@acbh_dmc4
朝食を摂っていると、ボソリと年上の男が独り言ちた。
「…今日は、エイプリルフールか…」
思い出したようにぽつりと零された言葉だが、意地の悪いこの男が無意味な呟きをする筈はない。
恐らく、何事か悪だくみでもしているに違いない。
なんたって去年は勇気を振り絞ってベタなやり取りをして、見事玉砕しているのだ。
俺から仕掛けたことではあるが、今年は男の方から何事かトラップがあってもおかしくはない。
いつも男には馬鹿にされて揶揄われて、やり込められているのだから、今日こそは男の思い通りになどなってやるものか。
俺は警戒を怠らぬように、今日一日を過ごす事に決めた。
「…俺の分もやる。好きだろう?」
デズモンドからお裾分けされたお菓子を俺の目の前に差し出す。
どうせ俺にくれる振りをして、俺が手を伸ばせば嘘だと引っ込められるに決まっている。
何とも程度の低いエイプリルフールだと俺はそっけなくそっぽを向いてそれを拒否する事にした。
「いい。自分だって好きだろ?自分で食べればいいじゃないか」
「そうか。…導師を呼んでお茶にでもするか」
そう言うや、部屋を出ていく男を横目に見送る。
今回は不発だとして、次に何を仕掛けてくるのか…はっ!!
導師…導師を呼ぶとか言っていたか。導師と共に俺に何か仕掛けてくるかもしれない…
導師って俺と一緒で結構ノリノリで悪戯とかに便乗するし…ってか進んで面倒事を起こしては素知らぬ顔するし…2重に気をつけなくては…!!
男に呼ばれて警戒しながらついて行くと、デズモンドの家でお茶会が開かれる事になった。
普段は手伝いはしたりしなかったりだが、今回は自ら進んでデズモンドの手伝いにキッチンへと向かった。
砂糖と塩を間違えたと言って不味い茶を飲まされたらたまらない。
そう思ったのだが、デズモンドから渡されたのは角砂糖とミルクだった。
一応本当に角砂糖か指で突いた後、指に白くついた粉を舐めてみる。甘かったのでちゃんと角砂糖だ。
「珍しいな。いつもこういうの手伝ってくれるのは一番年長のエツィオなのに」
「たまには年上を敬おうかと思って…」
「つっても自分だろ?まぁ、エツィオだけなんで3人居るんだって話だけどな」
お茶会を開く庭先に赴けば、庭先を通りかかったクレイとコナーが追加でやって来ていた。
人数分の食器と茶菓子を出してテーブルに着く。
薔薇の花が見事な庭園を眺めながら、一見和やかなお茶会が開催された。
「相変わらず綺麗に整えられているよな、ここの薔薇」
クレイが感心して周りを見渡して庭を褒める。
デズモンドの家の庭は、俺たち3人のエツィオが住んでいる家の庭に繋がっており、何故かガーデニングに目覚めた導師が薔薇の手入れをしていて、かなり立派なのだ。
レオナルドに改良してもらったらしい肥料だとか、園芸用具で育てているとのことだが、庭師もびっくりの腕前で自他共に評判が良い。
俺も真ん中のエツィオも暇だろうと言われて庭の手入れを手伝わされている。
「葡萄とは違って実はつけんが、美しく咲かせるのが遣り甲斐があっていい」
「そういえば離れにブドウ園も持っていたよな。イタリア人のくせに働き者だな」
「退屈は嫌いでね」
デズモンドが思い出したように導師に向かって薔薇の話題を広げた。
「薔薇と言えば、こないだ薔薇酒有難うな。美味かったよ」
「薔薇酒?」
「ああ、デズモンドに漬け方を教わってな。持ってきてやる。ちょっと待ってろ」
そう言うや、導師が自宅へと引っ込み、数本薔薇酒を
「ユンやエヴィやアヴリーンにも好評でね。女性陣には甘めの物を渡したんだが、お前達はこっちが好きそうかな」
「デズモンドは情報提供元だからともかく、ちゃっかり女には持ってってやってるって、流石イタリア人だよな」
「薔薇酒みたいなファンシーなものはお前たちにやるより女性陣にプレゼントした方が喜ばれるだろう?デズモンドとコナーは良い子だから喜んで」