@corona_moca1111
「学習障害が出てますね。漢字を覚えるのに時間がかかりますし、覚えてられることとそうでないことがあるみたいです。」
「計算問題も、図にするとわかりますが、数字だとイメージがつかないみたいですね。イメージしないようにしているのかもしれません。」
「勉強に対して向かうというより、先生に対して向かう感じになってますね。先生がどんな話をするかばかり気になるみたいで、あることないこと話したりして。楽しそうですが、落ち着きがないというか、話しすぎるというか。」
「名前を呼んでも止まらない時がしばしばありますね。かと思うと、視認したり、手が触れた時には反応するので聴覚が弱いのかもしれません。」
「とはいえ格段によくなってます。言葉もスムーズになったし、笑うことも増えました。喧嘩もしませんし、いい子です。安心してください。」
◆
ぼくはえをかいてた。
ぼくがえをかいてると、ぼくのまわりでも、ともだちがえをかいていた。えをかくと、そのうち、やぶりたくなって、こわしたくなって、こわしたあとに、ちがうことしようっていってくれたりする。
えになにをかいてるの?
って。きかれるけど。
ぼくにもわからない。ってこたえてる。
だって。
……わかんないから。
きょうも、えをかいてた。
おえかきはたのしい。
えをかいてると、しずかだから。
しずかだとおこられない。
たくさん、おえかきのものがあるから、たのしい。いろんないろがあって、うれしい。
せんせいもニコニコしてた。
おえかき、いいねって。
えへへ。
ぼくはきょうもなにかをかいてる。
なにかは………わかんなくなっちゃったけど。
でも、たまに、なんかいるかもしれない。
ほんでもよもうかなぁ。
すこしあるくと、としょしつがある。けっこうひとがいて、ほんをよんでたり、ゲームしてたりする。いつもはうるさかったりもする。
でも、きょうは
まほーつかいさんがいた。
まほーつかいさんはあたまにぐるぐるがついてて、ふわふわで、かみのけがピンクで、まっくろで、きらきらで、ふくもなんかちがくて、ほんはぶあつくてくろくて、かんじだらけだしえいごもだらけで、わっかんないけど、ぼくね、これ、このまえのえほんでみたよ!まほーつかいさんってこんなだった。でも、ぼくらとおんなじところにいるなら、みんなとおんなじなのかな。
すごい!けど、ぼくがドアをしめたら、ちょっとこっちみておこってた。また、まほうのほんをよんでる。よんでるみたいだ。
……。
となりにすわった。おこられない。
ほんはやっぱり、むつかしくて、かんじばっかりで。
まほーつかいさんは、それをぺらぺらして、たまにもどったりして、よんでるみたいだった。
と、
バン、という音
「あのさぁ」
あ。
あたまのうえにおいたぼくのスケッチブックから、ぼくがかいたのがいっぱいおちてきてバサバサになって、でもぼくはあつめて、あつめて、でもあつめるまえにこわくて
「……無駄じゃん、それ」
そういって、ぼろぼろおちたぼくのかみをいっぱいあつめるまほーつかいさん。おててまでいろがついてて、あつめて重ねて、ぼくの前にどさって、おいた。
「はい。」
「えと……ぁ……」
「そういうのいいから。」
「……。」
そのまま、また、まほうのほんをよんで、よんでて、だからでも、ぼくはわかんなくなっちゃったから、すわって、ぼくもえをかくことにした。……えと、でも、よくわかんないから……わかんないけど……。
いつもはなしたりあそんだりするこが、みかけてはよくわかんないかおして、かえってく。むつかしいほん、なんとなくとおい、せんせいのこえ、つくえのおと。
……よこにつまれてる、まどうしょ。
ぼくがそーっと、てをのばしたら、なんだかひょうしに、みずのもようがあった。ゆらゆらしてて、すいこまれる。
すごい。まどうしょだ。
ふと、よこみたら、まほーつかいさんがこっちみてる。あ、だ。だめだ。おこられちゃう。
「……ご、ごめんな、さ」
「……それ、アルベルト・シュヴァイツァーだけど。」
……???
ぼくがとったほん。ああ、ほんとだ。かいたひとだ。にんげん?ってことは、まどうしょじゃないんだ。むつかしそう。
……ぼくのかおをみて、はぁーって、する。やっぱり、ぼくがわるいから、えーと、
「……」
「…怖いならこなきゃいいじゃん」
「…………お……おこってる…?」
「……怒ってない」
「……。」
ぼくのかおをみて、てをみて、また、ほんをよんでる、の、かな。わかんない、わかんないけど、ほんとに、おこってない。おこってない、のかな。
……したら。きゅうに、はなす、まほーつかいさん。
「シュヴァイツァーは医者。哲学者でもあるけど、根底の考え方からの行動が評価されてるからっていう理由。人間以外の全ての生き物に対して敬意を示し、大事にしろって。自己実現の重要性についても問うてる。カントからの派生学派?まぁ、要は普通の人間だよね。」
ぺらぺらとめくって、ひらいて、みえるのもがんじだらけのぶんしょうだった。
「……ここら辺ならまだ容易じゃん?」
……なんかかなしくてよこをむく。
「…………ぼく、よめないよ。かんじわかんない……。」
……ほんがおかれるおとがして、でも、なんだかさっきよりかるくて。
「馬鹿だなぁ。勉強すればいいじゃんそんなの。」
「すぐわすれちゃうの」
「人間は何でも忘れるじゃん。」
「……せんせいがぽんぽん、ってするんだー。えへへへ、ぼくね、みてるの、かいてるよ、えっとー、えへへへ。」
わらってるぼくのよこで、
「……何でそんなに笑ってるのさ。」
むすっとしてる、まほーつかいさん。
「ぼくわかんないやー。まほーつかいさん、あたまいいんだねー!」
と、
「田町君!たーまーちくん!」
せんせいのこえがした。ぼくは、たって、てをふって、
「またね!まほーつかいさん!」
せんせいのこえ、と、いいにおい。
えへへへ。
はじめてだ、ぼく、ぼくね、もうすこしおべんきょうがんばるよ。そしたら、いつかおんなじのがよめるのかな。
いつか、
いつか。