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[玄P♀]天地神明に誓って

全体公開 1 1804文字
2020-03-23 15:18:07

もしかして……もしかして俺は、とんでもねぇプレゼントをしちまったんじゃねぇのか?

Pさんにもこもこルームウェアをプレゼントした玄武くんのお話です。

Posted by @toasdm

 分不相応だという自覚はあったが、正直にいうと選ぶのは楽しかった。店内のディスプレイは全てふわふわで、甘くない綿菓子みてぇだな、と眺めているだけでも知見が得られた。女性らしさを押し付けるつもりなど微塵もなかったが、やはり彼女のような女性には、こういった、ふわふわで甘くて、綿菓子のようなものが似合うと思ったのだ。彼女さんへのプレゼントですか、という店員からの問いかけになんと答えたのかは覚えていなかったが、天地神明に誓って、玄武は嘘はつかなかったはずだ。
……
 可愛らしいパステルカラーのショップバッグを提げて店を出た玄武は、その足で事務所へと向かう。善は急げ、というのは建前で、自分が持つにはいささか不釣り合いなこれを早く彼女に渡してしまいたい、というのが本音だ。平たく言うと気恥ずかしい。

「お疲れ、番長さん」
「あ、玄武くん!」
 お疲れ様です、と自分を見た瞬間にぱっと花が咲いたように笑う彼女に、日頃の感謝を伝えたい。先日ちらっと見えてしまった休憩中の彼女のパソコンに映し出されていたもこもこのルームウェアのブランド名を、玄武は一瞬で頭に叩き込んでいた。
 女らしくて可愛いな、と思った。似合うだろうな、とも。
 こんな風に思う自分の感情につける名前は残念ながら、まだ玄武のバリエーションにはなかったが、思慕の念は自覚していた。実際に店頭で手にとってみて、その手触りの良さに感嘆の吐息を漏らして「贈り物にはピッタリだな」と納得をして買ったそのルームウェアを、玄武は彼女に差し出した。
「世話んなってっからよ」
「え? あ」
 ショップバッグのブランドロゴで、彼女は悟る。どうして、と嬉しい、とが同居した表情で自分を見上げる彼女に、玄武はもう一度、世話になってる礼さ、と言って彼女にそれを持たせた。
「前々から興味はあってさ」
 これは嘘ではない。仕事柄、女性のファッションに関わることもなきにしもあらずではあったものの、そちらの方は全くの門外漢だ。得られる知識は全て得たい、というのは玄武の本心だ。
「手触りいいんだな、着心地も良さそうだから、もしよかったら着てみ――
 そこまで言って、玄武の思考がピシッ!と氷のように張り詰める。俺、今番長さんに何言おうとしてたんだい?と立ち止まり、氷がピシピシと脳の中を埋めていく。

 よかったら着てみてくれよ、ってことはよ……着てるとこ、見せてくれよ、って意味に取られてもおかしくねぇよな?だいたい、女性に部屋着をプレゼントするってのは、誤解を招くんじゃねぇのかい……

「?」
……
 硬直したままの玄武を、彼女は訝しんで見上げている。玄武くん?と問いかけられても、玄武の耳はその音を右下から左上にスルーした。

 もしかして……もしかして俺は、とんでもねぇプレゼントをしちまったんじゃねぇのか?

 なんでもねぇ、と答えながら左手で口元を押さえ、玄武はばくばくとうるさい心臓の音に思考を邪魔されながら必死で切れる頭を回転させる。
 こういう時に限って思い出すのは、女性に口紅を贈るのはキスで返してほしいだとか、下着を贈るのは脱がせる目的だとかいう、くだらない知識ばかりだ。

 違う、そうじゃねぇ、俺は番長さんをそんな目で見ちゃいねぇ、ただ感謝したい、プレゼントがしたい、喜んでもらいてぇって思って――

「あ、玄武くんもお揃いで着ましょうか? なんちゃっ――
「俺はそんなこと考えちゃいねぇ!」
「っ!?」
「っあ、すっ、すまねぇ……
 思いの外強く出てしまった言葉に、玄武の動揺が色濃く出ている。男の子だから着ないかな、と一瞬きょとんとしたものの玄武の言動を特に気にもとめずに、彼女はニコニコとプレゼントを受け取った。
……ふ、深い意味は、ねぇんだけどよぉ……
 ああそういえば、そうだったな、と玄武はフッと笑いをこぼす。
「日頃世話になってる恩人へのプレゼント、ってやつさ。よかったら使ってくれよ」
 彼女さんへのプレゼントですか?と店員に聞かれた時、自分がどう答えたのかを玄武は思い出す。天地神明、嘘はついていない。やましい考えなど一切なく、玄武はただ、彼女に感謝を贈りたかっただけだった。

 ありがとう、ともこもこのルームウェアを抱きしめる彼女のことを、玄武は漸く、清らかな目と心とで見ることができるようになった。


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