@corona_moca1111
……めちゃくちゃ色々言ってくるあいつは、服装やらなんやらまで指定してくるし、こっちまで来るとか言ってきた。子供扱いみたいでムカつくから、駅前まで行くって言ったけどそれでも引かないし。うるさいけど悪いことはしないみたいだから、ウザいけど無害で。はぁ。
時間通り、というか時間十分前時間通りに来たあいつは、その割にあっさりと行きましょうと言い放って、前を歩いていく。足は意外と早い。そしてすごいこっちを振り返ってくる。
「……なんだよ」
「いえ、ちゃんとついてきてくださいね。」
「……」
うっせーよ。駅への道くらい知ってるわ。
昼間の街はあんまり見ないので、眩しすぎてついつい目を細める。というか、めぐみのメガネ度があってないんじゃねーの?ぼやけるんだけど。憎いほど青い空がギラギラ光っててどうしようもなく腹が立つ。昼は嫌いだ。
「はい。飲み物です。どうぞ。」
「……どーも。」
何故かお茶を渡してくるヘタレ野郎。日が差し込む駅。全然人がいないホーム。午前10時。
「……怪我は、大丈夫ですか。」
「ん。医者は行った。」
「そうですか。」
「残りそーだけどな、ちぇっ」
黄色い線の内側にお下がりください、って、内側はどこなんだか。
カタブツは律儀に守ってるし。
あーあ。
ホームドアに寄り掛かろうとしたらとめられるし。なんだか居心地が悪い。そもそもなんの見せ物でもないのにこんなに光を当ててくる太陽がウザい。キマっていない服も嫌だし、全部嫌なんだけど、行く場所がアレだし、指定されたし。
……誰が身内の職場に興味があんだって。
暇そうなヤツらを見ながら立ったまま電車に乗って、けっこう長い間揺られている。眠くて怠くて、携帯にも特に連絡もなくて、つまらなくて、音楽を聴くにも聞けない。
「座らないんですか?」
空席の前同じように立ってるクソ真面目はどこもかしこも直角に見える。はぁ、こういうやつ、たまにいるけどさ。
「や、いい」
座った時に足癖ばっか見るのバレてるからなこのロボット野郎。
はー。気まずい。なにがって、もう全部。
「……田町さん?…」
あ、名前。
「「メグ」。」
目の前でぽかんとするな。
「よくあるだろ?」
「……まぁ、そうですね。では、めぐさん。」
「ん」
「めぐみさんとはよく話すんですか。」
はぁ。なるほど、何も知らない訳ではない感じ?インテリありがちな「知識としては」ってやつ?
「や、全然。」
まーた間抜け面してるし。しかも、なんか、そのあと変にゆるんでんじゃねーよ。
「……なんだよ」
「いや、まぁ。」
……なんだよ、その顔。その、目。
「……。」
見ないようにした。だって、こいつ弱いし。何も知らないし、昼間だし、無害だし。殺せないし、殺されないし。……最悪だよ気色悪いな。
握った手に爪食い込んだし。
やっぱ「マトモ」向いてねーわ。
「あ、降りますよ。」
そいつが先に立って、何故か俺の荷物まで持ってて、まぁもうどうでも良くなってついていく。隙だらけのこいつを殺すにはどんな手段でも取れるし、なんならここでも仕留められるんだなぁ、とか。……なんちゃって。はははは。
「メグさん」
咄嗟に伸びてきた手を振り払った。
「ん。」
相手はその反応に止まってからすぐに言い放つ。
「危ないですよ」
「え」
マジ?車道に出てたわ。
「気を付けてくださいね。」
なんか冷静に諭されてるし、相手は本気で心配してるらしいし、やっぱ、なんなんだコイツ。さっきまであんな目で見てきやがったのにさ。
「……ん。」
俺、この人やっぱ、苦手だわ。
なんだかんだ。
駅よりも結構遠いところにデカい建物があるなと思っていたら、そこがなんとかの研究所とか。やべえところじゃん、めぐみこんなところにいたの?
とりあえずなんも触れずに持ってきためぐみのリュック取って、そんなかの一番手前を漁ったら本当になんか、かけるやつでてきたし。
そこにある名前がちゃんと田町めぐみで、誕生日も全部あってて、ドッキリじゃないし。いや、こんなんだって、コスプレしか見たことないんだけど。
はぁー。本当にあるんだこういうの。
建物の中に入ったら、なんだか知らん人がみんな白衣ってやつ着てるし。スーツとかもなんかダサいけどドラマのまんまみたいな。いても濃い目の赤くらいで、ピンクとか黄色とかギラギラしてないし、丈もなっがいし。どこだよここ本当に。臭い香水もなければ、お酒の匂いすらしないし、ゴミも無いものかのように消えてるし。ここまで違うか?
ついいろんな場所を見ては、意味不野郎に指図され、ついていかざるを得ない。手続きがないのは助かるけど、通る人が変な目で見てる気がして帰りたい。めぐみの気が知れない。あいつ頭おかしいんじゃないの?
って、誰か来たし、フレンドリーに来たし。
「珍しいね、あの鈴城がこんな時間とは!」
「今急いでるんです」
「はいはいわかりましたよ、……田町君?」
「……あ」
うーわこっちくんな!向こう行け!去れ!
鈴城に目線を送ったらなんとか引っ張って早歩きで去ってくれる。
「ほら!行きますよ!」
「……「はい」…?」
今回ばかりはナイスと言わざるを得ない。
後ろを見たらさっきのやつ首傾げてるし絶対バレてんだろうなーこれ。でもさ、声が分かんねーんだ。敬語もなんていうか、口から出てこないし。
「……ざっす」
「病院側あっちなんで、行きましょう。」
「…ん。」
「……敬語、使わないんですか」
「…めぐみのは、知らない。というか何?みんなあんななの?」
「まぁそうですね。あの人はフレンドリーですけど」
「ふーん。」
全員が仲良しこよしなんかできる訳ないのに。気持ち悪。
「……あ、そこ、受付です。手続はやります。あ、顔だけ見せてもらうのと、体温測ってもらっていいですか?」
指差した先に確かになんか窓口がある。ニヤニヤしてる人が座ってる。こっちを見て、なんか言おうとして、鈴城と奥の誰かに止められてた。わざとらしいな、本当に。
体温計で熱を測って、まぁ普通で、渡して、待って、呼ばれて。
「メグさん」
「ん?」
「……俺も、ついていっていいですか?」
はぁ。……まぁ、バレてるからこの先って話なんだろうしすごい嫌ではないけどさ。でもまぁ、
「めぐみ」はどうなんだろうなぁ、って感じ。
と、
「鈴城さんも初めは来てね。はじめの事実確認だけ付き合ってもらうけど、後は部屋の外で待機になるかなー。」
後ろから、医者らしい人が話しかけてきていた。
「田町さん、で、いいかな。どうぞー。」
笑みが張り付いているように見えたが、また無害そうなやつだった。