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[薫P♀]とけたアイスと悪戯

全体公開 1 1560文字
2020-04-25 01:43:31

……バニラはシンプル故に奥が深いと思うが」
薫さんとアイス食べるお話です。

Posted by @toasdm

 ニコニコと手にしたアイスを頬張る姿に、薫はまたひとつ、彼女を好きになる。アイスありますよ、アイス、と袖をクイクイ引かれた時から緩みっぱなしになりそうな頬をなんとか押さえてきたものの、こうなるとなかなか、緩んでしまいそうな頬を押さえることが難しくなる。
「薫さんはシンプルですね」
……バニラはシンプル故に奥が深いと思うが」
 彼女のコーンに三段重ねで乗せられたアイスはどれもカラフルな具入りで、一方の薫のコーンにはシンプルにバニラとチョコのアイスが乗っている。スプーンで掬ってはむはむと食べる彼女を横目に、薫はあんぐりと口を開けて結構豪快に食べている。
「頭、痛くならないです?」
「ゆっくり口の中で溶かせば問題ない」
 彼女のスプーンひとすくいの間に、薫はアイスの四分の一を食べている。そのくらいのスピードの違いがあるものだから、必然的に彼女のアイスは緩やかに溶け始める。
「うわ」
「はは……こぼさないように」
 ああ駄目だ、と思ったがもう遅かった。ハンカチをさっと取り出して彼女の指についた溶けたアイスのしずくを拭ってやった自分の声は、アイスのようにとろけていて、チョコのように甘かった。
「アイス好きなんですけど相性悪くてですね……
「のんびり食べるからだ」
「でも、頭キーンってなるし……美味しいけど……
「アイスクリーム頭痛か……
「え、あれ、そんな名前あるんです?!」
 もぐもぐとアイスをゆっくり口の中で溶かして、薫はまた、優しい声で言う。
「アイスクリームを食べる時に起きる頭痛だからアイスクリーム頭痛だ。ゆっくり食べるか、痛くなったらこめかみを冷やしてやるといい」
「ほへー……
 じゃあゆっくり食べますね、と少しずつまた食べ始めた彼女を、正直に可愛いと言ってしまおうかどうか考えて、薫は黙ってアイスを食べた。サクサクとしたワッフルコーンの食感を楽しみながら、そんな甘ったるいことを言うような自分ではないはずだ、と気を引き締めたが、彼女はまたぼたぼたとアイスの雫を垂らし始めた。
「のんびり食べるのもいいが溶けてベタベタになってしまう、子供みたいだぞ」
「うぅっ……お手数をおかけしま――
「ん」
 先程はたしかハンカチで拭ってくれた彼女の指先に、薫の唇がちゅっと触れる。複雑な味がするな、とピンクと白のマーブルアイスの溶けたのを舐めてから、薫は真っ赤になってフリーズした彼女を上目遣いに見上げた。
……なんだ」
「あぅ、いえ、あの」
「食べないとまた溶けるぞ」
「ひ……
 溶けて指先を汚したらどうなるか、今まさに身を持って理解してしまった彼女はこくこくと頷き、慌てて残りをやっつけにとりかかる。が、食べるスピードは大して変わらず、薫はコーンを全て食べきってしまった。
「ん……んん……
 焦れば焦るほど、彼女の脳裏に瞼に焼き付いた、先程の薫がちらついて動揺でどうにかなってしまいそうになる。なんとかこぼさないように食べ進めて、あとはコーンの内側に全部落ちるから大丈夫かな、まできたあたりでほっとした彼女の一瞬の気の緩みを、薫と薫の悪戯心は見逃さなかった。

「ついてる」

 ちゅっ、とにやけた唇が触れたのは、指先ではなく彼女の唇の端だった。
「?!」
 ピシィッ!と音でも立てそうな勢いで固まった彼女からゆっくり離れて、薫は緩みきった頬に笑みを浮かべて言った。
「嘘だ」
「!!」
 早く食べろ、と促す声も笑い方も悪戯めいていて、楽しそうで、彼女よりもずっと子供っぽかった。そんな自分をひとつ好きになって、薫はバニラの香りのため息を吐いた。

 僕にこんなしょうもない悪戯をさせる君だから、僕は君が好きなんだ。

 溶けるアイスと格闘する彼女を、薫はニコニコと見守っていた。


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