ、とニヤニヤして、電源を切り彼女はそれをキッチンへと運んだ。
「一応これ、取り外して洗えるみたいなんで洗っちゃいますね」
「なら俺がやろう」
 きれいにするなら任せてくれよ、とつなぎの袖口をまくり上げ、雨彦は彼女の手からそれを受け取る。
「これだけ広けりゃ、俺とお前さんとで並んで作業もできるだろう」
「ほっほーぅ、つまり食材の準備を私に押し付ける気ですね?!」
「っははは、まあ、そうなるな」
 仕事抜きの会話のテンポがこんなに小気味よく、息ぴったりだとは二人とも思っていなかった。お前さんノリいいな、葛之葉さんこそ、と肘で小突きあいながら、彼女は食材をカットして雨彦がフライヤーの鍋を洗い、準備が進む。
「こうやって、誰かと一緒にキッチンに立つ、って」
「ん?」
 鍋をセットした雨彦は再びキッチンへ戻り、カットしなくてもそのまま使えそうな野菜を洗って皿へ並べる。彼女の方も慣れた手つきで肉や野菜、魚を切って続ける。
「なんか、いいですね」
……そう、だな」
 例えばそれは、家族のような。
 広いキッチンで一緒に下ごしらえをして、後に待つのは熱々の、揚げたての串揚げとビール。期待に膨らむ胸に洗ったシシトウの青臭い香りを吸い込んで、雨彦も頷く。
「なんせこの後は、うまいもんが山ほど待ってるからな」
「あーーーー……楽しみすぎてどうしましょうか」
「そうさな……
 野菜類は大体終わったか、と雨彦は小麦粉とパン粉を並べてシンク下からボウルを取り出す。ついでにくるりと振り返り、二人の後ろで聳え立つ冷蔵庫から卵と一緒にビールを二缶取り出した。
「少しクールダウンと行こうか」
「お、葛之葉さん飲兵衛さんですね?」
 トン、と調理台に置かれたビールに手を伸ばし、彼女はカシュ、と軽い音を立てて缶を開ける。片手で掴んだプルタブに人差し指をひっかけた雨彦も器用に右手だけで同じ音を立てて開けると、にんまりと、笑いあった二人のビールがべんっ、と軽く触れあった。
「お疲れ様です、葛之葉さん」
「お疲れさん」
 ごくごく、と爽快感を伴った音と一緒に、二人の喉が潤った。自然と零れた笑いと、とっととつまみがほしいな、の雨彦の声に、作業分担は声をかけあわずとも自然に分かれて自然に進む。
 卵と小麦粉を溶いて合わせて、パン粉は細かく砕いて袋に。大量の竹串と、大皿五枚に分かれたとりどりの食材と、飲みかけのビール。それらが並んだこたつテーブルで二人は二回目の乾杯をして、卓上フライヤーの油を温め始める。

 キッチン経由、こたつ行き。始まる前から少しほろ酔いの、二人の酒宴が始まった。


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