@akirenge
エドガー・アラン・ポーは食堂にて炊き込みご飯をスプーンで食べていた。今日のメニューはタケノコ尽くしだそうだ。
タケノコの炊き込みご飯に、タケノコの土佐煮、タケノコとわかめの味噌汁、メインは豚肉のみそ漬け焼きか、鰆のホイル焼きかが選べるが、
ポーは豚肉の味噌漬け焼きを選んだ。料理長が持ってきてくれている。
「このタケノコというのは美味いな」
「今が旬なもので」
「ハワードにも食わせてやりたいが、アイツは司書の面倒を見ているだろうからな」
「司書が面倒を見ているではなく」
「特務司書はハワードの面倒を見ているつもりだろうが、ハワードは司書の面倒を見ているのだ」
料理長と話す。料理長はとても美味しい食事を作ってくれる者だ。この図書館が対侵食者の前線基地として本格的に動くようになってからの
メンバーである。料理で支えてくれているのだ。美味しいものは大事だ。食堂には他の文豪が集まってきている。
「まさか、彼が……山田美妙君が来る可能性があるとは」
「逍遥先……逍遙さん……」
「館長補佐の知らせを広津が持ってきていたが」
坪内逍遙が悩みながら食堂に来て、小川未明が逍遙を気遣っている。二葉亭四迷がため息をついていた。
「誰かまた蘇生するのか?」
「ダー、……そして蘇生じゃない、転生だ」
「ここに来るならばどちらも変わらないだろう。文豪というのは誰も彼も一癖以上があるが、また来るのか」
四迷がうなずきながらも訂正を入れる。蘇生と転生は大きな違いがあるようだがポーからすれば復活の儀式だ。復活の儀式についてはポーが経験したのは
ハワードだけである。その儀式も特殊な部類に入るようだが、復活の儀式は皆特殊だ。
「彼とはあまり気が合わなくてね……先行転生が来るというのは、運命なのか」
「色々と迷惑をかけられた」
「会いたくないのは確かなようだな。お前は普段ならば運命をディスティニーという」
逍遙はしゃべる時に時々英語を交えた独特の言葉でしゃべるがそれが入っていない。四迷も四迷で迷惑そうな表情をしている。
ポーは近代文学の歴史については知らない。ここに転生をしたのも夢野久作に誘われたからだし特務司書も特務司書で侵蝕者を消してくれればいいよという
話だった。復活の儀式前のことが前だったので特務司書の少女からはオラウータンを出してくれないかな、赤き死の仮面でもいいよとか
言っているが彼女はオラウータンにこだわりすぎである。ポーは話しながらもタケノコの土佐煮を食べていた。
「たけのこご飯、美味しそう」
「とても美味いぞ。まずは食べろ。メインは豚肉か魚か選べる。先行転生というのはすぐではないのだろう」
美味しいのでそこは保証しておく。彼らが嫌そうな顔をしているが先行転生はすぐに行われないものだ。知らせが来て、何日かしてから試すことになる。
「すぐではないが、そうだな。まずはタケノコがメインの朝食を食べるか」
「おいしそうなメニューばかりだ。この時期のタケノコはとてもデリシャスだからね」
「しばらくはタケノコばかりだそうだ。旬というらしいが、そんなに取らないといけないのか」
「取らないとだめなんだ……タケノコ……竹は怖いんだよ」
ポーの言葉に四迷が促される。逍遙も気持ちを切り替えて、メインメニューを選んでいた。魚のホイル焼きにしている。
本日一日はタケノコ尽くしであり、今後も一日一品はタケノコ料理が出るらしい。
帝国図書館は食品の消費量が多い。六十人以上文豪はいるし、スタッフを足せばもっといるからだ。
畑などもしているが大半は購入している。
食事の注文をしながらたけのこご飯を自主的に盛りつつ、逍遙たちがポーの席の隣に来た。
「怖い? どう怖いのだ」
「竹は育つのが早いんだ。三か月もあれば竹になっちゃう。地下茎でね。横に広がるんだ……」
竹の仕組みについてポーは知らなかった。未明が説明する。毎年竹は三メートルも地下茎を伸ばしていき、森の側に生えていれば森を侵食していく。
元気な竹ならば二十メートルほどに伸び、雑木から光を奪い、枯らしてしまう。雑木林は徐々に竹藪となっていくのだ。
そしてさらに危険なのは急斜面の竹やぶである。雑木林は様々な木が生えることによって土砂崩れをうまく防いでいるのだが、
地下茎が横に延びる竹はネットにはなっても杭にはならず、土砂崩れの危険性が大きくなるのだ。
「それは危険だな。タケノコを取り続けて食べたり竹を伐採しないといけないのか」
「竹林もそのままでは無造作だからね。整備された竹林はとてもビューティフルなのだが」
「調子が戻ってきたな。竹林か……」
「今度、吉川さんたちが、竹林の整備を手伝いにいくそうなので。ご一緒してみては。上手くいけば刺身も食べられますよ」
逍遙も英語交じりになってきたので調子が戻ってきた。タケノコは偉大だ。注文したメニューを料理長が届けに来ていた。
四迷は肉と魚両方を頼んんでいる。
ポーが竹林に興味を持っていた。吉川英治は文豪たちの中でも、とても元気な部類に入る。明るいのだ。
「……刺身?」
「タケノコってのは収穫してから、時間がたてばたつほど、えぐみが増すんです」
帝国図書館はタケノコを購入して料理長が煮込んだりして下処理をしてから出している。このタケノコはとても美味しいが、
取れたてはもっと美味しいらしい。土から掘り起こされて数時間たてばえぐみが酷すぎて食べられなくなる。
タケノコの刺身は取れたタケノコを速攻で切って食べるのだ。
「美味そうだな。ハワードや司書を誘っていってみるか。司書も定期的に外に出さないといけないのだろう」
「そういうと司書さん、植物みたいだよね……」
「動物……人間ではあるのだが……」
外というのは帝国図書館の敷地外だ。彼女は仕事が行き詰っていたりすると引きこもり始める傾向がある。
文豪たちは外に出すようにしないととたびたび口にしていた。
「朝は早いですよ」
「まずは吉川くんにあって詳細を聞きながら参加出来たらしてみよう。私も行ってみたいからね」
「起きられそう? 行くよね。僕は行くけど」
「善処しよう。もしそうなら、起こしに来てもらえると助かる」
「起こされること前提か」
先行転生については時期の知らせが来るだろうから、それを聞いたら動くことにしてまずはタケノコ掘りの予定を決めることにする。
決めやすいところから決めて、美味しいものを食べられる時は食べるのだ。