@corona_moca1111
……目を開けた。
身体が重い。頭も痛い。目が腫れてるんだと思う。日差しがやんわりと差し込んでいる。時計を見ると、3時だった。
ああ、もうそんな時間なんだ。いつもならちゃんと働いてるんだけどな。
……白く光が差し込んでる。目を閉じても、すぐに開く。眠くはないみたいだ。
ゆっくり、体を持ち上げる。心臓の音、めまい、目の痛み、手の黒インク。
あ、ノート。
開いた。
「あ。」
真っ先に飛び込んできたのは絵だった。
びっくりする、はずだったんだけど、なんだか、疲れてるんだろうか。絵だなぁ、としか思わなかった。
絵は、ノートいっぱいに広がっていて、クレオンの匂いがする。青が多くて、ピンクもあって、赤とオレンジと紫の魚がいて、えーと。ああ、結構クレヨンっていい匂いだなぁ。こんなだったっけ。というか、ってことは僕の部屋、クレヨンがあるのかなぁ。
懐かしい匂いがする。
ぬいぐるみをぎゅ、ってする。そういえば、いつからぬいぐるみ好きなんだっけ、確か前もこうやって抱っこしながらなにか書いていたきがする。
なにを書いていたんだっけ。
手を見たら、小指の先に使っていないはずの色のかけらがささっていた。
ああ、「ぼく」が書いてるんだっけ。
まぁ、いいや……。
クレヨンのノートの上に倒れ込む。なんだか知っている気がする。汚れるけど、こうしていたんだ。確か、何だっけ、お姉ちゃんとお父さんが遠くで話してて、僕はどうしようもないから、友達と一緒に絵を描いていた。そんな記憶があった気がする。でも、確かそのあとお父さんがやってきて、えーと、覚えてない。
いまのこんな感じの視点だったような。お父さんも、お姉ちゃんも、どんなことを話せばいいのかは分かんなかったから、結局呼ばれるまでこのまんま眠っていた気がする。
……いまも、怠くて、眠い。
横向きでノートの上の文字をみると、多分これは文字が書いてあるんだと思う。ってことは名前なんだろうか。次のページもあるはずなんだけど、手にも力が入らなくて、横からぼーっと、ノートを見る。
……ケ…イ。
子供の字…。
眠くて目を閉じる。ノートを見たくて起きようとするが、眠気が強くてまぶたが下がる。
あれ。
隣にいる?いや、いるわけない。
あかないまぶたを閉じた。暗闇と、なんとなくの周りと、そこにいない、ちびっこ。
眠気。ぬいぐるみが体温であったまって、ぽかぽかしてくる。それでも色がついてるように覚えてるお絵かきと、僕の身体と、ちびっこ。
まどろんでるだけ、なんだろうなぁって。
それでも、あったかさだけつつんでく、ゆめのなか。
めぐみ、と言ってくる、ゆめのこ。
うん、なぁに。
ひさしぶりだね。
目が覚めた。
ひさしぶり?
ノートを見る。それはある。名前も、水族館の絵も、色彩も、いつ描いたのかわからないその絵も、くまちゃんも、そして、多分、友人だと思っていた君のことだって、何となく、ピンときてしまった。そうだ、そうだよ、これは水族館で、これらは魚で僕たちで、水族館は人が多いから僕らだけにして、えっと、貸切って言うんだって話して、魚たちが泳ぐのを見たりして笑うんだって話をした。えっと、何歳だろう。相当昔だ。お姉ちゃんがドタドタ走ってた気がするし、えっと……。とにかく、だから違和感がなかったんだ。君の名前がケイくんだったんだ。一人で遊んでいた僕のそばにいて、みんなが首を傾げていた。君はいつのまにかいないから、僕はみんながいないときだけ君と話して。
思い出した。君はそこにいたんだ、あと、もう一人も?でもその子はそもそも遊んでなかったんだっけ……たしか…。
めくる。「メグ」の字と、好きな食べ物にチョコレート。達筆で汚い、僕の丸字とは違う形の字だ。えっと、その、この前、研究所まで僕を連れて行った人らしい名前。
名前が心に引っかかる。
のに。
なにも出てこない。
ふっ。と力が抜けて、またノートの上に倒れ込んだ。何か返事を書かないと、と思って、指だけを動かす。
えっと。
さっきのが、気になる。
「いつから
いっしょにいるん
です
か。」
どんどん力が入らなくなって、下の方の文字が酷い。指がまた動かなくなってくる。こんなに力が入らないのは久しぶりだ。
なんか、つかれた。から、また寝ようとおもう。
思い出すって、こんなに疲れるんだなぁ。
仰向けになって力を抜く。天井、と、昼間。
まぶたを閉じる。そのまま、身体から力が抜けて。
暗転。