@i_tenmonooki
「こんなところに…どうしたのかな?」
誰かが、居場所を失った私に声をかけた。
「君はどうしてここに居る?ま、私には関係ないんだけど」
どうやら、性別は無いらしい。青緑の髪、ラフな軽装、腕についたものは異空間に繋がっていると思われる。
しかし…なぜこんな私に…
「おーい、聞いているのかい?」
「あ、すまない…ぼうっとしていた」
「全く、初対面だというのにねぇ」
「…」
「ねぇ、どうしてここにいるんだい?」
「元いた世界に、居場所が無くなったのだ。」
「なんで?」
「私は止めを刺されて以来、人間共から亡き者として扱われた。ほぼ死滅寸前なのだよ」
「それは、辛かったねぇ…でも、私なら寄り添ってあげようか?」
「へ?」
「だから、私が、居場所を作るんだよ。さぁさぁ、こっちに来て!」
「は?お前はなにを考え…」
「あーっはっは!楽しい楽しい…世界間スペースの旅さ!」
渡、と名乗った奴は私の手を引き、さまざまな場所へ、連れて行ってくれた。
思えばその頃、まだ妖怪達の居場所は作られていなかったし、シエラだって、治め人が変わった頃だった。あらゆる事が、現在とは違う。
…
「どう?少しはお暇をつぶせたかい?」
「…少しは、な。」
「まだ少しか〜…じゃあ、もっと連れていかないとねぇ!それ、いくぞっ…!」
「…!? なぁ、お前」
「なん、だい?」
「まさか、身体に負荷がかかっているのではないか…?先ほどからいと辛そうだが…」
「気にしなくていいよ、さ、次…」
「教えてくれないか」
「…私はね、ホントは普通のニンゲンなんだ。能力を持っているニンゲン、ヨウカイ、皆…羨ましかった」
「それで、私は能力が欲しくてたまらなくて…ある人に、頼んだんだ。」
「『なんでも願いを叶えてくれる』人が居るって、噂が流れていてね。その人をやっとのことで探し出して、自分に能力を下さいって、お願いしたんだ。」
「それで、今の能力が付いたのか?」
「そう。自分で能力も決めたんだ。この力があれば、どこだって生きていけるでしょ?」
「しかし…能力が身体の負荷と何の関係が有る?」
「それがね…その人は確かに何でも願いを叶えてくれた。でも、代償付きで。」
「能力を得た代償は、力を使った時、自分の寿命が削れるというもの。」
「大変ではないか!?なのに…私を…」
「いいんだよ。最近は自分の寿命を削ってでもこの力を使う事に、ワクワクしているんだもん」
「…あまり無理はするなよ…」
「それじゃ、私はこれで」
「…おい、お前…なぁ、これからお前が死ぬまで…私を覚えていてくれないか…?」
「覚えていないと、君は死んじゃうんだろ?当たり前だ。」
…
異変を起こす何日か前、自分の身体が消えかけていた。何故かは明確であった。
その日の内に私は渡の元へ向かった。しかし、彼奴は以前見た時よりも痩せていた。
「ちょいと、力を使いすぎたようだね」
彼奴はそう言っていた。奴の寿命が、近づいていたのだろうか。
「…なぁ、私のこと、覚えていてくれ、という約束は守るのだろうな…?」
「勿論だよ。死ぬまで忘れないさ。」
「本当…だよな。」
「あぁ。…そうだ!いい作戦を思いついた」
「うん?」
「もしも私が死んでしまったとしても…君が忘れられることは無い方法。」
「私が死ぬ直前に、誰か別の奴を君の所に送り込む。その人達に、君を覚えていてもらうのさ。時が来次第決行さ!」
「やめてくれ!自分が死ぬなんて、考えないでくれ!やめろ!私は滅してもいい…だが、お前は…」
「いいんだよ、私にとって、君の方が大事なんだから」
「…分かった、でも、これだけは…決行しないでくれ。お前が死んだら…私も死ぬ位の覚悟でないと。正直、私にそんな覚悟は無い。」
「だから…決行しない、と約束してくれないか?」
「…分かったよ。絶対に、しない事にするよ」
…
と、言っていたのに。
彼奴は何故、私の元にあんな奴らを…送り込んできたのだ…?
確かに、退屈に限界を感じ、異変を起こしたのは私だ。
何故あいつらに加担した…なぜ、裏切った。
なぜ、気絶してしまったのだ…
約束を破るなんて…
………お前らしいな。
お前が目覚めるまで、最善の手を尽くし続けよう。
私は何にでもなれる。
万能の薬にだって、お前を冷やす冷気にだってなれる。
お前の姿になって、害悪を演じる事だってできるのだ。
…待っていろ、私が必ず、お前を目覚めさせてやるから。